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千文小説 その955:薫風

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 四十一歳になりました。

 King Gnuの常田さんを初め、同じ日に生まれた皆様、まことに、おめでとうございます。

 同じ日に亡くなられた方にも、心より、ご冥福を。

 奇跡のようであり、取るに足りないものである、ささやかな人生を、彼岸と此岸に拡大して、ともに過ごして参りましょう。

 ぶんどわむぎゃもぎゃー。

 すみません、すみません。

 どうでもいいから、早く、飯をよこせ。

 修羅の形相でお怒りの、我が愛猫にして、絶対君主に、かじられつつ。

 狭い台所で、文字通り、足の踏み場もないまま、どうにか、味噌汁掛け温泉卵ご飯をご用意し。

 むんまー。

 あぐあぐ。

 まぐまぐ。

 めやーん。

 無事、ご満悦いただいて、ほっとしつつ、ごちそう朝ご飯を、ご相伴します。

 不惑は過ぎましたが、まだまだ、惑ってばかり。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンも、定まったと思ったら、別の要素が現れて、常に、流動状態。

 iPhone12 miniが、クローゼットから帰還したのみならず、かっこいいステッカーを吸い付けて、サブ機として、見事、再誕したおかげで。

 iPadの機能が、完全に、浮いてしまいました。

 これまでは、最新のOSを搭載しているのは、今代のiPhoneと、iPadだけ。

 MacBookも、最新ではありますが、システムが異なるので、同列には扱えない。

 iCloudに、バックアップが残せる中で、OSのアップグレードが継続しているモデルは、二台しかなかった。

 それが、12 miniの帰還により、三台に増え。

 かつ、手に持っての操作性を比べると、断然、スマホに、軍配が上がる。

 かといって、キーボードを付ければいいかと言うと、さにあらず。

 今度は、MacBookの、真性Magic Keyboardが、立ちはだかる。

 進むに進めず、退くに退けない、形態に関する難題のみならず。

 10インチ以上のスペースグレイ、かつ、ProでもAirでもない機体は、残念ながら、もはや、入手困難。

 次代を迎えるためには、程度の差はあれ、何らかの形で、妥協が必要とされる。

 八方塞がり、どん詰まり。

 …いっそ、iPad、やめようか。

 ふんまー。

 あぐあぐ。

 まぐまぐ。

 むやーん。

 カメラレオンから、iPadが抜けたとすると。

 MacBookを挟んで、iPhoneが三台、iPodが一台。

 …不便では、ないと思うけど。

 なんだか、バランスが悪いのは、確か。

 が、さっぱりするのも、また、確か。

 使い切れそうな気がする。

 iPadは、使い切れない気がしたの?

 …そうなんです。

 食べても食べても減らないご飯のようで、胸焼けがする。

 でも、それを言ったら、MacBookの方が、いかついんじゃない?

 買ってから、二年経っても、バッテリーの最大充電量、100%のまま。

 ちっとも、使い切れてないよ?

 MacBookには、負担感はないの?

 むふーん。

 とてっ。

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 ぽてっ。

 にーごろ。

 よしよし。

 なでなで。

 くふーん。

 満腹になって、席を降り、僕の膝に転がってくつろぐ愛猫の、ぽんぽこお腹を、マッサージしつつ。

 試しに、iPadを、床に下ろして、残ったメンバーの様子を見ます。

 ほっとします。

 いける。

 謎の自信が湧いてきて、自然と、箸も進みます。

 MacBookを使わない日は、ありません。

 書くことと、MacBookは、イコールです。

 どれほどバッテリーがあり余っていようと、それは、負担ではなく、宝庫。

 いくらでも、書いていいよ、という、寛大なるご慈悲。

 受け取らないわけにはいかない。

 ありがとうございます。

 君の存在が、僕にとっての、何よりの、誕生祝いです。

 …と、iPadに言えれば、問題は、何もないのに。

 MacBookとiPadは、違う。

 iPhoneとiPadも、違う。

 どうなの?

 物書きにとって、iPadとは、何?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 健やかに、爆睡にお入りになられた愛猫を、西武ライオンズのバスタオルでくるんで、抱き直し。

 姿勢を正して、正面の壁、ドーベルマンの肖像と、対峙します。

 iPadでも、書けなくはない。

 しかし、フリック入力なら、iPhone、タイピングなら、MacBook。

 それらを超えた、iPadならではの書き方というものを、僕は、どうしても、見つけることができない。

 iPodのように、存在自体が、骨董で、寿命まで、大事に面倒を見て差し上げるしかない、完全なるオワコン、ならぬ、オワデバならともかく。

 世界に誇るタブレット端末の最高峰を、勝手に、袋小路に、祀り上げてはいけない。

 iPadは、使えない。

 でも、やっぱり、使いたい。

 葛藤を、しばらく、薫風にさらします。それでは、また。 

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