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哲学教室 [小学生の部] (3月25日実施)

ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。

https://narranarra-school.myportfolio.com/


3月25日(土)に哲学教室(小学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。


◉『ガリバー旅行記』第2部が風刺する内容等
3/25に確認した内容:
・ルネサンスとは、中世的価値観の崩壊(教会支配時代の終焉)に伴い、古代ギリシャ・ローマ時代の人間的価値観を復興させようとした運動(文芸復興、人間の復興)
・典型的な中世の絵画はイエスキリストを囲む弟子たち等を描いたものだが、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』は人間のみで神は描かれていない
・ラファエロの『アテナイの学堂』では、プラトンとアリストテレスのもとで人々が自由に哲学を学ぶ様子が描かれている
・アルチンボルドの『夏』では野菜等や果物で形成された人間が描かれているが、人間は自然界の物を摂取することで生きており、神様が人間を生かしている訳ではないことを表している
・19世紀には、人間中心主義を嫌い宗教的なテーマを扱う美術形式がイギリスで生まれる
・ノーベル文学賞受賞者の川端康成と大江健三郎は日本を代表する二大小説家
・大江健三郎の文学的な出発点となった原民喜は広島での被爆体験者であり、『ガリバー旅行記』の翻訳を手がけた人物
・原民喜の遺志を継いだ大江健三郎は、ノーベル文学賞受賞まで昇り詰めていく
・18世紀初頭に、イギリスは爆弾を作る能力を既に持っていた
・ブロブディングナグ国は侵略される心配もなく侵略する気もないので、武器を保持していない
・詩人は幻を見る(幻視者)と言われるが、詩人であり画家のウィリアム・ブレイクも幻視者だった
・シェイクスピア作『ハムレット』はお化けが登場する物語

語り合った内容、意見等:
・現時点における感想
・大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』のヒロシマがカタカナ表記なのは何故か
・幻を見たことがあるか
・何故スウィフトや宮崎駿は現実にはありえない幻の世界を描いたのか
・何故人はありえないものを夢中になって読んだり聞いたりするのか

次回実施予定日:4月2日(日)




ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。

前回お休みされた参加者さんがおられたので、内容を振り返りながら始まりました。
現時点での感想を中村が質問していましたが、参加者さんの仰る通り、ミヒャエル・エンデの『モモ』と比べると現実的な内容ですよね。
「注釈が意外と面白い」という感想もありました。
時に鋭い批判を交えつつ当時の社会情勢を説明している注釈が、読み進める上での大きな手助けとなっているのですが、詳細で濃い内容故に難解に感じる部分もあります。
中村が言っていたように、参加者さんがその内容を正確に理解し、面白いと感じる読書力を身に付けておられるからこその発言だと思いました。

『モモ』との比較に話が移りましたが、確かにガリバーは完全無欠のスーパーヒーローではなく、色々と躓いている主人公ですよね。
優れた傾聴力で周囲の人々を助けていくモモの方が、ガリバーよりもヒーロー(ヒロイン)らしさがあるように思います。
中村の発言にもありましたが、そのヒーローらしくない点が親近感を抱かせる部分でもあり、現実的と感じられる理由なのかもしれないと思いました。

原民喜の詩『コレガ人間ナノデス』を中村が朗読していました。
何回読んでも、読後暫くはその強烈な余韻で頭が一杯になってしまいます。

ウィリアム・ブレイク作『無垢の予兆』の冒頭部分を中村が紹介していました。
読後、“一を聞いて十を知る”という諺が最初に思い浮かびました。
人は誰でもそのようになれますよ、というメッセージが込められた詩なのでしょうか。
何となく哲学的な感じもします。
何故なのか理由は分からないのですが、ふと『星の王子さま』を思い出してしまいました。

後半は幻について色々と語り合いました。
確かに、何故人は現実にはありえないものに惹かれるのでしょうか。
謎が多いものは知的好奇心を刺激するのでしょうか。
嫌なことがあった時、画集を眺めたり本を読んで気分転換を図ることがあります。作品の内容は遠い外国の話だったり、空想の世界を描いたものだったりと、自分の現実とかけ離れたものが多い気がします。
ありえないものに惹かれたり夢中になってしまう理由として、日頃のストレス発散や現実逃避願望も含まれるかもしれないと思いました。

このようなことを色々と感じながら、今回も大変興味深く拝見いたしました。
次回も楽しみです。
皆様、お疲れ様でした。

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