川柳55句『歯車を幕』
権利を叫ぶ百足に群れで怒られた
キスを躱わせば生まれる世界
戯曲から付箋を出して説得す
スキャナーに花弁載せて死んでいく
縦軸を登る人から消えてゆく
横軸に向かって墜ちる禁止事項
順位までzip形式に成り果てた
記憶からアンモナイトを記録する
構成が異なる文字をやきつくす
非営利の言付けだから可変数
入り組んだ蜘蛛の巣の道を探して
雲がなく特異点ほど列挙する
生贄が正義正義と謳ってる
出身を正当性に置き換える
中立な三枚舌を切り裂いた
むずかしいむずかしいとただいうだけ
石板に棒人間のワンシーン
銀杏の不可逆性を思い知る
芋虫の新陳代謝に涙しろ
煉瓦から哲学的なルッキズム
スリッパが種族の壁を越えてゆく
きっかけは剣と魔法のアミノ酸
使い捨てのフォーマットで熊と踊れ
寄港地のない女王さえ丸くなる
飛行機のパラドックスを撫でまわす
第三のアナーキストとカリブ海
霧が出て石橋跨ぎ塩舐める
田楽を崇め始めて銃を取る
聖痕にワインの染みを写し取る
ブランコの遥か南で嫌われた
空蝉を口に含んだ世界線
なんとなくトランジスタのせいにした
眠るならタルタルソースを塗ってあげる
古民家にトートロジーが詰まってた
赤くて細い線から飲んだ
カラオケで赤道掴む爽快感
断崖のキャラクターほど良く吠える
ぶら下がるサイコロと僕は真夏日
覚醒しとけば良いんじゃないの
レジ袋に誰かの指を入れていく
人間を割いて作ったこの間取り
都心部の汚れちまった三連休
イタズラすればフルボッコでしょ
ささくれの問題だけを棚に上げ
スポンジを噛んでも噛んでも目が乾く
冷凍の電話帳でも構わない
野晒しの濡れた心をじっと観る
雷鳴の傷痕探すアスファルト
万華鏡に殺意をまぶし歌わない
文化祭の末裔へ連鎖する
電磁石の細かいフックに裁ち鋏
パラソルにまだ降りかかる僕の左手
表題のブロンズ像と和解する
贋作の浮世絵ばかり鍵となる
歯車を幕切れとする幽霊譚
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