霊感というものがなんなのかまだわかってないという話

 私は、怖い話が好きな子供だった。そして、非常に怖がりでもあった。しかし幽霊を見たことはなかった。怖い幽霊だけでなく、優しい親戚も見たことがない。
 大人になってご縁をいただいて(共著も含めて)三冊の怪談本を書いたものの(それだけのお話を聞いたものの)、いまだに自分の怪奇現象への遭遇はゼロ。そんな私が長年考えているのは、「そもそも霊感とはなんなのか」である。
(この文章内では、霊体験の真偽などに関しては論じません)

「 霊感」といって辞書を引くとだいたい想像と違う内容が書かれている。
 私がここで書く「霊感がある」は、
a「幽霊(など)を感じる(見る・聞く)力がある」
b「霊現象に遭遇する率がやけに高い」
とさせてほしい。
 除霊とか、そのほかの対抗する力や技術はまた別とする。なぜならその前段階のような気がするので。

 しかし、そもそもこのふたつはセットなのだろうか?

 とはいえ、「後者がいくらあろうとも前者がないとわからないのでは」という気持ちでいたこともある。目の前にいても見えない人には見えないかもしれない。
 だが、場合によっては「地面がとても揺れた」「ドアがはっきり開いた」などの「aがなくてもわかりそうな霊現象」があり、それはさすがにもし私が同席していても同じに見えるのではないかと思う。
 ただ、そういうことがとても頻繁に起こる人を見ると、bの素質的なものは人によって格差があるのかなあ、とも思う。

aもbもある人→いわゆる霊感があり、頻繁に霊現象と遭遇する人
aはあり、bはない人→稀に、霊や現象に遭遇すると何か起こる人
aはなく、bはある人→何か起こっても気にしてないが、よく話を聞くと何かがおかしいときがある人
aもbもない人→零感 (※ここに私がいます)

 私はごくシンプルにいうとこんな感じでとらえている。
 そして、そんな素質関係なくbの数値が底上げされたようにいろいろ起こる場所が、心霊スポットとされやすいのかもしれない。
 そう考えると、心霊スポットめぐりをする「から」幽霊を見る人は、bの素質があるかどうかはわからない。「各種降霊術をやってみよう!」もb底上げ行動かもしれないと思う。
 また、これらのシチュエーションには「何か起こるかもしれない」という注意深さが伴うので、いつもよりわかりやすくなるだろう。
 動画で、スローで明るさ調整すると見える怪異は、普段町で起これば見えてないものなので。

 謎は多い。 
「泊まるホテルや引っ越し先がだいたいやばい」みたいなbの近縁、「その人中心に何か起こってるわけではないが、その人はなんか起こるところにいきやすい」という人もいるかもしれない。
「霊感の強い家系」というのも聞く。遺伝するものなのだろうか。(自分の家に限っていうと、aの能力のある人が家族にいないので、ある人の家系は結構ある、と聞いても納得できる部分ではある)
「そういう本を読んだり話をすると霊がよってくる」はよってくるときもあるし、私のようにないこともある。

 ということを延々とうだうだ考えていると、最終的に、いちばん根源的なところにたどり着く。
 人間は死んだらどうなるのか? である。
 もし幽霊になったら思考はあるのか? 記憶は? 痛みは? いつの姿なのか? 何処へ出るのか? 全員幽霊になるのか? 物理法則はどこまで無視できるのか? なにか特殊なことができるのか? などの幽霊側の話である。

 子供の頃から亡くなる家族が多かった私はずっと考えていた。気になるので、大人になってからもいろいろな話を聞いたしいろいろな本を読むきっかけにもなった。(もちろんそれだけが理由ではないけれど)
 でも、幽霊のことが他の人の話からしかわからない私には、自分が死ぬまでわからないのだろうなあと思う。 
 そして、霊感がある人もまた、他の人がどう見えているかはわからないはずなので普遍的なことはわからないかもしれない。

 と、書いたところで思ったが、私は普遍的なことが知りたいのだろうか。知ったところでどうしようもない。
 最終的には死んだ人がもうみんな安らかだといいとは思う……というとりとめのない話でした。

 

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