飛び跳ねた
珈琲豆を買いたいがピンとくる店がないと以前書いた。
結果から言うと私は飛び跳ねる選択肢を選ぶこととなった。
東京都内で一番好きな珈琲店から豆を買い、コーヒーのない生活はひとまず回避することができた。
いちばん好きな店があるなら最初からそこで買えばよかったじゃないか、と言われそうだがそう簡単な話じゃないのだ。
その店の味が好きだからこそ、自分で淹れたコーヒーにがっかりしたくなかった。
店は店主1人で営業しており、ネルドリップで1滴ずつゆっくりと丁寧に抽出する。ネルで淹れたコーヒーはほかの店でも飲んだことがあったが、それは、どこで飲んだコーヒーよりも衝撃的で、もったいなくて少しずつしか飲めなかった。あまりにも『贅沢品』という言葉が似合うコーヒー。しかしそれでいて、店主も店も気取らない。本当に街になじむ、ひっそりとある店構え。知らなかったら通り過ぎると思うし、かといって入店するのに身構えてしまうような隠れ家でもない。本当に「普通」にある。
そんな店で飲むコーヒーが好きだったから、家で同じ豆を使い、自身で抽出するのに抵抗があったのだ。
しかしそんな心配はいらなかった。
注文品には手書きで一筆添えられており、抽出レシピが書かれていた。
豆の量、挽く粗さ、湯量、温度。しかし、あくまでも目安なので好みを優先してください、とまで気遣われている。
家ではペーパードリップだし、温度計もないので少し違ってしまうがなるべく沿えるよう淹れてみたら、そりゃもう飛び跳ねた。
おいしすぎる。深煎りでありながら華やかな香りは残るしマイルドな苦み。
店で飲むコーヒーはどっしりとしていて、苦みの余韻が残るが、家で飲むとさらっとしていた。しかしこれはこれでおいしい。
すげーーーー...........
これでまた店に行く日が恋しくなってしまったが、今の状況が落ち着いてしばらくしたら必ず店で飲むと心に決めた。
珈琲豆はブレンド、ブラジル、エチオピアの3種類を注文したので毎日気分に合わせて選ぶのも楽しい。これが終わってしまったら今回頼めなかったのも頼もう、と考えるのも楽しい。
コーヒー1つでここまで幸せな気持ちになれるとは思わなかった。
2,3カ月に1度しかいかないし、そのたびに髪型や髪色、服の嗜好が変わる私だが気付いてくれて(その店に行く年齢層にしては若く珍しい)話をしてくれるオーナーにもまた会いたい。
なのでそこまで健康で、元気に生きていたい。
今日もコーヒーを淹れ、家で飛び跳ねる。
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