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「アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS」感想

生きている人、いますか?

お疲れ様です。とりぞーです。

少し投稿にも慣れてきた気がします。

では早速。

◇基本情報

・ブランド GLOVETY
・発売日  2021年09月
・ジャンル SF
・分岐形式 無印:箒型、APOLLOCRISIS:単線型

◇パッケージ

・商品名称 アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS 豪華完全版
・購入形態 店売(ソフマップ)
・購入価格 11,880円(税込)
・同梱特典 「アインシュタインより愛を込めて」ゲームディスク・サウンドトラック(ボーカル曲を含む)・タペストリー(B2)※ロミ
・予約特典 タペストリー(B2)※全員・ドラマCD(2編30分)・アクリルプレート
※同梱特典と予約特典のタペストリーは別種。

◇傾向

長 ★★☆☆☆  ※価格に対するテキスト量
重 ★★★☆☆  ※精神的なしんどさ
熱 ★★★☆☆  ※燃える展開の有無
楽 ★★★☆☆  ※ギャグの冴え
泣 ★★★☆☆  ※全米が泣くかどうか
感 ★★★★☆  ※余韻を感じるか
難 ★★★★☆  ※頭が良い人向け
新 ★★☆☆☆  ※斬新さがあるか
エ ★★☆☆☆  ※濡れ場の数・テキスト量・CG枚数
幸 ★★★☆☆  ※ハッピーエンドであるか

◇推奨攻略順

 (ACは一直線の物語なので、ここは無印の話となります)

 佳純→忍→唯々菜→ノーマル→ロミ→グランド

 ※ロミ√は他ヒロイン全員攻略後固定
 ※グランド√は他全√攻略後固定

 ノーマルエンドを見るために中途半端に各ヒロインのエピソードを先に読みたくなかったのでノーマルの攻略位置を中盤にしました。クリア済のヒロインの選択肢を順番に選択してノーマル√に入りました。

◇プレイ前の印象

 2020年10月に通常版が発売された際、新島夕・きみしま青・水月陵の三枚看板で評判になっていました。しかし近年新島夕さんの作品がパッとしない印象で、twitterでは口さがない懸念も囁かれており、体験版をプレイした上で見送りを決めました。体験版の感想キャンペーンでスルーされた怒りもありました(嘘です)。同時期に「さくレット」や「白昼夢の青写真」が発売されていたので、お財布的に厳しかったというのが正直なところです。

 発売後の評判を聞くと不評が多く、曰く尻切れトンボの未完であるとのこと。これは買わなくて正解だったぞしめしめとほくそ笑んでいたら、忘れた頃に追加シナリオ「アポロクライシス」(以降AC)制作決定の報が飛び込んできました。サントラや特典のついた有料版を販売し、1か月後に無料版が公開されるということで、お金を払う気の無い乞食の人たちが大声で喚き騒ぎたてて荒れていましたね。

 ちょうどこの頃に同ライター同絵師の作品「恋かけ」をプレイして、シナリオ評判悪いわりに個人的には楽しめたという感覚と、きみしま青さんのグラフィックのあまりのレベルの高さにあらためて舌を巻いた(えっちな意味ではない)こともあり、完全版が出るってなら買ってやろうじゃないかという気持ちになってきました。

 なお、「アイこめ」と「恋かけ」の商品の外形的な類似性はつぶさに囁かれている印象で、「文句を言って批判しているヤツほど特典付きを新品で買っている」という誰かの皮肉な発言にも納得してしまうところがあって面白かったです。

 さて、ダメ押しだったのが有村ロミの抱き枕カバーの受注販売です。最近になって抱き枕erと化した私にとってきみしま先生の抱き枕カバーは、いつか買ってやるぞと心に決めた欲しいものリスト最上位商品でした。A&Jのライクトロン製ということで品質に不安は全くありませんでしたが、キャラの性格も何もわからない万越えの商品をポチるのはさすがに指先が震えました。抱き枕化に伴いちっぱいに補正が入っているという指摘を知ったのは発注後のことでした…

 抱き枕を予約したからには後には引けないぞということで、購入を確定はしたものの、次なる問題はどこで買うか、という問題でした。どこから何の特典が出されるかは早々に発表されたものの、なかなかデザインが発表されずやきもきする日々。情報が出たはいいものの、なぜかソフマップだけが未発表。発表された特典デザインは既存絵の使いまわしばかりだと罵詈雑言の嵐でしたね。同梱特典のタペストリーとは別にもう一つきみしま青さんのタペストリーがもらえる、ということでソフマップでの予約を決めたものの、全っ然デザインが発表されず、待ち疲れた皆さんの様子が印象的でした。最後はもう静まり返って、発表された時も「おぅ、了解…」みたいな反応でしたね。

 発売前には配信番組なんかもやってたみたいですが、無印未プレイだったのでその辺はスルーしました。お便り募集とかもしてたみたいで、既プレイ者の方は盛り上がっている様子は少し羨ましかったです。

