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千文小説 その957:絶希

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 おかしいな…。

 こんなはずじゃ、なかったんだけどな…。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 とにかく、手持ちの電子機器の中で、電源が入るものは、片端から、再設定して、炬燵に乗せて。

 ひたすらに、修正を繰り返して、どうにか、ホーム画面と壁紙とカバーを定めたぞ、と思った途端。

 あっという間に、iPhone12 miniと、無印の第九世代のiPadが、いなくなりました。

 どういうこと?

 それぞれ、完成したんじゃないの?

 …完成して、それで、終わりだった。

 先がない。

 行き止まりの、袋小路、どこへも行けない、どん詰まり。

 一言で言うなら、駄目だ、こりゃ。

 すみやかに、リセットのうえ、箱に収めて、クローゼットに。

 結果、炬燵の上の電子機器集団、通称、カメラレオンのメンバーとなったのは。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 MacBook Pro、256GB、スペースグレイ。

 無印の第五世代のiPad、32GB、ゴールド。

 第六世代のiPod touch、32GB、ピンク。

 iPhone7、32GB、ゴールド。

 iPhone14 Pro、256GB、ディープパープル。

 …偏り過ぎでしょう。

 極小と、極大しかない。

 持ち物は、その人を表す。

 僕の頭の中も、だいぶ、極端なんだろうな…。

 居心地、悪いの?

 逆です。

 とても、ほっとしております。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、爆睡の愛猫を、西武ライオンズのバスタオルでくるんで、抱き直し。

 胸の奥、深海の底、立ちのぼる、小さな泡の音に、耳を澄ませます。

 この五台は、何をするにも、基準となる。

 いじってはいけない。

 デバイスを、買い足すのは自由だが、彼らと、交換することはできない。

 MacBookは、リセットして、次代と交代する予定だし、iPodは、そもそも、後継機がないが、iPhoneとiPadは、リセット不可。

 必ず、今代からのデータ移行によって、立ち上げること。

 厳しくない?

 そっちの方が、行き詰まりなのでは?

 とんでもない。

 これほど、広々とした気持ちになったのは、実に、久しぶり。 

 楽だもの。

 何一つ、変えようとしなくて、いいのだもの。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 無印の32GB、もしくは、Proの256GB以上。

 カメラレオンの参加条件は、二つにしぼられた。

 前者は、しかし、現行のApple製品では、取り扱いがない。

 よって、新規参入は、もはや、不可能。

 iPad5とiPod6とiPhone7で、廃版トリオを結成していただくより、他にない。

 後者は、どうして、256GBに、限定しないの?

 …したいのは、やまやまなのですが。

 残念ながら、MacBook Proの256GBも、既に、廃版。

 今後、Proシリーズにこだわるなら、512GBから、始めなくてはならない。

 ただ、iPhoneやiPadまで、512GBに合わせる必要は、皆無。

 なので、将来的に、MacBook Proだけ、512GB。

 iPhone ProとiPad Proは、ともに、256GBで。

 32GBトリオを底辺に、きれいなピラミッドができあがる。

 あれ?

 iPadのProシリーズ、買わないって、言ってなかった?

 …そこですよ。

 まさに、問題は、それ。

 これまでは、iPad Proを買ったら、おしまいだ。

 物書きとして、自殺に等しい。

 それくらいの拒絶感が、身の内を支配して、やまなかったのだけれど。

 なんと、iPadのProシリーズが刷新されてしまい。

 MacBookとほぼ対称で、かっちりと、Airシリーズとの棲み分けがなされた。

 以前は、確かに、中途半端でした。

 iPad Proの11インチと、iPad Airの10.9インチ、256GBに揃えた場合の違いが、よくわからなくて。

 いまひとつ、大枚をはたく意義が見出せなかったのが、今回のモデル以降、明確に、性能において、差が生じた。

 これなら、iPad Pro、買ってもいいんじゃない?

 無印の第五世代とは、比べ物にならない、どころか、同じiPadとは呼べないね、というレベルの桁違い。

 炬燵の上での併台は、充分に、あり得る。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 でもさ、無印の第九世代のiPadは、どうなるの?

 まだ、買ったばかりだよ?

 …その通り。

 今はまだ、iPad Proを、良心の呵責なく、買うことはできない。

 少なくとも、iPad9の、OSのアップグレードが終了するまでは、責任を持って、使い切らなくては。

 また、再設定か…。

 しかも、無印二台か…。

 絶望の中にこそ、希望があることを、忘れないようにします。それでは、また。

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