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千文小説 その1020:無思

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 ほんとかな…。

 フォントかな…。

 いささか、ネジのゆるんだ頭で、つぶやきつつ。

 至って真剣に、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンの、ブックアプリを整えます。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 無印の第九世代のiPadを、もう一度、再設定したのです。

 iPad double、愛称は、iPad deux。

 フランス語で、2、という意味。

 iPhone12 miniといい、どうして、デバイスの名称に困ると、フランス語が出てくるの?

 …言語との相性、というものは、確実に、ある。

 大学時代、実にさまざまな外国語の講義を、興味に任せて、受講しました。

 大半は、もちろん、身に付かなかった。

 しかし、英語はともかく、フランス語が、妙に残った。

 当時から、教授にも、首を傾げられていたのです。

 なぜ、君は、音読だけ、そんなにうまいのか?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 そうなのです。

 会話も、翻訳も、全くお手上げなのに。

 フランス語の文章を読み上げることにかけて、僕の右に出る学生はいなかった。

 仏語仏文専攻の先輩方より、はるかになめらかに、僕の口からは、ほとんど完璧な標準フランス語が出てきた。

 謎です。

 人生で、それ以前には一度も、フランス語を学んだことはなかったのに。

 残念ながら、近代日本文学で、卒論を書いて、そのまま、就職と相成って、それ以上、フランス語を極めることはなかったが。

 今でも、ふっと、2は、deux、だよな。

 文字ではなく、音声で、浮かんでくるので、ありがたく、活用させていただいています。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 あまりにも、無印の第九世代のiPadを使わないので、なんでだろう。

 ヘビーユーズの、無印の第五世代と並べて、見比べるうち、気づきました。

 電子書籍の、見た目が違う。

 OSが異なるせいだ、と思っていたのですが、どうも、そうではない。

 フォントと、画面に対する文字の大きさに、違和感がある。

 そして、それは、是正し得る。

 しましょう。

 今すぐ。

 というわけで、全七台のカメラレオン総出で、最も好みの字体探しに、チャレンジしたところ。

 iPhone14 Proと、無印の第五世代のiPadは、ともに、ヒラギノ明朝。

 これだ。

 これに、揃えよう。

 iPhone7、iPhone12 mini、無印の第九世代のiPad、MacBook Pro、iPod touchに至るまで。

 全てを、件のフォントに設定し、それぞれの画面サイズに合わせて、文字の大きさを調整し。

 なんと、あらゆるデバイスで、電子書籍が読めるようになりました。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 まさか、iPodで、読書ができるとは、思ってもみなかった。

 相変わらず、iPhone7と同様、今すぐ読む、の同期はできないので、結局、読めないのと同じじゃないか。

 皮肉を受け流して、単体で見れば、ほら、充分。

 拡大鏡ですか、というくらいに巨大だった文字も、ぎりぎりの、きわきわまで、縮小したおかげで、どうにか、段落単位で、読み取り可能に。

 iPhone7に至っては、これ、普通に、現役だよね?

 何の抵抗もなく、フォントと文字が、画面に収まって、穏やかな気持ちで、文章に没頭できる。

 もっと早く、気づいていればな…。

 口惜しくは思うものの、いかんせん、iPhone7とiPodは、OSが、古過ぎる。

 同期しなくていいや、と割り切って、たまに、短い時間だけ、読むことにして。

 基本的には、何の変更もなしで済んだ、iPhone14 Proと無印の第五世代のiPadが、電子書籍担当ということで。

 残るは、三台。

 MacBook Pro、iPhone12 mini、無印の第九世代のiPad。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 先ほどの、フランス語の音読だけは完璧、という話。

 外形が整っているからこそ、かえって、そのものに対する思いのほどが、浮き彫りになる。

 大きな声では言えませんが、僕は、フランス語とその文化に、ほとんど、ご縁がない。

 チーズもワインも苦手だし、知り合いになったフランス人は、一人もいない。

 これは、もう、どうしようもない。

 ヒラギノ明朝は、好きですが、デバイスとの相性がいまひとつであれば、あえて、電子書籍を読もうとは思えない。

 MacBook Proは、まあ、ありかな。

 iPhone12 miniは、ちょっと、違うか。

 無印の第九世代のiPadは、…マジで、何もない。

 びっくりするくらい、愛も、拒絶も、感じません。

 読めるね。

 それだけ。

 …完膚なきまでに、思い入れなきデバイスに、どのように対処するかが、今後の課題です。それでは、また。

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