いしかわ金沢を守る会(2)

現在、石川県において新型コロナ感染者数が急増しています。私なりに意見があり以下に述べさせて頂きます。

1) PCR検査について
 県内におけるPCR検査陽性者の年齢・症状の有無を考慮すると、若年者や軽症・無症状の人が大幅に増加しています。日本全国の5月5日のデーター(厚労省)では、昨年よりの累計で総PCR陽性者数は約61万人であり、総死亡者数10513人です。しかし、59才以下では陽性者47.7万人、死亡者数は314人であり、死亡率は0.065%です。この数字はインフルエンザの死亡率が約0.1%とされていることと比較するとかなり低いことが解ります。また日本において19才以下の死亡はなく、29才以下でもわずか3名です。
 この事実を考慮すると疫学的調査の意味を除いて、たとえ濃厚接触者であっても29才以下かつ無症状の人にPCR検査を実施することの意味さえ疑問に感じます。また、たとえ陽性であったとしても感染者としてカウントすることにも疑問を感じます。むしろ彼らこそ最も強力な免疫力をもったブロッカー集団、例えばワクチン既接種者と考えた方が現実的です。「一時的ウイルス保持者」という別枠を設けるのも一案だと思います。

 現在、感染者数について県は国の基準を採用していますが、かつての様に石川県独自の基準を設けてもよいのではと考えています。例えばPCR陽性でも29才以下かつ無症状の人達は感染者数から除く、老人施設でのクラスターは感染者総数をカウントするのではなく、別途、老人施設クラスター基準として施設数をカウントする等の方法があると思います。また市中感染が拡大している中、感染経路不明者の%も学問的なことを除いて、すでに意味がないと思います。国は細かい対策に対しては地方自治体に丸投げしている感があります。ならば自治体で独自の基準を再度設けても良いのではと考えます。実際、神奈川県では一時(現在も?)、第2類相当を第5類感染症として運用していました。何が県民(国民)の利益・幸福になるのかが重要だと思います。

2) 老人施設職員へのPCR検査について
 県は老人施設職員へのPCR検査を順次実施する予定ですが、この際大きな問題が生じます。私は大学病院等での勤務以降、開業後は20年以上老人施設・在宅医療に継続して関与してきました。現在、介護施設では90才の入居者を60~70才以上の職員が介護しているという老々介護の状態が生じています。もし一施設の12人の職員に検査を実施し2人が陽性であったとします。当然、2人は欠勤となるわけですが、その穴埋めは誰がするのでしょうか? 介護職員も疲弊し、施設運営者も経営困難の状態です。県はもし検査を実施するのであれば、この問題を解決する必要があります。
 また、ほとんど全ての老人施設において認知症の入居者がいます。中には、食事を手づかみでし、自分で排泄した大便で遊ぶ人もいます。この様な状況下で感染拡大を防ぐことなど不可能です。動線設定も意味がありません。「マスク」も食べて窒息の原因となります。入居者にPCR陽性者が出ても、どこの病院も引き取ってくれません。また家族の多くは施設内での看取り(主治医による死亡確認)を希望しています。肺炎で死亡した際は、PCR検査などせず誤嚥性肺炎とするのが、家族・職員・運営者にとって最も幸福なのです。無駄な裁判も起こりません。裁判が生じた場合、自治体も責任を問われる可能性があります。
  
 以上、臨床経験37年の一医師として意見を述べさせて頂きました。石川県の新型コロナ対策委員会の方にご一読頂きたく宜しくお願いいたします。
                  
令和3年5月10日
                   
山口脳神経クリニック 
                        院長 山口成仁

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?