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NSAIDsが引き起こす、急性腎障害の判断

薬局でよく見る、ロキソニンなどの痛み止め。整形外科はもちろん、様々な診療科からも処方されています。見慣れた薬だからといって、服薬後のチェックが甘くなってはいけません。

ロキソニンは、重篤な腎障害のある患者さんへの使用は禁忌に該当します。 慢性疼痛で継続している高齢の患者様も多いもの。服用中は、腎臓への影響を継続して確認するべきでしょう。

では、血液検査以外に、NSAIDs使用中の腎機能障害を見分ける方法はあるのでしょうか?

というわけで、本日は「NSAIDsが引き起こす、急性腎障害(AKI)」について勉強しました。

そもそも急性腎障害の定義とは?

急性腎障害・・・といえど、具体的にどのような状態を指すのか、説明することは難しいものです。はじめに、急性腎障害の定義について確認しましょう。

急性腎障害の定義は3種類存在しており、それぞれKIDGO、AKIN、RIFLEと省略されて呼ばれています。それぞれの、急性腎障害と診断される血清クレアチニン(sCre)の変化量は以下の通り。

【血清クレアチニンから見た定義】
①KIDGO:48時間以内に、sCreが0.3mg/dL以上上昇する。もしくはベースラインに対し、7日以内に1.5倍以上に上昇する。
②AKIN:48時間以内に0.3mg/dL以上の上昇。もしくは48時間以内に1.5倍以上の上昇
③RIFLE:ベースラインに対してsCreが1.5倍以上に上昇する。もしくはGFRが25%以上低下する

急性腎障害の状態では、循環血液量の減少が起こり、尿量の低下が
見られます。尿量からみた、急性腎障害の基準は以下の通り。

【尿量からみた基準】
0.5mL/kg/時未満が6時間以上持続している状態

0.5mL/kg/時間は、成人の最低必要尿量です。

NSAIDsが引き起こす、腎前性急性腎障害

NSAIDsは腎臓の輸入細動脈を収縮させ、腎前性腎障害を起こすことが知られています。

しかしながら、頻度は非常に稀です。NSAIDs使用患者のうち、腎に関する副作用が起こる人の割合は、およそ1~5%程度。NSAIDs開始3~7日後に起こるケースが多いとされます。

はじめに上げたロキソニンは勿論ですが、セレコックスなどの選択的COX-2阻害剤でも腎臓関連の副作用が起こりえます。

NSAIDsの急性腎機能障害をチェックするには

1) 普段の血清クレアチニン値を薬歴に残しておく

急性腎障害と判断するためには、ベースラインとなる、腎障害発現前の血清クレアチニン値が必要となります。そのため、普段から血液検査結果についての情報を収集しておき、薬歴に残しておくことが重要です。

2) 尿量の低下といった症状を確認

基本的ですが、まずは尿量低下の有無を確認しましょう。腎前性腎障害によって、循環血流量が減少している場合、「血圧の低下」「脱水」などをきたす場合もあります。

3)腎後性or腎性腎障害の可能性はあるかを確認

尿量が低下しているとの訴えがあったとしても、NSAIDsが引き起こしたものとは限りません。NSAIDs開始前の時点で、前立腺肥大などの症状がなかったかを確認する必要があります。尿路閉塞によるものであった場合は、「下腹部の膨満感」を訴えることが多いとか。腎後性の急性腎障害の可能性があれば、腹部エコー検査を行うため、医師へ報告しましょう。

「血尿があるか」を見ることも重要です。強い血尿を認める場合は、糸球体腎炎や血管炎が原因となる、腎性急性腎障害の可能性もあります。

急性腎機能障害が疑われた場合、どうすればいい?

まずは医師に連絡し、急性腎障害が疑われることを説明。腎前性・腎性・腎後性の鑑別を依頼します。NSAIDsが関与していると考えられれば、NSAIDsの中止、およびカロナールなどの他薬剤への切り替えを提案しましょう。

急性腎機能障害は適切に対処すれば、治癒する可能性が高い疾患です。
早めに発見できるよう、心がけたいと思います。

参考文献

薬剤師のための薬物療法に活かす 検査値の読み方教えます! 野口善令編集 羊土社



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