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【著作権法】ファスト映画、法的に何が問題なのか

国内で逮捕者が出たことで、一気に有名になったファスト映画。

著作権的にOUTでしょ、と直感的に感じる人が多いとは思うが、「ファスト映画はYoutube上で著作権の許諾を得ているから合法だ!」と言っている投稿者もいるようで、動画のコメント欄で壮絶なレスバが繰り広げられていたのが印象的だった。

今回、ファスト映画のどこが著作権法的に問題になるのか、逮捕者はなぜ適法だと思っているのか、という点を筆者なりに洗い出してみたので、記事にまとめていく。

「著作物」と「著作権」

前提知識として、「著作物」と「著作権」について知っていた方が理解しやすいので、ざっくりと説明する。

著作物」とは、人の思想だとか良心だとかを、創作的に、表現したコンテンツを指す。

注意が必要なのは、著作物であるためには「表現」されている必要があるということ。

例えば「となりのととろ」は、「映画(映像)」として表現されたコンテンツなので、著作物に当てはまる。

ただし「田舎に引っ越してきた家族が、ととろに会ったり、妹が迷子になったりする話」というアイデア自体には、著作権が生じるわけではないので、このアイデアをパクったところで、著作権侵害にはならない。
(もっとも、ととろのイラストや、声優向けの台本など、表現されたコンテンツは著作物に当たるため、そこまでパクっちゃうと、著作権侵害になってしまう)

著作権」は、著作物を創作した人に生じる権利のことを言うのだが、実はいくつかの権利をまとめた概念であり、よく「権利の束」と言われることが多い。

勝手にコピーするなと言える権利、勝手に改変するなと言える権利、勝手に配信するなと言える権利……などがあげられる。

映画に当てはめると、映画(映像)という著作物について、映画の制作会社に著作権が生じているため、勝手に映画(映像)を使っている人に対して、いろんなクレームを言うことができる、というわけである。

問題点① 映画をコピーすること

ファスト映画を作る際、投稿者は、おそらくDVDやネット配信サービスから、元の映画をダウンロードし、勝手にコピーしている。

この「勝手にコピーすること」が、著作権の1つである「複製権」を侵害している行為として、問題になってしまうのである。

問題点② 映画の内容を要約すること

ファスト映画は、元は1〜2時間ある映像を、10分程度に「要約」している。

実はこの「要約」も、勝手にやってしまうと著作権の1つである「翻案権」を侵害していることになる。

問題点③ Youtubeにアップロードすること

ファスト映画はYoutube等にアップロードされ、不特定多数の人が映像を見ることができてしまう。

このように「不特定多数の人が閲覧できるようアップロードする行為」も「公衆送信権」という著作権を侵害する行為である。

CONTENT ID登録があれば合法なのか?

このように、ファスト映画は、映画制作会社の「複製権」、「翻案権」、「公衆送信権」を侵害してしまう恐れがある。

ただ、冒頭のとおり、ファスト映画は合法だと主張している投稿主もいる。

この根拠として「Youtube上でCONTENT ID登録されていて、ちゃんと映画の制作会社にもお金が入っているから、著作権の許諾を得ているものと同様なんだ!」という主張があるようだ。(国内の逮捕者も、同じようなことを言っているらしい)

なお、CONTENT IDについては、下記の記事が分かりやすかったので、ぜひ見て欲しい。

前述の「お金入っているから良いだろ!」という投稿者の気持ちは多少分かるが、筆者としては中々厳しい主張だな……と考えている。

Content IDによってお金が支払われていたところで、映画の制作会社が「Youtubeにアップロードして良いよ!」と言ったわけでは無いうえに、「確かにYoutubeにおいてコピー・アップロードまでは許諾したかもしれないけど、勝手に要約する行為(翻案権)まで許諾した覚えは無いぞ!」と言われてしまう可能性もあるためだ。

もっとも、裁判で有罪が確定したわけではないので、実際のところ違法なのか合法なのかはまだ分からない。

おわりに

ざっくりではあるが、ファスト映画について、法的に何が問題なのか解説してみた。

著作権で保護されている以上、他人のコンテンツを無断で利用する行為はリスキーなので、特に営利目的で利用する場合は、著作権侵害にならないようぜひ気を付けて欲しい。

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