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はじめて図書リクエストをした話

 本って大事ですよね。蔡倫あたりの時代に紙(神)が登場して、それ以降「情報が多い・軽い・小さい(運びやすい)」の三拍子がそろった神ってるメディアとして爆誕した本。こんな叡智が所狭しと並んでいるのが図書館という魔窟です。

 さて、そんな図書館ですが、あまりに本が多いのでたいがいのネタは網羅されていますね。だから「こーゆー本が読みたい」と思っても数十冊ヒットする。さらに恐ろしいのは司書さんという番人。フワッとしたテーマをぶつけるだけで無限に近いデータを吐き出してくるオバケです。
 したがって、わざわざ自分でリクエストをしようと思っても、①厳密には一緒じゃないけど似てる本がある、②リクエストしても番人にリジェクトされそうでコワい、といったところでどうもためらわれてしまうのです。まあメンドくさいのを隠すイイワケだとも言えますが。

 ですが、大学に入って3年目の春、ようやくそのタイミングが訪れました。理由は特になし。行動力が躊躇と物草を上回ったその瞬間を狙い打って図書館のサイトに闖入。
 しかしそう簡単には行かない。「図書リクエスト」のページがどうにも見当たらないのです。「蔵書検索」「アカウント設定」「複製複写申込」…。いや、お前どこやねーん!!!城下町のような迷路。番人の罠にきっちり引っかかっています。うんともすんとも行かないので、諦める……わけにはいきません。がんばってここまで来たのに辞めちゃうなんて元の木阿弥。次いつ行動力が訪れるかなんて分からないのです。
 というわけで図書館に直行です。PCを持って、なるだけ平静を装って、試練を受けに行きます。

「すみません、図書のリクe※●★※◇ですが。」
さっそくトチった。万事休す。すかさず司書さんの返事。完全に主導権を取られる。まずい。
「リクエストですかね?」
「はい、そうなんです。ウェブサイトのどこにも見当たらなくて。」
 ……神である。さすが本を見つけるプロ。言葉を見つけるのも一流である。おまけに先回りして恥まで回避してくれるとは、脱帽である。
「あー、見づらいですよね。そこの右上からいったんログアウトしてもらって。そうです、そこのタブ。
 そしたらそのページの真ん中ちょい下くらい、あ、その右のヤツです。」
「あ、こんなところにあったんですね!ありがとーうございます!ちなみに、リクエストの条件なんかはあったりしますか?」
「それはページに全部載っていますので…」
「あ、そうでしたか。すみません。お世話になります。」
 「お世話になりました」というのが正しかったろうか…。後からふりかえったがどーでも良いことである。

 兎に角、これで無事リクエストができたわけですが、問題はこれが通るかどうかです。とりあえず申請理由を書きましたが、きっちりとした理由が無いものは認可しません、などとなかなかに厳しいことが注意書きに載っていたので緊張。きっと毎月数十通のリクエストが押し寄せて来るのであり、それを番人はガンガン捌きながら仕事をしているのだろう。なんだか無性に申し訳なくなった。ちゅ、メンドくてごめん。
 そう考えると、やはり「お世話になります」が正しかったのかもしれない…。そんなことを考えながらゼミに向かった。

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