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ポッケからするめいか92

用水路。


しょうさん家のすぐそばには用水路があります。
用水路は道路に面した所はフェンスでおおわれていますが、
しょうさん家沿いの部分はフェンスはなく50cmくらいの高さのコンクリートで舗装されているだけです。

用水路は家の2mほど下を流れていて、
普段は小川のようにチョロチョロと緩やかに流れています。


昔はこの用水路にザリガニがたくさんいて近所の子供がよくザリガニ採りに来て賑わっていました。

たまに用水路に落ちる子もいて、
度々しょうさんたちが助けてあげたりもしました。


毎年夏の終わりに台風がやってくるときが1番緊迫する時です。

普段はチョロチョロの小川のような用水路も数十分豪雨に見舞われるだけで水位は倍に増します。


昔、ある台風がやってきた年、
用水路の水位はしょうさん家の床上あと数10cmまできたことがありました。

トイレの便器はボコボコと音を立てていました。

しょうさん家は平屋なので、子供たちのランドセルや学習用具は押入れの上部に移動させ、
ミキさんは避難の準備をしていました。


その頃しょうさんは、

水道屋(配管工、設備業)のため、こういった災害時に動く要員として町会に登録されていて、
しょうさん家よりももっと下流にある家が浸水しかけたので応援に行っていました。

けれど下流でこれだけ推移が増しているのだからうちも危ないと思ったしょうさんは家に戻ってきました。
(実際、下流には消防車も出動していたのでしょうさんは特に手伝えることもなかったようです。)

もう、そん時はそん時だ。
と、床上になることを覚悟していたら、

そこから徐々に雨脚は弱まり、
用水路の水位も少しずつ減っていきました。



今では下流の家はだいぶ前に引っ越し、
跡地には大きな貯水槽ができました。

近年、
あの頃よりもはるかに大きな台風が来ていますが、
用水路の水位は増しても床上の心配は無くなりました。

ザリガニもだいぶ前に居なくなりました。



今はただ家から出る生活用水が用水路に流れる音がする時に、
用水路の存在に気付かされます。

そしてミキさんは、
毎日家の裏で隠れ不良をしながら、(←喫煙)
水の流れを見つめ休憩するのです。

そこに木々が生い茂っているせいか、
用水路の向かい側の資材置き場のおじさんが、
誰にも見られてないと思ってこちらを向いて立ちションします。

えっ。

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