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おしりの血からリユニオン

22歳のレディ〜だというのにこんなタイトル大丈夫かしら。

昨日がわりかし大事件で長い長い一日だったので記録がてら書く。

このnoteの序盤にある投稿にも書いてきたことだけど、我が家はたぶんライトな機能不全家族だ。小学生のころから父と母の夜通しの警察沙汰な大げんかはよく見てきたし、母と子3人で夜逃げたることもしたし、親族の家を転々としながら中高に通っていた。最近だとここ数年引きこもりしている父が過剰にコロナを恐れるがため母と妹に家を出て行けと迫る日々、父の発狂が原因で妹にPTSD的な症状が出始めて妹も家を出ることを決め、弟もまた家を出ていた。なにもいまさら驚かないけど家族の空中分解のそれを丁寧になぞっているようなのが我が家だ。

こんな家族なんだけども、代え難い存在であるのはたしかだから不思議だ。私はこれまで生きてきた22年、これだけの時を共にした人間たちを知らない。私が自分のことをよくわからない時から私を愛し守り育ててくれたのも、苦楽を生々しく共有してきたのも、この家族だ。

私の母は鬼女

昨日の事件の主人公は母。うちの母はけっこうなおちゃらけ肝っ玉母さんだ。小さい時に「ママ〜ママ〜」と呼んでいたら急に『私はママじゃない!ママって勝手に分類するな!登美子(仮名)なのだ!ギャハハ』とか言い出して怖かったし、本気で怒る、本気で泣き叫ぶ、躊躇なく警察を呼ぶ、20歳そこそこで私を産み、さらに妹と弟を産み、16年くらい専業主婦してから気づいたら正社員になってバリバリ働いてる。私にとっては1番身近な、なんといったらいいのか、そう、鬼女だ。(鬼女はいろんな意味で使われてるようだけどとにかく色々クレイジーってことね)

鬼女な母は家族のゴタゴタが最骨頂に達して裁判ごとになってた真っ只中にいながらもおちゃらけで、ギャハハとしながら私たち子どもを連れて居住地を転々としながら、警察を呼びながら、泣いたり笑ったり激しかったけどつとめて明るく、社会的にギリギリでもしぶとく生存していた。おちゃらけていられない場面でおちゃらけていれば、子どもは母の顔を見て安心を得るので有り難かったけど、それは正しく情動を外に出せてないということで、そりゃ身体に不調が出てくる。母の身体はどんどん蝕まれていった。身体のいろんなところに石灰が溜まって手術してたし、年に二回くらい突然ぶったおれるようになった。

5月11日(月)

時はさかのぼり一昨日。

『おしりから血が出た!キャー!』
みたいなLINEが、母から家族の女だけのLINEグループに届いた。はあまた体調崩してるのかやれやれと思いながらいい加減病院行けよ〜と送ったけど『行く〜〜〜りょうかい〜〜〜(キャピ)』とはぐらかされる。母はいつもこうだ、いつものおちゃらけ対応だった。

5月12日(火)

そしてその翌日の朝(昨日)、事は起きた。
母が朝5時にぶったおれた。

ブーッツブーッというバイブレーションでスマホに手を伸ばした私は着信画面にうつる<ママ>の文字を確認したけど寝起きすぎて声が出るはずもなく一旦切って意識を正してから掛け直すと、電話先で死にそうな声の母がする。ぞわぞわぞわと嫌な予感。『クッ・・・ごめん倒れた・・・・・・・』と言うかぼそい声。申し訳ないけどなんか笑いそうになる私。緊急事態と楽観主義が合わさって、ちょっと受け入れがたい事態が目の前にドンと来るとまずちょっと笑ってしまうのが私の悪い癖だ。そして『救急車呼んだんだけど、パパは救急車に乗ってくれなかった…』と悲しげに続く。病院に向かうならコロナ怖いしそりゃそうねと思いながら相変わらずの父の薄情さに心をザリザリと削られる。妻だのに。あなたは母と同居する唯一の存在だのに。そんな人と一緒になって不運だよね私はそんな人とは一緒にならないようにしたいななどと他人事のように思ってみるけど盛大なブーメランでそれを父に持つ私も私で不運ってことなのかしらとか瞬間のうちに考えたら胃がむかむかしてきたからこの思考はいったんやめにして母にはとりあえずこんな機会だから全身検査してもらったほうがいいしなんならこれを機にゆっくり休んだほうがいいと思うよこの一年くらい病院行く行く言って仕事のせいにして行ってなかったじゃん妹と弟には伝えておくから心配しないでと不安と批難を思いやりで包むような言い方をして電話を切った。

