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ちっぽけな逃避行

もうどこにもいけなくなってしまった、この世界に、居場所ほど不安定なものはなくて、どこにいても、邪魔者となる、存在が、醜い、そこまでして手に入れたかった心は、とっくに他人に殺されてしまったし、なんて被害者ぶって、また今日も、自分を殺すのは自分なのに、乾いた苦しさをぼかす、窓もなく光の届かないワンルーム、床には飲みかけのペットボトルとコンビニのレジ袋が散乱して、こんなはずじゃなかった、を繰り返して適当な言葉を並べている、最低にしたのは僕の方で、他人の干渉はここでは関係がなかった、僕自身の不幸には、何一つ関係がなかった、同じ場所で足踏みを続けているからか、連日の雨でぐじゅぐじゅになった土も、僕の靴跡ですら受け入れてくれなくなったし、毎晩のように放り込まれる夜は、弱り果てた僕に少しも優しくないし、どうやったら抜け出せるんだろうなって、どうやったら忘れられるんだろうなって、このまま死ぬまで考え続けることが確定しているなら、期待しかけている君の心を引き止めてやっても、文句は言われないだろうか、生まれつきの窪みからは、初めから向こう側が見えてしまっていたから、その一秒前から未来がちらついていて、気が狂いそうでさ、青と白の斑点が幻覚だって知らなかった頃から、この世界には存在しないものなんだろうなってことはわかっていたし、僕の人生がこうなることも、まあそうだよな、くらいでしかなくて、ちっぽけな逃避行を嘆いているくらいなら、世界を一番に否定して、僕が僕を一番に否定して、とどめを刺してしまえればいい。

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