見出し画像

千文小説 その994:命中

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 iPadは、二台体制で、落ち着いてきました。

 無印の第五世代は、蓋をスタンドに、置いた形で。

 無印の第九世代は、キーボード付きカバーの、キーボードに惑わされず、折り畳んで、手に持つ形で。

 それぞれに、使ったり、使わなかったり、ゆるやかに、付き合っていけば、長保ちしそう。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 そもそも、僕にとって、iPadは、メインの執筆機器ではない。

 iPadを使っている時は、基本的に、オフタイム。

 できるだけ、義務もなく、制限もなく、心ゆくように、接したい。

 快適は、完璧からは、生まれない。

 ちょっと古かったり、ほどよく持ちづらかったり、なんとなく、引っかかりがある方が、真にリラックスできる。

 なんで、二台もあるのかな?

 一台にまとめちゃえば、すっきりするんじゃない?

 頭の回転も、余計なお世話。

 なんでかな…。

 なんか、そうなっちゃったんだよね。

 小首をかしげるにとどめておいて、とにかく、普通に、使いましょう。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、大爆睡の愛猫の、すぐにはみ出す大きなおしりを、時折、西武ライオンズのバスタオルで、くるみ直して。

 炬燵の上、静かに並んだ電子機器集団、カメラレオンを見やって、ため息をつきます。

 iPhone12 mini、ホワイト、128GB。

 この機体を、どう扱うかが、文字通り、死活問題。

 設定されていようがいまいが、むき出しで、ただ置いておくだけ、というのは、どうやら、アウト。

 置いておくだけ、にしたいなら、ケースなりカバーなり、アクセサリーを追加で。

 そうすれば、このデバイスは、見た目要員なんですよ。

 とっくに使い終わったのだけれど、可愛いから、飾ってあります。

 胸を張って、そのように言える。

 …という方向には、行く気がしないな。

 お飾りは、iPodで、充分。

 しかも、iPodは、かなりの優秀さで、ダウンロードは、ほぼ一瞬だし、アカウントにデバイスが追加されました、という通知も、決して外さない。

 何かととんちんかんなminiには、もう少し、働いていただかないと。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 さりとて、現実は厳しい。

 iPhone7は、未だ現役、iPhone14 Proは、末永い買い継ぎが確約された、筆頭愛機。

 リセットのリの字もない二台に加えて、iPadも二台、構えているとなると、iPhone12 miniが、実践的に役に立つ場面というのは、そうそうない。

 しいて言えば、電子書籍かな…。

 iPadたちの重みに疲れた時の、助っ人ポジションくらいしか、思いつかない。

 飾りも飾らず、役目も僅少。

 いったい、どうすればいいのでしょう。

 途方に暮れたら、まずは、深呼吸。

 心身をほぐして、息を整え、姿勢も正し。

 切迫もしていないが、たるみきってもいない、ほどよい精神状態をあつらえて、さて。

 改めて、あぐらに腕組みで、熟考です。

 用途としては、やはり、電子書籍リーダー。

 バッテリー保ちが、驚異の短さで、動画鑑賞等のオンライン作業をすると、あっという間に、減る減る減る。

 ネット接続は、iPadにお任せするとして、極力、省エネモードで。

 …いっそ、電子書籍専用機にしますか。

 miniの特徴として、とにかく、しぼると、うまくいく。

 使い道は、一つ。

 装飾品も、一つ。

 何にします?

 くらいで、ちょうどいい。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 それも、がっつりではなく、あくまでも、ミニサイズ。

 iPadで読んで、疲れたら、休憩して、次は、miniで、軽めに。

 キリのいいところまで、などと気を回さず、さらりと、自然に、数ページ。

 …これがまた、粘着質の僕には、難しいんですよ。

 修行のために、miniが遣わされたのか、と思うくらい、薄く軽く、に向いていない。

 この世は、道場。

 頑張ろう。

 さて、では、アクセサリーは、何を?

 ケースのみ。

 カバーのみ。

 画面保護シートのみ。

 ステッカーのみ。

 スマホリングのみ。

 カメラレンズカバーのみ。

 それも、さりげなく、控えめに、小さめに。

 …列挙しただけで、発狂しそうだね。

 やっぱり、向いてないな。

 ミニマルに貪欲、清楚系食虫植物とは、まるで折り合わない。

 なんで、よりによって、小さなホワイトを、買ってしまったのだろう…。

 命中したとしか、言いようがない。

 僕が僕であるだけで、こぼれ落ちていったあらゆる要素が、iPhone12 miniの形を取って、出戻った。

 己の手落ち、引き受けずして、物は書けない。

 真っ白な闇に、存分に、苛まれる覚悟です。それでは、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?