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いちごみるく

まっしろのチュールスカートでふわふわ天使になれる、おもたいトートバッグにはふたり分の羽根が押し込まれていて、アイロンなんてないからしわは手で伸ばしたよ、デコルテのあいたキャミソール、夏のきらめきによく似合う、そんな少女性に憧れてたの、ぴんく色のチークの濃さで今日の運勢が決まるから、くしゅくしゅのカフスでは隠しきれないバーコード、人生に見出しをつけるなら、いまはちょうど中略の二文字でまとめられちゃいそうなくらいの波の中、ってこれは嘘だけど
、そういうことにしといてね、そして、中略の続きはないんだって、知ってるよ、最終章は天使になって登場するんだから、その前に一度、終わらせないといけないものがある、もっとかわいく生まれたかったなあ、ビー玉みたいな瞳は人工で、それでも見える世界の彩度は変わらなかった、あのね、わたし、あなたに聞きたいことがあります、いつかのさようならが約束されていたとして、それでも関係を築きたいと思いますか、今日で終わりかもしれないって、そんな気持ちを毎日抱えながらでも、これまで通りまっすぐに目を合わせられますか、わたしには、できそうにないです、溢れてきちゃう涙を隠すことで精一杯、あなたの本音に知らないふりを続けていても、天使になることで全てが救われると本気で思ってる、いつかはちゃんと終わるから、その日までは諦めきれなくてもいいよね、少しだけ間違ってしまった数分間が、あまりにも優しくて、あまりにも、甘くて、たぶんこの先ずっと忘れられないんだと思う、もう十分だよね、わたしたち、もう十分傷ついたよね、どうしようもないこんな今日のこと、ぜんぶ寂しさのせいにしても怒られないよね、ってそんなことを零しながらふたりで夜の静まりを歩いたって、信じていたものが順に音を立てて崩れていくだけだから、こんな夜であなたの寂しさを埋められるのなら、わたしはもうなんだっていいよ、ひとりじゃないのにひとりぼっちが肥大していくベッドの上で、終わりの日ばかりを考えています。

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