「THE PORTRAIT」インタビュー掲載
the sea falls asleep
2006年に結成され、2010年にメジャーデビューした3ピースバンドAnyがthe sea falls asleepに改名。ドラマーの脱退を経て、クドウナリヒサ(ボーカル, ギター)、オオモリシンヤ(ベース, コーラス)の2人体制となって初めてのフルアルバム「THE PORTRAIT」がリリースされる。日々のなかで生まれる、平凡だけどかけがえのない出来事や感情を冷徹な視線で切り取りながら、普遍的なポップミュージックへと結びつけるクドウのソングライティングは、本作によってひとつの高みに達している。プロデューサーの木暮晋也(HICKSVILLE)による洗練と先鋭性を共存させたサウンドメイクも本作の魅力。そして何より、クドウ、オオモリのなかにある“the sea falls asleepとして良い音楽を生み出したい”という純粋なモチベーションこそが、このアルバムの素晴らしさを支えている。
「THE PORTRAIT」のオフィシャルインタビューは、5月中旬、下北沢のカフェで行われた。バンド名を変え、新たなスタイルで活動を再会させたクドウとオオモリが、いかにしてこの素晴らしいアルバムを生み出したか。ぜひじっくりと読んでいただきたいと思う。text by 森朋之
——素敵なカフェですね、ここ。
クドウ コーヒーがおいしいんですよ。
オオモリ 下北沢でライブがあるときは、ここに来ることが多いです(笑)。
——では、早速インタビューを始めたいと思います。まずはバンドの名前について。2006年の結成以来Anyとして活動してきましたが、2016年にバンド名をthe sea falls asleepに変更。これはどういう経緯だったんですか?
クドウ 高校生のときから数えると10年くらいバンドを続けてきて、メジャーも経験して。「自分たちのことを知らない若い世代のリスナーが増えてきたな」と勝手に思った時期があったんですよね。ちょうどその頃に前のドラマーの(高橋)武くんが「バンド名を変えて、過去を一掃するくらいの気持ちで新しくスタートするのもいいかもね」って言い出して。オオモリくんは反対してたんだけど、音楽性も当初のギターロックとは違ってきていたし、バンド名を変えるのもいいかもなと思って。
オオモリ うん。音楽のモードが変わってきたことがいちばん大きかったですね。
クドウ 思い切ってバンドの名前を変えることで、音楽的にディープなことだったり、コンセプチュアルなこともやれるんじゃないかなと。検索しても引っ掛かりずらいですからね、Anyって(笑)。でも「変えよう」って言い出した張本人がバンドをやめてしまって。
オオモリ そうだね。
クドウ その前から所属していたレーベルを離れて、予算のことも含めて、全部自分たちでやるようになってたんですよ。武くんは他のバンドのサポートもやってたんだけど、そのなかで僕らとの気持ちのすれ違いが生まれていたのは確かで。サポートしているバンドは大きい会場でライブをやっていて、こっちは街のリハスタで、お客さんも少ない。彼の気持ちを察するに、そこで葛藤があったと思うんです。これからどう生きていくか?ということも考えただろうし、バンドを離れるという決断をしたんだろうなと。こちらとしても、その気持ちは汲みたかったんですよね。
オオモリ 実際、ぜんぜん揉めたりしてないんです。お互いに納得して離れたので。
クドウ うん。僕とオオモリの2人になった当初は「どうしよう?」という気持ちもあったんだけど、逆にわかりやすくなった部分もあると思ったんですよね。武くんはタフだし、男性的な強さを持っているんですよ。彼が抜けたことで、どちらかというと女性的な2人が残ったのかなと。
——確かに女性的な柔らかさはあるかも(笑)。2人体制になって、ライブはどうしてたんですか?
クドウ 3人でやっていたときから、キーボードの清野雄翔さん、ギターの坂本夏樹さんに加わってもらってんたですけど、お2人には引き続き手伝ってもらっていて。ドラムはコレサワなどでも叩いているUさんに入ってもらっています。あと、僕と大森くんの2人だけでライブをやることもあって。
オオモリ 2人になった直後は「とにかく活動を止めたくない」という気持ちがあって、2人でライブをやってたんですよ。リズムマシーンを使って。
クドウ ベニー・シングスが使っているのと同じ機材ですね。ローランドTR-707というドラムマシンなんですが、すごくいい音で。EDMみたいな音ではなくて、生っぽいんですよ。
オオモリ 2人でライブをやることで、いままでの固定概念がなくなったところもありますね。
——スタイル的にもギターロックから離れたというか。
クドウ そうですね。ギターロックから離れたいという気持ちはすごく強かったんです。たとえばThe Sea and CAKEのようなシカゴ系のバンドの洗練された感じに興味があったり。ボーカルにも無理がないというか、あまり声を張らないのもいいんですよね。ただ、それだけだと僕らにとってはオシャレが強すぎるから、スコットランド、イギリスの湿った雰囲気も取り入れたいなと。ちょうどその頃、シティポップと言われている音楽が巷に出てきたんですよね。Yogee New Waves、never young beach、Suchmosとか。そういう音楽も好きだし、違和感なくやれるだろうなという感じもあって。
オオモリ うん。
クドウ 楽曲としては、どこかにヘンなところだったり、毒みたいな要素があって、かつポップなものをやりたいなと。あと、ギターを弾きたくなかった(笑)。
オオモリ 実際、今回のアルバムでもあんまり弾いてないしね。
クドウ 鍵盤のほうが好きなんですよ。そんなに弾けないんだけど(笑)。
——the sea falls asleepとしてやりたい音楽のイメージは明確だったわけですね。
クドウ そうですね。やりたいことに対して、必要なものを配置していくというか。「こういうことをお願いしたいです」と伝えて、その部分に関しては任せてしまうほうがいいこともあるんですよね。以前は周りの意見に反発したり、自分の意見を押し通すことが多かったんだけど、そこも変わってきたのかなと。
オオモリ 大人になったのかもね(笑)。今回のアルバムでは、プロデューサーの木暮晋也さんの力が大きくて。アレンジはほぼお任せだったんですよ。
クドウ アレンジもそうだし、収録する楽曲も決めてもらって。僕は曲を書いただけです(笑)。
——外からの客観的視点が必要だったのかも。
クドウ そうですね。木暮さんにはAny時代の「視線」という作品もプロデュースしてもらってたんですけど、そのときは個々のやりたいことが強かったせいか、「あのときはアレンジしづらかった」と言われて。いまは自分たちの個性を素材として提供して、それをどう調理してもらえるか?という感じです。アルバムの制作中も、木暮さんからアレンジのデモが届くたびに「おもしろい!」と思ったし、「これは違うな」ということはまったくなくて。リード曲の「Minor Climax」なんて180度アレンジが変わったんだけど、めちゃくちゃいいですからね。
——曲を書くこと自体も好調だったんですか?
