出産で涙を流す芸能人と自分のお産の話

芸能人の出産ニュースで必ずと言ってみられるのが、「新しい命を抱いた瞬間、感動の涙が出ました」というコメント。これって、定型句なのでしょうか。みんな言うから気持ち悪いです。それともマジなんでしょうか。えっ、産後、感動して泣けます?

さっそく話がそれるが、結婚すると「まだまだ未熟者の私たちですが…」みたいなコメントを芸能人もふつうの人もFacebookで発表する。個人的にこれは大嫌いな定型句のひとつで、「じゃああなたの思う成熟とはいつなん」とか画面越しについ悪態をついてしまう。ビジネスではないので、勝手に夫婦が誕生したところで、あなたからこちらに「未熟」ゆえの「至らないこと」などとくに発生することもないでしょう。

わたしも今や子どものいるお母さんやってますが、若いころはひねくれたもので「子どもを産むやつは自己評価が高いやつだけ」と思っていました。自己評価が低い自分は、子どもなんか絶対産みたくないと思ってた。ただそれは若さゆえの粗い考えで、子どもを自分の延長としてみていたところがあったわけです。でも子どもといえどぶっちゃけ他人なので、自己評価はあまり関係ありませんでした。若いころ勝手に心配していたように、顔や性格が自分に似ていて死にたくなるということはありません。似ていて愛しいということも全然ないですが、遺伝子の不思議にびっくりする程度です。

ただ人の考えの根幹というものはなかなか変わらないもので、やっぱりわたしにとってお産はネガティブなものでした。一回やってみた今も、「二度とやりたくねえ」と思っているくらいです。「(出産に関して)なんでこんなつらい思いしなくちゃいけないんだ」というのは、妊婦のときから産後の今でもずっと思うことです。出産に関するつらい思いは出産しちゃえば終わりかなと思ってたのですが、出した後今でも後遺症がひどくまったくトンネルから抜け出せそうにありません。

わたしだって、芸能人もつかっている、お産に100万かかる病院で、それはそれは丁重にもてなされながら出産を行いました。夫含むすべての家族の立ち合いを拒否していたので、出産には若いイケメン小児科医が立ち会ってくれ、股から我が子をひねり出しながら泡吹いて白目をむくわたしの手をずっと握っていてくれました。そもそも、わたしは安産でした。陣痛が6分間隔になったので病院に電話してから向かったのですが、たったひとりで荷物持ってタクシーに乗ってきたあげく、産婦人科までスタスタ歩くもんだから、「うーん、初産ですよね。時間かかるかも。家近いんですよね。一回帰りますか?」とか言われたくらいでした。しかし「一応診ますね」という内診で「子宮口9cm! 頭が見えてる! えっなんでそんな平然としていられるんですか!?」と分娩室へ緊急搬送(?)され、その後たった2時間苦しんだくらいで生まれました。ギリギリまで逆子だったのでへその緒が首に絡まり結構ヤバかったらしいですが、痛みとパニックで限界を超えているわたしは知ったこっちゃありません。イケメン小児科医の手を粉砕するレベルでにぎりつぶし(わたしは握力45kgを超えています)、そんなこんなでいつの間にか、息子は生まれていました。はじめて抱いたときの感想は、「えっ…思ってたのと違う…赤ちゃんてほら、もっとかわいいものじゃなかったっけ…。なんだこのエイリアン?手羽先?みたいな赤くてグロい生き物は…」でした。「え、まじでみんなこんなのかわいがってるの???」とまで思っていました。泣くなんてとんでもないです。息子は風呂と検査に連れていかれ、わたしはひとり分娩室でそのまま夕食を取りました。その後個室に移動し、夫と夫の家族にだけメールして、息子どうしたんかなとは思いつつ、そのまま寝ました。(じつはそのころ息子は黄疸と診断され、紫外線の出る水槽みたいなのに入れられていました)

ちなみにわたしは予定日より早い出産でした。夫はその日会食で、朝「今日は遅くなるね」と言っていました。しかし急に陣痛が来て、「やばい今日生まれるかも」とLINEしたのが15時すぎ。18時すぎには生まれてしまい、19時すぎにLINEで報告した頃には会食がはじまってたようでした。その場にいた女性陣に「最低」とドン引きされたようですが、すまんね、わたしが立ち合い拒否してたうえ連絡不足(最初で唯一の連絡が「かも」だった)のせいなのよ。そんな夫もお台場で夜景を見ながらイタリアンを堪能したのち駆けつけてくれ息子を抱きましたが、子どもを欲しがっていたわりには感動して泣くとかはなく、ふつうに「わーい」みたいな感じでした。

そんなこんなで結局、今度の持論は「お産で感動して泣くやつは自己評価の高いやつだけ」とまたひねくれてきています。よっぽど自分のお産が祝福されるべきもの、神聖なものだったと思えてないと無理でしょ。あんなしんどいだけのやつ。たしかにスッキリはしますよ。Facebookで「まだまだ未熟者な二人ですが」とか満面の笑みで言えるようなやつだけがきっと、お産で涙を流せるのでしょう。自分が好きって、素晴らしいことですね。

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