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千文小説 その750:See you tomorrow.

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 …そこ?

 マジで?

 いいの?

 ぐふーん。

 どふーん。

 愛猫に、言っているわけではない。

 僕の頭は、愛猫にとって、定位置。

 ぐらぐらの、ぼさぼさでも、乗っかっていると、落ち着く。

 …こちらの首が、痛いんですけどね。

 ともかく、肩をよじ登って、頭頂部を制覇して、ご機嫌にごろつく愛猫が、落っこちないよう、腕を上げて、支えつつ。

 炬燵の上、三台並んだ電子機器を見つめて、驚愕のため息をつきます。

 昨日、半泣きで、脳内に、「Pretender」をループさせて。

 iPhone7の、電源を切って、本棚へ。

 iPhone12 miniを、リセットして、箱に収めて、クローゼットへ。

 これで、スマホは、iPhone14 Proだけになった。

 MacBook Proと、iPod touchと合わせて、新生・Apple三兄弟。

 むひーひひ。

 ごろごろ。

 ぐらぐら。

 長きにわたる、電子機器問題も、ここに終わった。

 あとは、各々、どんなふうに使うか、だな…。

 あれこれと、試行錯誤して、相変わらず、だるい目をこすって、翌日、つまり、今日。

 ふと見ると、天板の上、Apple三兄弟が、入れ替わっている。

 …そこ?

 マジで?

 いいの?

 冒頭に戻る、の驚愕螺旋を、引き起こしたデバイスとは。

 iPhone Proではない。

 MacBook Proでもない。

 なんと、いつの間にか、iPodが、iPhone12 miniになっている?

 嘘でしょ?

 だって、あれほど、身を切られる思いで、ファンであるところのバンドを取り替えてまで、リセットしたのに。

 なんで、ちゃっかり、すり替わってるの?

 にむーふふふ。

 ぞりぞり。

 ぐらぐら。

 伸び放題、白髪混じりの頭髪に、気持ちよく、ほっぺたをすりつけて喜ぶ愛猫の、大きなおしりを、思わず、ぎゅっ。

 手のひらで、握りしめて、…いかん。

 ミントさんに、叱られる。

 某番組の、ぼーっと生きてんじゃ、ねーよ。

 決め台詞で有名な、五歳の女の子を、愛猫に置き換えて、慌てて、力をゆるめ。

 ごくりと息を飲んで、おそるおそる、電源を入れてみます。

 …どうやら、再設定までは、していない。

 Hello。

 ニイハオ。

 こんにちは。

 初期画面が、挨拶を浮かべるだけで、やはり、昨日のリセットは、夢じゃなかった。

 しかし、…なんでまた、miniを?

 誰が?

 本気で、覚えていない。

 ボケたんじゃ、と怖くなるくらい、自分のしたことが、記憶から飛んでいる。

 再設定、する?

 …しかないよね。

 考えてみると、確かに、それが、最もふさわしい解決。

 iPhone Proに、ワンオペ労働の負担もかけず、OSのアップグレードも継続でき、なおかつ、iPadではない。

 iPadでさえなければ、iPhoneだろうが、iPodだろうが、構わない。

 それほどに、Apple謹製、超有能なタブレット端末ともめて、そこだけは、永劫、外したくない。

 となると、どうしても、現役の、SIMカードの入ったiPhoneをサポートできるのは、iPhoneになる。

 iPodは、やはり、もう、ほとんど使い道がない。

 インターネットライターの命綱、Safariの使用が制限されている状況というのは、大リーガー養成ギプスを意味なくはめた幼稚園児。

 取ってあげなさい。

 成長期の心身に、悪い影響を及ぼすから。

 そう。

 インターネットライターとして、僕は、まだまだ、園児以下。

 これから、がんがん書いて、恥も経験も積み重ねていく時期。

 そこを、サポートの終了したOSでまかなおうというのは、ケチも度を超している。

 ぜひ、Safariは、OS最新で。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 ぐらぐらのまま、ぐっすり寝落ちした愛猫を、頃合いを見計らって、そうっと、頭から下ろし。

 ひよこの毛布にくるんで、膝に収め、凝った首を回しながら、天井を仰ぎます。

 まだリセットしていない、iPhone7では、駄目かな?

 …駄目です。

 そこは、「Pretender」に、しっかり押さえてもらわないと。

 まだまだ動くけれど、OSのアップグレードは、既に停止している。

 加えて、ブック型カバーが付いているため、文字を入力したり、画面を回転させるのが、微妙に不自由。

 好きなんだけどな…。

 所持しているデバイス中、一番、親しみを感じているのに。

 いや、感じているからこそ、別れなくてはならない。

 新しく、始めるのだから。

 全部洗い流して、また明日。

 See, see, see, see ya tomorrow.

 King Gnuファンに、すっかり戻って、白黒のデバイスを手に取ります。

 明日への道は、いつだって、今日しかないのです。それでは、また。

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