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鹿は鉄が好き?

実にユニークな商品が、まったく無関係な業界から発売された。それは「ユクリッド」という名前で、NETで入力してもヒットしない。幾何学の「ユークリッド」に行ってしまうからだ。この紛らわしい商品名は日鉄住金建材という鉄関連の建材を販売している会社で、用途は「野生の鹿対誘引剤」。鉄線で巨大迷路を作るのかと思ったら、まったく発想が違った。

 鉄道各社は野生の鹿が線路に入り込んで列車と衝突する事故が増えていて、対策に頭を悩ませていた。長大な防護柵を設けているが破れ目や柵の無いところを探して入り込むのであった。同社梶村商品開発センター長は「餌がない線路に、どうして入り込むのだろう?」と疑問を持った。全国の大学や研究機関に足を運んで調べたが原因はつかめなかった。ある時、鹿がレールの同じ場所を行ったり来たりする行動に着目し、レールの摩擦で生じる鉄粉を舐めていることを発見した。鹿は他の野生生物に比べて鉄分が多いというヒントから、鹿の生態を観察すること1年後のことだった。そこで鹿が好むミネラル、鉄分、塩からなる固形物を作って岐阜と北海道でテストしたところ効果テキメンだった。

 2013年から14年にかけての実証実験では前年同時期171の侵入件数が4件に激減、鉄道事故はゼロになった。

 同社のHPでは「人の生活環境の妨げにならない場所に設置すれば、鹿を足止めさせたり(徘徊防止)、ワナ周囲へ誘引したりワナ内部で誘導できる」としている。猟友会の高齢化で野生動物の駆除に悩んでいる地域には朗報である。

 それにしても、鉄屋さんが素晴らしい研究をしたものと感服する。

(写真は鹿が線路の鉄粉を舐めている様子)

#鹿 #鉄道

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