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哲学教室 『ガリバー旅行記』編 [中学生の部] (6月4日)

ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。

https://narranarra-school.myportfolio.com/

6月4日(日)に哲学教室(中学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。


◉『ガリバー旅行記』第3部が風刺する内容等
6/4に確認した内容:
・第1〜2部と趣が異なる第3部は、内容が難しく当時の英国への批判も露骨すぎる点から、一般的には『ガリバー旅行記』発行当時から評判が悪かったと言われている
・ラプータの女性を気まぐれだと表現する等、女性が劣っているような書き方をしているが、当時大半のイギリス人はそのように考えていた
・1989年6月4日に、中国の民主化運動である天安門事件が起きた
・『資本論』の著者であるカール・マルクスは資本主義の分析をした大哲学者であり、共産主義の理論を作った
・現在、共産主義国家の中国は世界第2位の経済大国であり、今後アメリカを抜いて第1位となる可能性がある
・民主主義で資本主義国家のイギリスが自由競争で世界を制覇し、第二次世界大戦後はアメリカが世界を制覇しており、近代の300年は民主主義と資本主義のセットが世界をリードしてきた
・約200年前にマルクスによって書かれた『共産党宣言』をもとにロシア革命や中国革命等の共産主義革命が起きたが、血みどろの革命で人民が殺されており、貴族や特権階級を倒し庶民が権力を握るためにレーニンが起こしたロシア革命では、ロシアの元貴族が日本にも逃れてきている
・共産党革命は万人が労働によって最低限の人間らしい暮らしができる国を作りたいという理論から生まれており、共産党は宗教を否定している
・史的唯物論(唯物史観)とは、空想、宗教で崇拝する神や偶像を排除し、全て科学的な理論に則って正確に国民全員に分配できるように労働生産性を上げるという考え方である
・人間は神等の存在を信じてしまうものであり、宗教において重要な役割を担う人物等が特権階級として存在する状況が歴史的に長く続いていた
・イギリスのチャールズ国王の戴冠式では、教会のトップが国王に冠を授けることで教会が国王を認める伝統的な儀式が行われていたが、マルクスはそのような宗教と権力の一体化を許さず、偶像崇拝をやめて科学を推進しようとした
・共産主義の国は男女平等であり女性の社会進出が著しく、旧東ドイツ出身のメルケル元首相に代表されるように、女性が自然に政治に参加する感覚を持っている
・経済学者のベンサムが資本主義の原理である「最大多数の最大幸福」という説を唱えたが、これは多少貧乏で不遇な人が少数にいても最大多数が幸福であればそれは良いことであるという発想である
・日本の権力を握っている自民党は、基本的には保守政党でマイノリティは認めない方針である
・民主主義国家で共産党が存在する国は、世界では日本のみである

語り合った内容、意見等:
・現時点における『ガリバー旅行記』の感想
・女性は気まぐれなのか、男性は気まぐれなのか
・女性の方が本来的に強く、男性を凌駕するほどの戦争を起こす可能性もあることから、古来より男性が女性を閉じ込めて政治参加させなかったのではないかという説がある
・本来男女は平等だが、日本は女性の管理職も少ないのでまだ不平等と言える
・男性と女性のどちらが国のトップに立った方が良い国を作れるのか、どちらが良いと思うか
・共産主義についてどう思うか
・ラプータでは科学者たちが様々な理論を作り変革を試みているが、くだらない内容で現実の国民を見ていないとして、当時のイギリスにおける最先端科学の世界をスウィフトは痛烈に批判している
・第3部の内容から、科学一辺倒で進む国家の危うさを感じる
・神と結びついている権力者、合理的な理論で権力を握っている権力者のどちらが良いか
・多数決は民主主義の基本だが、少数派の意見は反映されない
・マイノリティーに目を向けていこうと世間では言われているが、本当に目を向けられているのか
・居住している地域ではどの政党が強いのか
・学校の制服、男らしさについて
・リベラル、保守について
・世の中は不条理に満ちているものである

次回実施予定日:6月13日(火)




ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。

最初に、現時点における『ガリバー旅行記』の感想について、中村が参加者さんに質問していました。
参加者さんの仰る通り、ガリバーの独特な語り口調が良いですよね。
そして、確かに第3部に入ると急に内容が複雑になったと感じました。

続いて、1989年に起きた天安門事件について中村が説明した後、共産主義についての話になりました。
参加者さんと中村の発言にもありましたが、民主主義国家で生まれ育っているので、やはり言論等自由がある社会を心地良く感じますよね。
そのように感じる一方で、参加者さんの「国としては共産主義の方が纏まりやすく強いのではないか」という発言もその通りだと思いました。
共産主義の国は強大な権力を持っているイメージがありますが、それは合理的に考えようとするマルクス主義の理論から生まれていることが中村の説明で分かり、成る程と思いました。

史的唯物論(唯物史観)の話になり、宗教で重要な役割を担う人物等が特権階級として存在する歴史的状況について、中村が説明していました。
そして、神と結びついている権力者と合理的な理論で権力を握っている権力者のどちらが良いか、という難しい問いかけを参加者さんに行っていました。
「あまり合理的になりすぎると犠牲になる人が出てくるかもしれないから合理的にやっていくほうが良いとは言わないが、政治に宗教が関与するのもどうかと思う」という参加者さんの発言が印象的で、何事にもバランスが重要だと改めて感じました。

さらに話題が広がり、日本の政党についての話になりました。
参加者さんから様々な発言がありましたが、「民主主義のままで合理的になれば良い」という意見に、中村が「本当にその通り」と頷いていました。
確かにその通りですよね。
そして中村の発言から、民主主義国家で共産党がある国は世界で日本のみということも初めて知り、驚きました。

終盤は、保守とリベラルについての話になりました。
参加者さんの発言は非常に興味深く、自分がどちら側なのかということも含め、保守とリベラルの定義について考えさせられる内容でした。

そのようなことを色々と感じながら、今回も興味深く拝見いたしました。
次回の内容も楽しみです。
皆様、お疲れ様でした。


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