34.性善説

 私は基本的にネガティブで、人間不信な人間なので性悪説側の人間だったのだが、最近その価値観を揺るがす出来事があった。
 私は下校時、毎日バスを利用しているのだがその日はバスが良く空いている日だった。ここがすべての始まりというか、ただの自業自得なのだが、私の大事なペンケース(値段にすると6,7万程度)をバッグの横ポケットに横着して入れていた。もう何が起こるか予想できるだろうが、そこでどうやら私はそれを落としてしまったようだ、そのことに気づいたのは次の日登校してからなのだが、そのこともあってどこで紛失したものかわからない状態になっていた。正常性バイアスとは以外にも役立つもので、私はその時家にあると勝手に思い込み、精神状態を保っていたと思う。辛うじてその時バス会社にメールを送り、帰宅後折り返しの電話を入れたところ、昨日はそのようなものは発見されていない、発見し次第連絡をくれるとのことだった。まさにどん底にいるという感覚に陥った、もう買えないものだって入っていたのに。だがここで致命的なミスを犯していた、なんと連絡したバス会社は私が乗っていたものとは別の会社だったのだ。来るバスはランダムなので気にしていないと気づかないので、通常両方に連絡すべきなのだがその時は全く頭になかった。結局清掃時に私の遺失物は発見されていたようで、翌日私の下へ無事帰ってきたのだ。発見して報告してくれた方、届けてくださった運転手の方、パクらなかった乗客。誰か一人でも欠けていたら私のもとには帰ってこなかっただろう。そして大事なものはしっかりしまおうと心に刻み込まれた。人間捨てたもんじゃない。(686文字)

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