10分程度の通話だったけど、起きた瞬間に深い深い落とし穴に突き落とされたような気分。ヒュ〜〜〜ンと豪速で落ちてく。はあ〜〜〜と寝起きの頭で今起こってることを振り返っていると急に<家族全体LINE>が動いた。

我が家には<家族全体LINE><母私妹の女LINE><父抜きの家族LINE>の三つがある。(私の知らないところでもっとあるのかも?中学の頃のクラスLINEかよ・・・) <母私妹の女LINE>が一番バカ話で賑やか、基本的な会話は<父抜きの家族LINE>。<家族全体LINE>はほぼ全く使われていない。時に父が家族への気分悪くなる愚痴(車をまっすぐ停めろという文面つらつら&現場写真)(暇かよ)を投稿したりするが誰も反応しないし、他には緊急事態くらいにしか使われない。今回ここが動いたのだ。

ヤマが動いた

<家族全体LINE>に投稿したのは父だった。こんな事態でまた愚痴だったらまじでブロックしよと思いながら長押しで見てみると母の容態を伝える端的な文章だった。開いてみる。テレビ中継のテロップ並みに端的な文章だったが、父による「正常な文章」はもうそりゃ我が家それぞれにとってはビックインパクトで、ここから、突発的で猛烈な、そして期間限定的な、"結束"を見せはじめた。空中分解で機能不全な家族の"リユニオン"である。私はここ数日母宛に母の人生を詰るすごまじい文面(これ掘ったら一個note書けてしまいそうなのでここでは流す)(とにかく遅くて失礼な反抗期)を送り続けていたらしい弟に「ストレスからの出血でしょうね、いい加減にしろ、マザコンは他でやれまじで反省しろ」と個チャを送り、おしりの出血からはじまったぶったおれ事態なのでナイーブな部分もあろうと思い<母私妹の女LINE>で詳しい容態を聞き出し、妹のメンタルが荒れそうだったのでひたすらチャットリレーをし、引き続き母の容態をテレビ中継のテロップ並みに端的な文章で共有してくれる父に対して私と妹は阿吽の呼吸で「パパありがと〜」と感謝の意を送り(えらい)、弟も弟で反省のご様子。事態は深刻なんだけど長年時を同じくしたからこそ生まれるような気持ちのいい一体感、オンライン上ではあるけども久しぶりのリユニオン感があった。まあリユニオンといっても『わ〜みんな元気してた〜?』ではなく『お前強くなったな...遠慮はいらぬ心してかかってくるがよい』感の方が強いのだが。殺伐。

すると父が病院まで必要物は届けるし迎えにも行くよと言い出し、ヤマが動いた感があった。達成感。(「パパありがと〜」が効いたおかげだと信じてる)(えらい)

結局、母に大事はなく、点滴をして入院せず帰宅(まあコロナもあって入院するにもできなかったらしい)。夜遅く、<母私妹の女LINE>で通話したら、帰ったらパパがおかゆ作ってくれてた〜とヨレヨレになった母はそれなりにうれしそうだった。

なんだかドッと疲れた。長い長い一日だった。

5月13日(水)

愛ってなんだ。一日明けた今日、家族LINEはもうすっかり静かになっている。空中分解しても機能不全でも今日もみんなそれぞれ生きている。家族ってなんだ。大事があるたびにしかリユニオンされない家族も悪くないんじゃないかと思ったりする。

上の写真は母が絹さやだと言って大量に送ってきた、どう見てもスナップエンドウの、ナムル。どう見てもスナップエンドウだと言っても「いや、絹さやがおっきくなったんじゃない?ギャハハ」と、おちゃらけだ。

なりちゃん 2020年5月13日

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