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いちプロSS_03

3話 幽々ゆら―私の宝物―

私が初めて人として接した相手、幽々ゆら…。
最初に会った日のことは正直あまり覚えてない、たぶん怖がらせちゃってたと思う。
私がアイドルにハマったきっかけでもあり、ここまで一緒に来てくれた大切な家族で相棒。

ゆらは3人兄妹の長女だった、4人兄妹になった今は私の双子の妹。
どんな人にもゆらの第一印象を聞くとおとなしい物静かな子だと"思ってた"って言われる。
確かに最初のきっかけを作るのは苦手みたい、ただ一度きっかけを掴むと止まらない。
そう、決しておしゃべりが嫌いなわけではないのだ。むしろ昔の私とは違い人とかかわりを持ちたいと思っているのがわかる。

私がアイドルになると宣言してから最初に相談したのはゆらだった。相談と言ってもあの日見た『Eritent』のようになりたいと停止ボタンの壊れたラジカセのようにまくし立てただけだけど…。
最初はおっかなびっくり聞くだけだったゆらも、一週間もすると一緒にEritentの配信を見て語り合うようになった。
二人でカラオケに行くこともあった。私が「Booo!」を歌ってゆらが「SOS」を歌う、締めには二人で「デビルじゃないもん」からあの日見た「今宵月の館にて」
だから今こうして二人でいるのは当然だ。あの日見た私の夢には常にゆらが横にいた。
私がゆらを引っ張ってきたように周りには見えるかもしれない、本当は私がゆらに支えられてきたのが真実だ。
今も叫びたいくらいの期待と逃げ出したいくらいの不安から震えが止まらない。
そんな時は決まって隣を見る、ずっと一緒に歩いてきた相棒。
自然と震えは止まる、一歩目を踏み出すのはお姉ちゃんの仕事だ。
手を差し出す、ちょっとはにかみながらゆらがその手を取る。
ここがあの日夢見た景色。終着点で、通過点で、私たちのスタートライン。

私たちは《夢幽病》

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