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私の中の"特別枠"について


「ああ、この流れ、見たことあるなあ」


最近のアインシュタインを見ていて思うことである。

私はもともと三四郎と和牛が好きで、その2組が徐々に階段を登るようにテレビの人になっていった様子を見守っていた。

今のアインシュタインは2組と似た階段を登り始めていて、来年には東京の番組のレギュラーとか持ってるのかもしれないなと思う。

そんな"前夜"とも言える今のアインシュタインを見ていて、ふと彼らは私の中で「特別枠」だなと思った。

これから綴るのは、彼らがいかに特別であるかということ、そしてこれからの話である。


少女漫画のような出だしにするならば、出会いは最悪だった。

M-1が再び始まった2015年、私はそのときラストイヤーだった磁石を準決勝にどうしても上げたくて、狂ったようにGyaoの動画を再生していた。

当時は謎の存在でしかなかったニッポンの社長が勝ち上がって、半ばヤケクソで敗者復活戦を眺めていたら、そのときアインシュタインが披露していたネタは「ラジオのパーソナリティ」。

磁石のことしか考えていない幼い私は「それは彼らの18番のネタ、アインシュタインのこのネタは面白くない」と全否定した。

それ以来ずっと悪いイメージを持ったままだったが、和牛にハマったことをきっかけに、また彼らと出会うのである。
少女漫画の表現を借りるなら、転校生が教室に入ったときの「あー!あんた、あのときの!」である。

和牛を好きになり、アキナ牛シュタインというライブに何回か行けたのは今でも不思議で、あれは夢だったんじゃないかというような感覚に陥る。

何度も3組を見ることで、最悪のイメージだったアインシュタインに対する気持ちが

「意外と悪い人じゃない」
「河井さんはかわいいところがある」
「稲田さんは気遣いができて繊細」
「2人は魅力的」

と変化していくのは、私だけでなく一緒にお笑いを見に行く母親も同じだった。

最初は他の2組に比べるとぎこちなく思えた2人の関係性も、見れば見るほど良くなっていくのがわかった。

「行くライブにアインシュタインがいれば嬉しい」は「アインシュタインが出ているライブに行こう」に変化していった。

2019年は、結果的に2人をたくさん見た年になった。

河井さんは時と場合によってコロコロと表情を変える人だと思う。

MCをしているときは誰よりも良い反応をして、ルールは覚えてきてカンペは見ない。
ゲームで使ったものを片付けながら進めて、知らないうちにジャケットを脱いで、先輩後輩関わらず細かい情報を覚えてきて活躍の場を与える。
自分がゲームに参加するときは必ず妙なガッツポーズをするし、少年のように全力。
たまにおじいちゃんのように抜けているところがあるし、ビビり方は女子。

今年は色んなライブで、色んな表情を見ることができた。

稲田さんは秘めた熱さを持っていて、人間的にとてもかわいらしい人。

MCでありながらプレイヤーという立場では、グダッとした空気のときに必ず喝を入れる。
舞台の端っこからよく観察し、よく笑い、然るべきタイミングで前に出る。
人を貶めるような笑いの取り方はせず、自分がイジられても必ず空気を明るくする。
いつも人を気遣っていている。打ち上げの場にいることは少ない。

先輩たちに囲まれていたときには見えない、兄貴分としての存在感が伝わってきた今年。


私は芸人さんを好きになるとき、本来はネタから好きになる。

磁石も、和牛も、吉田たちも、そうだった。
アインシュタインはそうではない。
もちろんネタも面白くないわけではない。
(こんなことを言いながらネタだけのライブも行くのが実際のところである。)

でも彼らに魅力を見出しているのはそれ以外の部分が大きい。
人としての部分がもっと見たいと思う特異な存在である。

彼らがインタビューで「舞台には立ち続けたい」としながらも「冠番組を持ちたい」と話していたのを見たとき、妙に納得できる気がした。

ネタで戦う賞レースがどんな結果になろうとも、2人の人柄が世に出ていく未来がもううっすらと見えている。

それは誇らしいしどんどん羽ばたいていってほしい、と言い切れたら俗に言う「良いファン」なのかもしれないが、寂しいという気持ちを持ってしまうくらいには彼らに深入りしてしまったらしい。

今は大変な時期で、ファン層がうねるように変化し、2人に興味のない人から見れば、確かに騒々しく軽く見られる状況なのかもしれない。

その気持ちも十分にわかる。
でも地に足つけてひっそりと応援している方々、そして想像以上に大人でドライな2人を知ると、少し悔しい気持ちになる。


2人の「漫才劇場」に対する思いは強い。

河井さんがありとあらゆる後輩をご飯に連れて行っているのも、稲田さんがグッズ販売に力を入れているのも、1月の公演数がぐっと増えているのも、今の私には、恩返しのような気がして仕方がない。

彼らが遠くへ行くということ、それは劇場の構図も収益も大きく変えることになると思う。

そんな大きな期待と明るい未来を背負った2人を見送る準備をしながら、あと少しの間、駆け抜けていくアインシュタインを近くで見させてほしい。


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