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千文小説 その954:ノーカット

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 …Airが、ないね。

 そう。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオン。

 六台が、勢揃いして、改めて、よくよく、確認したところ。

 無印、mini、Proばかり。

 正確には、クローゼットの中に、先代のMacBook Airが眠っているので、皆無、というわけではないものの。

 少なくとも、現役の機器たちに、Airはいない。

 このことを、どう捉えるか。

 むっきゃー。

 どすどす。

 げすげす。

 久しぶりに、愛猫が、巨大なねずみと、たわむれています。

 いや、たわむれる、などという、のどかな状況ではなく。

 もはや、狩り。

 殴る蹴るかじる乗っかる、やりたい放題の狼藉を、けたけた笑いながら行なっているという、やばい奴。

 …ごめんよ、ピカチュウ。

 この部屋に来たのが、運の尽き、申し訳ないが、小さな暴君が寝落ちするまで、ご辛抱ください。

 ぶっきゃー。

 ごすごす。

 ぼすぼす。

 今代のiPad、無印の第九世代は、事実上の廃版。

 OSのアップグレードが終了したら、別のシリーズに、乗り替えなくてはならない。

 その際に、最も有力な候補が、まもなく発売、次世代の、Airシリーズ。

 容量も、128GBから選べるようになり、iPhoneではなく、MacBookと同じチップを搭載の、Proに引けを取らない、本格派。

 スペースグレイもあるし、これだよね。

 次代のiPadは、Airで。

 むぐふーん。

 どぶふーん。

 すりすり。

 べったり。

 …なんだろう、この、むなしさは。

 わーい。

 Airだ。

 楽しみ。

 とならないのは、どうしてか。

 破滅。

 牢獄。

 どん詰まり。

 否定的なワードが、脳内を、低空旋回する理由を、ぜひ、明らかにしたい。

 Airシリーズの、何が、そんなにも、鬱屈を引き起こすの?

 …ないものはない、という気が、するんだよな。

 今ここに、現役のAirがないのなら、おそらく、今後も、ないであろう。

 自分の欠落部分を見せてくれる相手について、悪口にならないように語るのは、実に、難しい。

 僕には、Airが、欠けている。

 無理矢理補うことも、もちろん、できなくはない。

 でも、それは、僕の文体ではない。

 ないのなら、ないままで、生きるしかない。

 デバイスの種類を問わず、Airシリーズは、僕は、買わない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 黄色いねずみの、大きなお腹に抱きついて、青緑色の猫が、眠ります。

 どちらも、ぬいぐるみ。

 片方は、動かず、息をせず、微笑んで、中空を見つめている。

 片方は、たくさん遊んで、元気な寝息で、夢の国にいる。

 シュールです。

 はっきり言って、イカれている。

 こんな人生になるつもりは、なかったんだけどな…。

 なってしまったものは、仕方ない。

 受け入れて、生きていくより、他にない。

 ため息をついて、立ち上がり、仲良しの二匹に、西武ライオンズのバスタオルを掛けて差し上げ。

 天井を仰いで、しばし、立ち尽くします。

 Airを買わない、となると。

 MacBookは、Pro一択。

 iPhoneは、しいて言えば、Pro。

 iPadは?

 …先頃、僕は、iPadの購入基準を、10インチ以上のスペースグレイ、と定めた。

 直後、Appleによる、新製品情報が解禁となり。

 iPad Proから、スペースグレイが消えた。

 元々、買うつもりはなかったけれど、これによって、僕が、iPadのProシリーズを手にする可能性は、中古品を除いては、ゼロとなった。

 無印の第十世代に、スペースグレイはない。

 miniシリーズは、10インチに満たない。

 …どう考えても、Airしか、ないんですよ。

 Airシリーズ、スペースグレイ、128GB。

 これなら、基準を完全に満たせるし、iPhone12 miniの対として、容量も揃えられる。

 もし、どうしても、Airは嫌だ、と言うのなら。

 今代の、無印の第九世代が、僕にとって、最後のiPadになる。

 もしくは、基準の片方を犠牲にして、無印の第十世代以降、もしくは、miniに、切り替えなくてはならない。

 ちなみに、今代に、今のところ、不満はない。

 このまま、ラストiPadとなってしまっても、いいかな、と思っている。

 じゃあ、そうすれば?

 どのみち、iPadは、メインの執筆機器ではない。

 脇道で、節を曲げるくらいなら、いっそ、すっぱりあきらめなよ。

 iPadは、今代限り。

 何があっても、Airは、入れない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …そうしようかな。

 というか、そうするしか、ないよな。

 捨てたわけではない。

 初めから、なかったのだ。

 ないものは、ない。

 あえて、補おうとしない。

 どんなにイカれていようとも、ノーカット完全版の人生を、書いて、生きます。それでは、また。

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