見出し画像

障害者は優等生を求められる?

先回の記事では障害者雇用における障害者のイメージについてお話ししました。

それに関連するところもありますが、障害者雇用では優等生が求められるなと感じることが多々あります。
これは支援機関が入っているからこその弊害かもしれません。

さて今回は、障害者雇用では優等生が求められていると感じた事例と、そういった事例に至った理由探しをしてみます。
今回まとめる内容は、必ずしもすべての企業がそうだというわけではありません。ひとつの事例としてご理解いただければ。

優等生が求められると感じる場面

そりゃまあ優等生が求められるのは障害の有無関係なく当たり前のことですが。

私のような支援者が定着訪問と称して職場を訪問する際、対応いただく企業の方に「最近ご本人はどうですか?気になることはありますか?」と伺うことがあります。
大抵、「仕事に集中できていないようで」とか「ちょっと休みが目立ってきましたね」とか、「新しい仕事を任せてもいいものか」といった内容の話をいただくことが多いです。改めて考えてみてもっと多いのは「元気にやってますよ」といったものが多いようにも思います。ありがたい。

さて、その中で少し「どうだろう」と思うことがちらほら出てきます。
例えば、「周りとあまり話さないんですよね」とか、「夜更かしをしているようで」といったものです。

「周りと話さない」をよくよく聞いていくと、昼休みの雑談のことを指していることがありました。個人的には「別にいいだろ」と思った次第で。
ちなみに仕事中に必要な報連相やあいさつはされているようでした。じゃあなおさらよくないかと思ってしまいます。
しかしまあ、担当者の言っていることもわかります。雑談をすることで仕事が円滑に回ることはよくわかる。私も苦手な雑談をちょっと頑張ることだってありますので。

また、「夜更かしをしているようで」というのも、よくよく聞いてみると遅刻には至っていないのだとか。日中も少し眠そうだけど大きなミスには至っていないとのこと。
じゃあいいじゃないか、と思う私。確かに、遅刻のリスクを孕んでいるのはわかる。でも20代の若い子が夜中まで起きてゲームや趣味をしていたっていいじゃないかと思うのです。
みなさんはどうでしたか?遊びたい時なかったですか?自分は一人暮らしで遅刻が怖かったからめったにやらなかったけど。それは個人差じゃないですか。

また、たまーにある話で「本人の自立を促したくて」というのがあります。
親の作った弁当だけでなくて、自分で買ってくるとか、社食を食べるようにとかを促してくる会社。
一方では「生活のことに会社は触れられないから」とか言ってる会社がそう言ってくるから驚き。

個人的には、今の仕事が回っていれば何してもいいというのが極論。
あとはやっていることが仕事に響くリスクを承知でやっていて、実害が出ていないのであればいいのではと思います。

「あいさつがない」と言う会社に勤める方は、全員きちんとしたあいさつを欠かさずされているでしょうか。
「夜更かししていて」と言う会社に勤める方は、全員何時に寝ているのでしょうか。
本人の自立を考えるのは誰の役目でしょうか。誰が決めるのでしょうか。

支援者として本人に何と言えと、と思うこともないわけでもない。
一般論としてあいさつは大事ということや、夜更かしは遅刻のリスクもあるからほどほどにねということや、自立についての考えを聞くことはあります。
関係性がある程度できていて、冗談も通じる対象者には、「支援者からごちゃごちゃ言われたくないならあんまりそういうこと(夜更かしをしているとか)を企業担当者に言わない方がいいよ」と伝えることもあります。
「めんどくさいでしょ、毎回言われるの」とか言っちゃうタイプです。まあまあ人を選びながらですが。

結局本人がわかっていてやっているのであればそれは止められないし、止めたいのであれば支援者自身や周りが一貫してやっているモデルを示さないと、「なぜやるのか」とか「あの人はやっている(やっていない)」が始まるので。それを合理的に説明できるのならいいですが、大抵の場合はできないし、そこを詰めていくとハラスメント的な対応になっていくようにも思います。

なぜそういった話題が出てくるのか

これは支援者がついていることの弊害なのかもしれないと思うことがあります。
私たちの支援はざっくりと言って「異常が起きていないか、課題がないかの確認をおこなう」ということになります。
それを答えるべき担当者は「異常はないか、課題はないか」という視点になりかねません。担当者の性格によっては白黒をつけることになり、他の従業員より厳しい目で評価されている可能性すらあるようにも思います。

また、他のいわゆる健常者の従業員があいさつをしていなかった時に注意をするかというと、どうでしょうか。
実際うちの職場にもいますよ。あいさつしない人。恐らく健常者の方。いやどっちでもいいけど。個人的には「ふーん」と一線引きますが、それ以上関わりを断つつもりもありません。
障害がある従業員に対して注意を迷った際、来月に来る支援者に伝えようと思うかもしれません。伝えることでそれが課題化し、本人の評価に繋がってしまいます。

障害者雇用だから支援者を、と考える人は支援者の中にも多いですが、必ずしもそうではないと思います。
支援者をつける意味、メリットやデメリットを考え、その上で本人が判断していいものだと思います。といっても、企業側が「つけないと雇用できない」と言う場合もあります。
ぶっちゃけそんな企業でもいいのなら、ということですが、諸々含めて広い視点で考えられる機会があるといいなと思います。

まとめ

障害者雇用には優等生が求められる。

あいさつをして、夜更かしをせず、他の従業員とは昼休みに雑談し、自立を目指している。
それは優等生だと思いますが、正直そんな人ばかりではない。それは障害に限らずです。

私はあいさつをしているし、夜更かしはしませんが、雑談するかというとまああまり多数の中ではしません。自立はしています。でも偏食だった時期もありますし、仕事も時々サボります。バレていないのかもしれませんが、サボります。主に出かけた先でふらっとどこかに立ち寄ったり、事務所でぼんやりしたり、記事の下書きをしたりすることもあります。
でも仕事を止めているわけではありません。ここが重要なのです(自己弁護と極論)。

障害者雇用では支援者がいます。「生活面の支援もします」なんて書いてあるものだから、企業担当者からすると良くも悪くもいろいろと言いやすい人なのかもしれません。
「それって人それぞれでは」ということや、「周りの人はどうですか」と言いたいことが持ち込まれることもあります。
やんわりとそれを伝え、どのように聞けばいいのか企業担当者に考えてもらうこともあります。

本人には心配されている理由を伝え、仕事に影響するリスクを孕んでいることを理解してもらいます。その上でどうするかは本人の裁量です。
どう思ったかとか、本人の価値観を知るいい機会ではありますかね。

企業の方から「みんな手を抜いているところだしね」とか「まあみんな好きで仕事するばかりじゃないわな」みたいなことを聞けると人間味を感じます。
そういう前振りの元に、あいさつは大事なんだよという根本のところを話してくれる人もいます。「こうしろ」でなく、「だから大事にしているんだよ」と伝えると、理解してくれる人は理解してくれるものです。

支援者としても、企業から言われたことを真に受けるばかりではなくて、仕事をしている人間として周りを見て考えることは大事だと思います。
自分が同じことを言われたらどうかとか、自分の周りの人はどうかなとか。

障害者と言っても、健常者と同じ人間です(当たり前だろ失礼だな君は)。
自閉症の人はずっと同じことができるというのはなかなか暴論だと思います。そりゃ疲れるって。できる人がすごいんだって。

たまにはサボりたくだってなるって。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?