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ばくはつ

真っ白な光に覆われていく、感情が、置いていかれた後の空っぽな肉体にばかり同情してしまう、振り返ることで正しく痛むことができたのなら、ここで終わりにすることだって間違いではなかったはずなのに、誤ることなく繰り返されてしまった清涼と、隣り合わせに息をした夏に、また同じ絶望を前にして、大きく息を吸い込む、死にたいと叫ぶロックバンドのライブチケットを栞にしているあの子、カメラロールには薬のシートと水槽の中でライトアップされた海月ばかりが並んでいる、同じような文章ばかりが下書きにたまって、伝えたい本質は届けたい想いは初めからひとつもなかったのかもしれないなって、かたちにすることが怖くなるから、残っていくことがだんだんと呪いのように思えてくるから、ひとつ吐き出した言葉でさえ、信じるだとか疑うだとかの対象になっていくことがどうしても許せなくて、許すのはいつも自分の外側にある器官なのに、投げかけられる言葉よりも外に出したい言葉の方に強く傷つけられているから、こんなのずっと変わらないけど、前より少しだけ、弱さを言い訳にした逃避行が増えたような気でいる、自分が臆病だから、輝いているものを素直に綺麗だねって頷けないんだって、いつだって自分自身に銃口を向けている君の強がりがどうしようもなく好きだったなって、それだけのことが受け止めきれるのならこれ以上くだらない文章を綴って夜を引き伸ばしたりしないよ、できればもうこれからの余生は荒れることなく、平穏な毎日の中で柔らかな感触を抱いていたい、傷ついた心を守るための言葉が、言葉を生み出すための傷になって、そのうち攻撃性を伴っていくのであれば、どうしたらこの緩急を誰ひとりとして傷つけることなく乗り越えられるんだろうなって、それっぽい正義感だけが取り残されてしまった背後に、もう寂しさを言い訳にした犯罪の幼稚さに気づいてしまった僕らがただ、呆然と立ち尽くしている夜に、かつて壊しきれなかった横文字のあれこれが今になって突きつけられている、少しリズムを崩してしまえば、なにも残らない体積であるのに、夏という単語で形容したがる感情にあまりに弱い僕らであるから、いまもここから離れられないでいるのだろうし、君の文才が世界にばれてしまう前に隕石でも降ってすべて滅んでしまえばいいと本気で思っているよ。

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