2020年 成瀬源三の俳句

本記事では2020年に賞やネット句会に投句する以外にTwitterで俳句を詠んだ句を掲載します。

【冬】

去年今年サンドバックに拳跡
人類の最後のふたり雑煮膳
お雑煮の具の名を孫に教えけり
雑煮膳エルフに嫁ぎ悔いは無し
テヘランの初空路地を駆ける子ら
手毬唄次は地球をついてみる
着膨れて早足の人並木道
三歳児のために新海苔ちぎる叔父
寒風や勧誘の人追ひ返す
垂氷より大地へ愛のメッセージ
眼球の痛み氷柱も痛かった
ひと匙の粥の重さよ粥施行
雪しまきギガ浪費する子はいねが
体拭きプレバトを観て湯冷めする
寒土用おつかれさまと肩叩く
寒土用明石海峡波しづか
白杖の先に感じる凍る滝
漉く紙は誰の心を癒すのか
大寒やみな早足の登り坂
大寒や右ストレート極まれり
ハンガーは寒くて嫌と寒鴉
接見の声も早口冬深し
豪州の声なき声よ冬深し
格子の間より凍星を仰ぐゾルゲ
狩人は愛撫するごと引き金を
流し目のてちの去りゆく氷橋
鎌鼬母に言うのは明日にする
鎌鼬SOSは伝わらず
冬天やボリス・ジョンソン哄笑す
こわごわと吾を仰ぎ見る寒蜆
葉牡丹を剥いてみたいと泣く子供
出世した友よ深霜踏みしめる
窪地には敵兵霜を踏まぬよう
事故死した後藤も見けむ寒昴
反骨の背中支える荒れた指
氷湖にて朽ちぬ恋文細き文字
待春やつるりと滑る碁石かな
ばかものと言われるだけの春を待つ
鬼やらい心の鬼は立ち去らず
「使うなら平和のためよ」中性子
寒雷やシャーレを覗くフレミング

(42句)

【春】
「気にするな、次があるさ」と言う栄螺 
松山の友をブロ解菜の花忌
もっくんに叱ってもらう菜の花忌
「絵踏せよ」命ずる声に震えあり
赤子の重み絵踏みの疼き癒しをり
種芋のいびつなほどに期待する
種芋に水とアニソン降り注ぎ
種芋に負けるな若き人間よ
恋猫はキャパのレンズを見据ゑけり
春場所や突き出せと言う少女かな
春の闇コインロッカーより産声
みちのくの春風恩は忘れまじ
傷付けた人への手紙桜まじ
祖母の手に引かれた記憶春の川
ごめんねと素直に言えた韮の花
掌の小さな命飛花落花
みちのくの春風恩は忘れまじ
エアロビの母は真剣彼岸西風
春風に揺れるちょんまげ永遠に
獄窓の菜の花故郷へ続く
Googleのeを担当する数珠子
プレスリー籠る地下室春一番

(20句)

【夏】
けんちゃんに会えぬ会いたし青き踏む
返り血は取れぬ憲法記念の日
◻︎同意します ◻︎同意しません 地球の死
ぶさいくな花だと薔薇に言う子ども
夏服の彼が容疑者逮捕状
おはじきの埃れるガマよ沖縄忌
昼顔や今年は子らの多いこと
さくらんぼ寄り添うこともまた痛み
大いなる畳の上を飛べる蚤
蚤はらうAV女優浮かぬ顔
喜劇王の右手を目指し跳ねる蚤
父と子のただ辣韮を齧る音
思い出を慈しむごと辣韮掘る
魚簗やまだ生きたいと声がした
魚簗をばたばた跳ねた目が合った
翳りゆく田に白鷺の一羽二羽

(17句)

【秋】
次期首相誰かと秋の蝉に問ふ
秋晴を裂くものあれは手榴弾
庭の隅茗荷の花は重さうに
ピーマンの中は怒りを知らぬ国
ブタ箱で夢にまで見たのは炬燵

(5句)

(全84句)
成瀬庵に掲載した2020年の句は、総計250句。

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