 発売日は仕事ありましたが午後休をとって昼過ぎにはアキバに繰り出しました。あの狭いソフト館で、日中でもレジが長蛇の列になっていたのが印象的でした。まだまだエロゲ文化も捨てたもんじゃないじゃないか、と。

◇プレイ後の印象(ネタバレ控えめ)

(無印について)
 短いよ…短すぎるよこのゲーム…。某批評サイトのPOVを丸パクリしてしまいたくなるほどこの印象。金曜発売で翌月曜日には完クリしてしまいました。この作品だけに専念していたならまだしも、普通に外出したり他のゲームやったり、月曜日はフルタイムで仕事出ての、総プレイ日数4日。小さくとも綺麗にまとまっていたならまだしも、前評判の通りとっ散らかった状態での完結。不完全燃焼の感は否めませんでした。

 それと、思いのほかSFしてたなぁというのが意外だったところ。後半に行くにつれてその色が濃くなっていくのは、物語への興味としては飽きずにワクワクできました。逆に、さわやか青春恋物語を期待している人は物足りないかもしれません。

 (ACについて)
 無印とは逆に、意外と長かったです。平日仕事後の1晩で終わるかと思ってましたが、2晩かかりました。伏線が全て回収された!とは思いませんでしたが、不完全だったロミの物語について完結されたとは感じました。
  
 総じてグラフィックについてはもう少し枚数あっても良かったんじゃないかなと思います。無印の枚数が75枚、ACの枚数が12枚、合計で87枚の構成。一枚のクオリティの高さ故に多少少ないのは許されるとしても、やはりフルプライスならせめて100枚は欲しいところでした。
 
 あと、声優の使いまわしが多かったような。モブにばんばんメインヒロインの声を使うのはやめて欲しいものです。まぁそれもエロゲを作る大変さのひとつということで、片桐猛のエピソードに張られた伏線の回収だったのかもしれませんが…

◇とりぞーのお考え(こってり)

 なかなか難しい話だったので、確信をもって断言はできませんが、私なりにこの作品が何を目指していたのかということを考えたのでお気持ち表明します。

 結論を言うと、「人類の未来への進み方」についての物語だったのだろうなと思います。

 この物語には大きく2つの問題があったと考えています。
 1つは”鯨”を通した高次元の存在への進化、という問題。
 1つは父権からの解放、という問題。

 前者については異論ないものと思いますが、後者については腑に落ちないかもしれません。しかし、後者のテーマを考慮しないなら、佳純√と忍√の存在に意味を見いだせないと思います。彼女たちの√に共通するものは何だろうと考えたとき、後者のテーマが見えてきました。そもそも前提として周太が父を喪失しており、ロミも両親と断絶している設定から、そしてACでの叔父や野上のエピソードによっても、後者のテーマを確信しました。
 
 無印では前者のテーマが綺麗に終わったのに、”ミコ”という意味不明な存在と叔父の内心が暴露されわけのわからないままに終わりましたが、ACにおいてロミ・ミコ・叔父・茜が繋がることで、前者テーマの敵としてのΩ・Σ(鯨の話)、後者テーマの敵としての叔父・ミコ(父の話)、と綺麗に二分化されていたことが判明しスッキリしました。

 近代という時代が衰退していく時代。神の死んだ世界、不在の父をそのままに、何か縋るものを求めながら、終わりなき今を生きる多くの物語が生み出されるそんな現代。まだ人類の発見していない(あるいは発見不可能な)概念的な上位世界を、虚構の中に表現しそこに至ろうとする実験的な物語手法が、さまざまな媒体で発生しました。ノベルゲーム言えば古くは「終ノ空」が描こうとしたものなどはまさにこういう世界だったように思います。あるいは「レミニセンス」における”地上”や、「明日の君と逢うために」における”向こうの世界”も近いモチーフだったように思います。そう、アイこめにおける”新世界”もまた、これらに類するものなのではないでしょうか。
 しかしこのような世界は虚構だからこそ表現できるもので、現実的な解決手段にはなりえません。故に、周太は新世界の扉を開かなかったのでしょう。では、父の喪失に対し、周太が救われる方法はどこにあるのでしょうか。父を殺して自らが父になる、という選択は、歴史によって否定されています。これを提示するための、父を倒せなかった叔父、父になれなかった野上、なのでしょう。

 改めて問います。
 では、周太は、ロミは、人類は、
 どのような未来に進めば良いのでしょうか。

 この物語が出した答えは、
 「父を取り戻し、その上に積み重ねる」
 という意志だったと思います。

 ロミが何度も周太に説く「街に灯りを灯す」というワードは、初出の時から作品の全体テーマなんだろうなとは思っていたのですが、それは単純に他者との交わりは個の英知に勝るというだけでなく、父の想い(先人の知恵)を受け継ぐということでもあったのではないでしょうか。そして、それを多くの他者との接続の中でさらに積み重ねていくことが生きるということであり、幸福に至る道なのではないか、と。

 主人公の”愛内周太”という名前について。周という文字には”あまねく”という読み方があります。万物に接続できる太いパイプを持ち、これを心の内に愛を込めて使うことができる。そんな生き方ができれば、未来への道は切り開けるのかもしれません。


ではまたノシ

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