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泣けない夜に思うこと

こういう日に泣けたら良かったな、たぶん、こういう時に泣けたら良かったんだと思う、なにかを伝えるということがあまりに億劫で、伝えたい気持ちはたくさんあるのに、上手く言葉にできないまま、ずっと、重低音が脳みその真ん中で揺れ続けていて、止まない、わたしもう大人になったのにな、いつまでこうなんだろう、いつまでこうで許されるんだろう、一秒先が過去になって、それでも呼吸が続いているから、どうしても、あなたとわたしは違うリズムで生きていて、違う体温で、違う感度で、それがすごく寂しく感じる日、こういう日に泣けたら良かったね、それか、他になにか伝える方法を、たとえばそれとか、できるだけ近くがいいね、近くにいたいね、優しさって丸くはないから、四角くないだけだから、たまに、受け取るのが怖くなってしまう時があって、この続きにあるものが、永遠ではないこともわかっているし、約束された明日がないことも知っている、だけど、それでも、いまこの瞬間だけでもいいから、世界から目を逸らして、両耳を塞いで、すべてを忘れてしまおうと思ったんだ、忘れても許される気がしたんだ、いまは、いまだけはあなたが隣りにいるから、喜怒哀楽までも捨て去って、言葉なんかなくても、わたしとあなただけの感情表現で明かす夜を、誰にも邪魔されないふたりだけの夜を見つけたい、毎日が、こんなに柔らかな白であればわたしはもう幸せを探さないで済むんだよ、まだ少し、未熟な祈り、崩れていく日々にはっきりとした、こころの輪郭、苦しいも、悲しいも、寂しいも、コンビニの新作スイーツを話すような気軽さで伝えられたらいいのにね、大丈夫だよって背中をさするあなたの優しさに、わたし、泣いてしまえたらよかったかな、そしたら、なにか伝わったのかな、いつか、あなたの目の前で泣くことができたら、弱さを、隠さずに過ごすことができたなら、そのときはわたしが、きっとわたし自身に対して初めて、生きていてほしいと泣くんだろうな、と思う。

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