哲学教室 [中学生の部] (3月12日実施)
ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。
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3月12日(日)に哲学教室(中学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。
◉『ガリバー旅行記』第2部が風刺する内容、第1部との相違点等
3/12に確認した内容:
・強国による侵攻への不安から弱国同士で連合し立ち向かう旨決意表明すれば強国は必ず弱国に侵攻し、強国は常に弱国に先行し非力な弱国は抗えないため、このような国家戦略を取れば無に帰すると哲学者のカントが1795年発行の『永遠平和のために』で述べている
・広島で被爆を経験した小説家、詩人の原民喜が死の直前に仕上げた作品は『ガリバー旅行記』の再話
・第2部では弱き民の立場での生き抜き方が書かれている
・第1部は巨人という強者が民を見る上からの目線、第2部は民という弱者の下からの目線で描かれており、視点が反転している
・巨人は野蛮でもあるが醜い存在でもある
・化粧で外見を繕ってもその本質は醜いという物事の表と裏、強大な力を持つ人物が愛や自由等の綺麗事を言っていても結局その中に醜いものを抱えているという風刺が込められている
語り合った内容、意見等:
・政治家たちは、外交官にとって教科書的存在である『永遠平和のために』で既に述べられている国家戦略上行うべきではない過ちを何故犯してしまったのか
・核の抑止力は必要か否か、核を持ってしまった人類が進むべき今後の方向性
・人間は戦争を終わらすことができない
・巨人に出会ったらどうするか、巨大勢力に支配されずに生き延びる方法
・第2部のガリバーは情けない男だと思うか、人間がプライドを保ちながら生きるためにはどうしたら良いか
・第2部におけるガリバーの処世術を現代の我々と対比させながら考えたい
次回実施予定日:3月19日(日)
ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。
今回は新しい参加者さんをお迎えして、自己紹介から始まりました。
続いて、政治家たちがカントの『永遠平和のために』で無に帰するとされている国家戦略を取った結果ウクライナ侵攻が起きてしまった理由について、中村と参加者さんで意見交換を行いました。
「理想はあくまでも理想で政治家の利益は含まれないため、利益を追求すれば理想との差が生まれる」という理想と現実の違いに関する意見があり、成る程と思いました。
哲学者であるカントの主張は理想論に過ぎず、現実はそう甘くないということなのかもしれません。
「当初は自国をより良くしたいと考えていた政治家も、頂点に登り詰めて金や権力が絡むと、正気を失ったように歯向かうものが許せなくなるのではないか」という意見もありましたが、確かに歴史上の権力者はしばしばこういった状態に陥る傾向があるような気がします。
何となくふと“祇園精舍の鐘の声…”で始まる『平家物語』の冒頭部分を思い出してしまいました。
権勢の頂点を極めた平家も、盛者必衰の理には逆らえない。
飽くなき欲望や万能感が人を狂わせる。
権力者がその頂点に未来永劫立ち続けることはできない理由もまたそこにあるのかもしれないと思いました。
原発を含め、人類は核をどのように扱っていくべきなのか。
岸田首相が広島出身であることを恥ずかしながら参加者さんの発言で初めて知ったのですが、確かに広島出身の首相だからこそ提案できる国策や外交政策があるように思います。
核の抑止力についても中村が質問していましたが、参加者さんの仰る通り、核の保持国と非保持国という差があることが根本的な問題なのだと思いました。
この世から核兵器をはじめとする武器をなくしてしまうという意見がありましたが、確かにそれが一番良いかもしれないですね。
そして中村の発言にあったように、今後は核兵器やそれ以上に強力な武器を作らない努力を続けることが必要で、そのためには世界が一丸となって協力体制を築いていかなければならないと思いました。
これも理想論になってしまうのかな。
でもいつか実現させたいという思いを持ち続けることが重要なのかもしれないと思いました。
最後に、巨人の国で生き残るために第2部でガリバーが取った行動についての話になりました。
中村が発言していた通り、可哀想なくらい卑屈に振る舞うことで生き延びていくガリバーの観察眼の鋭さは目を見張るものがあります。
そこから処世術の話になりました。
大人へと成長する過程で人は処世術を身に付けていくのですが、それが果たして良いのか悪いのか。
少し考えてしまいました。
そのようなことを感じつつ、大変興味深く拝見いたしました。
次回も、参加者さんや中村と共に色々と考えていきたいです。
皆様、お疲れ様でした。
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