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執筆者と深読む「プロジェクトシンエヴァ」解題編#1_目次をなぞる①

執筆者と深読む「プロジェクトシンエヴァンゲリオン」解題編の#1は「目次」を扱います。


実際の目次のキャプチャ


以下はプロジェクトシンエヴァ(以降、基本的に「本書」)のp2~p7「目次」全ページのキャプチャです。

p2~p3
p4~p5
p6~p7

この目次を腑分けしていってみましょう。

章立てについて

この章立てをグループ分けすると、執筆者的には以下になります。

序文:本書の位置付けと概要、本書の試み
---------ここまでがオープニング--------
第一部:1章 プロジェクト概要
第二部:2章 プロジェクト実績、3章 プロジェクト省察
---------ここまでが前半・ここからが後半---------
第三部:4章 内部評価、6章 外部評価
第四部:7章 プロジェクト総括 庵野秀明
--------- ここからエンディング---------
第五部:終章 シンエヴァンゲリオン劇場版 全参加スタッフ一覧、本書の制作協力(←目次には載ってませんが本書ほぼラスト、奥付けの前)
---------ここまでが本編---------
補足・付録部(Appendix):5章 ライセンスと宣伝、付録1、付録2、付録3

序文:本書の位置付けと概要、本書の試み

この本は<①こういう方針でまとめました ②こういうことを目指して&ねらって作りました>という、序文・まえがきです。

第一部:1章 プロジェクト概要

本書はエヴァに親しみが全然ない人向けでも読んでもらえるよう作りたいと思いました。
なので、まずはざっとTV(新世紀)からシン・エヴァまでのエヴァに関する25年の経緯を紹介したうえで(1-1 プロジェクト経緯)、
次はエヴァに親しみがない人・エヴァのことをよくよく知っている人のどちらにもこの本はシン・エヴァを「作品」としてではなく「プロジェクト」として扱いますよ、とわかってもらうために「1-2 プロジェクト目標」「1-3 プロジェクト遂行結果」をあとに続けています。

この本では「プロジェクト」として取り扱う、ということの表明・強調を頭から尻までくどくど行っています。
それはひとつには作品解説を行っている本ではないですよ、ということの強調ですが、もうひとつにアニメ制作はプロジェクトとして全く見做されていないことの自覚が非常に強くあるためです。

当初の構成プラン

なお、当初考えていた構成プランは現状の順番ではなく
1-3  プロジェクト遂行結果
1-1    プロジェクト経緯
1-2    プロジェクト目標

の順番でした。
さらには、
目次 → プロジェクト遂行結果 → 本書の位置付けと概要・本書の試み →
1章 プロジェクト概要

という順番がいいのではないか、とも考えていました。

ご贔屓衆ならば知っているかもしれませんが、本書の発売を告知した段階での書籍タイトル案は「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン遂行報告 -実績・省察・評価・総括-」でした。
その後議論があって「遂行報告」は除かれたわけですが、本書は「報告書」を強く意識したものです。

報告書であるからにはつべこべ言わずまずは結果報告が最初だろうと発想しました。
なので「プロジェクト遂行結果」をとりあえず真っ先に提示する、
さらには本を手にとって目次をざっと見てページをめくったらすぐにこの「結果」が載っていることで、
この本はこの「プロジェクト遂行結果」をブレイクダウンしたり、この結果に至るまでの道程だったり、振り返りだったり、この結果に関する評価について述べていく本ですよ、という表明を順番(構成)の力を借りることで強調できるのでは、と考えたわけです。

これはこれでロジカルでユーザーフレンドリーだと思ったのですが、むしろユーザーフレンドリーではない、飛び道具的に見える、という意見を関係者から複数頂き、なるほどそう見えてしまうのかと思い直して現状の形に収まりました。

第二部:2章 プロジェクト実績、3章 プロジェクト省察

2章 プロジェクト実績

第一部で「結果」を提示しました。ということは、次に必要なのはその結果の詳細説明、つまりはその結果の「内訳」だと発想しました。
なので、2章のタイトルは「プロジェクト実績」ですが、「プロジェクト遂行結果で示した数字等に対する内訳データ・内訳資料」と言い換えてもOKです。
では内訳データとして何が必要なのか、どこまでが必要なのか、に非常に頭を悩ませたわけですが、それは2章の解題で詳しく見ていくことにしましょう。

3章 プロジェクト省察

次に3章「プロジェクト省察」です。
前章で「結果の内訳」を見てきたわけですから、
次は『シン・エヴァ』はなぜこのような結果(←様々な意味、広い意味・角度での結果)にたどり着いたのだろうか、という究明のアプローチが必要と考えました。
そこでこの章は、制作スタッフへの取材を行って整理した「このような結果」に対する制作スタッフによる自己分析になっています。
その裏付けだったり、スタッフ取材のためのネタとしてシン・エヴァ制作中のメールのやり取りやSlackのやり取りも大量に参考にしています。
具体的にどのようなスタッフに協力頂いているかは本書ラストの「本書の制作協力」をご覧ください。

「スタッフによる自己分析」と述べたように、ここには庵野さんの考えは一切入れていませんし、意見も聞いていません。
庵野さんからしてみると「そんなつもりではなかった」というところもあるかもしれませんが、ここで重視したのは「スタッフにとってはそうだった・そう見えていた」という構えです。
では庵野さん自身の考えはどこで扱っているかというと、7章「プロジェクト総括 庵野秀明」です。

さて、ここまでが執筆者的グループ分けを行った場合の本書の「前半」です。
・結果
・結果の内訳
・結果に対する自己分析

で切断線を入れて、後半を始めることを意図しています。
どのような切断かというと、
前半は「事実」「客観」「複数の主観を集めて整理」
後半は「独立した主観をひとつひとつ取り上げる」
という切断です。

「独立した主観」なので、後編はすべて一人称の話し言葉になるわけです。


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