ジェイスン・サンフォード「八〇〇〇メートル峰」翻訳

来週発売のSFマガジン10月号でジェイスン・サンフォードの短篇「八〇〇〇メートル峰」の翻訳を担当しました。タイトルの通りエヴェレスト登山の話です。8000メートル峰つながりでシモンズの「カナカレデスとK2に登る」などと読み比べるのも一興かも(話は特に似ていません)。

サンフォードは以前長篇をNovel & Shortstoryレビュウで取り上げたりもしていて、個人的にけっこう気に入っている作家の一人なので、翻訳できる機会をいただけてSFマガジン編集部には感謝です。

ゴマをすったところで次に翻訳したいサンフォード3選を挙げておきます。

・“The Ships Like Clouds, Risen by Their Rain” (2008)
雲みたいな船がやってきて雨を降らしていく不思議な世界で、妹を船にさらわれた主人公が船の謎を追い続ける話。Xファイルのモルダーみたいな感じか。故デイヴィッド・ハートウェルの年間傑作選で「ジブリアニメを思わせるウィアードSF」みたいな説明がなされていて、その形容はどうなのと思ったが言いたいことはよくわかる。初めて読んだ補正もあるが、いまだに一番印象的。

・”Monday’s Monk” (2013)
反ナノテクノロジーのゲリラ組織によって虐殺された僧院で、ひとり生き残った臆病者の僧の話。東南アジア・ナノテクみたいなお題でバチガルピ(あるいはジェフ・ライマン)が連想されるが、キャラクター描写などに独自の魅力がある。

・”Toppers” (2016)
謎の霧に包まれて文明崩壊したニューヨークで、霧の届かない摩天楼の天辺で細々生きる人々の話。映画「バブル」の設定を見たときに真っ先にこれを思い出した。こっちはもうちょっと切実に生きていて、パルクールとかしてないのだけど。

この他にも宇宙SFっぽい話(”Sublimation Angels”とか)もあるが、すぐに話が出てこないのでまた後日。
サンフォードの短篇は少しひねった世界観とその謎解きをエモい語りを挟みながら進行していくタイプが多く、こういうのが好きな人は一定数いるのではないかと思うので、今後ともジェイスン・サンフォードをよろしく。

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