クドウ 武くんが抜けるかどうかってときは、そのことが気になり過ぎて、なかなか曲が書けなかったんです。でも、2人でやるって決めてからは、わりとスムーズでしたね。Any時代の「記憶喪失」(2011年)あたりから、言葉(歌詞)を先に書くようになったんですよ。そうすることでメロディも浮かびやすいことに気付いて。言葉から曲にするときは、同時に映像をイメージしていることも多いですね。自分のなかでカット割りしながら歌にしていくというか。写真が好きだってことも関係してるかもしれないですね。今回のアルバムに関しては、自分のなかの作家性が出てきていると思います。どうしても内省的になりがちだったんですけど、年齢のせいか(笑)、それがだんだんなくなってきて。
オオモリ うん、いちばん大きく変わったのは歌詞ですね。
クドウ 「内省的なところから、いくつ窓を開けられるか?」ということは常に意識しているんですけど、今回のアルバムの制作のなかで、木暮さんにさらにこじ開けられたというか(笑)。そのうえでシニカルな部分、コミカルなところもありつつ、ポップに表現したいなと。もちろん(歌詞を書くための)インプットは必要なんですけど、あまり苦労はしなかったかな。木暮さんもプロデュースするにあたって“シンガーソングライター・クドウナリヒサ”を意識していたみたいですね。収録曲に関しても、サウンドに統一感を持たせるというよりも、歌の良さ、ボーカルの良さが出ているものを選んでいて。歌詞や歌の良さがしっかり感じられれば、何をやってもOKっていうのかな。木暮さんはアンダーグランドもメジャーも知っている人だし、エグいサウンドをポップに落とし込むのが上手くて。僕らとしてもいろんなチャレンジができたと思います。
オオモリ うん。さっきも言ってましたけど、どの曲のアレンジも思わずニヤついてしまうほどカッコ良くて。予想してなかった方向に進むことも多かったし、ワクワク感、ドキドキ感を持ちながらレコーディングに臨めました。
——リリースの形態については? 今回のアルバムはCDではなく、ストリーミングとダウンロードサービスでのリリースですが。
クドウ CDをリリースするコストでPVを作ったほうがいいかなと思って。
オオモリ 制作中はCDを出すつもりだったんですよ、じつは。でも、終盤になって木暮さんから「でも、君たちCD買う?」って言われて。考えてみたらCDは買ってないんですよね。中古のアナログレコードは買うけど、ふだんはストリーミングが中心なので。そのことを踏まえて話し合うなかで「CDは出さなくていい」という結論になりました。
クドウ サニーデイ・サービスなども最近はアナログとストリーミングですからね。その代わり、ライブの物販で“カラオケ”を買えるようにしてるんですよ。
——カラオケ?
オオモリ はい(笑)。ブックレットがメインですけどね。
クドウ ふだん僕が撮っている写真と、自分たちのアー写を撮ってくれている“かくたみほ”さんの写真、あとは歌詞とライナーノーツで40pくらいのブックレットを作ろうと思ってるんです。そこにアルバムの曲のカラオケを入れて。アルバムを聴いてくれた人が興味を持ってくれたらいいな、と。
——では、それぞれの楽曲について聞かせてください。まずは「格好の餌食」。ベースと歌で始まりますが、これは意図的なものですか?
オオモリ そうですね。木暮さんは当初「2人だけで演奏している曲を1曲目にしたいね」って言ってたんです。結局2人だけでやっている曲はないんですけど「2人だけで始めたい」というのはありました。
クドウ そうだね。ちょっとヘンな曲なんですけど(笑)。
——確かに。詳細に説明するのは避けますが、知り合いの女の子と喫茶店にいたら、その子が「人生が変わったの」なんて言い出して…という歌ですね。
オオモリ いきなり引っかかるワードがふんだんにありますからね。
クドウ 言っていいのかわからないけど、実際にあった話なんですよ。ふだんはそういう感じではなくて、優しい子なんだけど、その話になるとやたら熱が入るっていう。で、僕はコーヒーを飲みながら「おなかすいたな」って思ってる(笑)、それをリアルタイムみたいな感じで曲にしたということですね。
——そして2曲目はリードトラックのひとつ「Minor Climax」。さきほど「アレンジが180度変わった」と言ってましたが。
クドウ はい。もともとアルバムに入れるつもりもなかったんだけど、木暮さんが「いい曲だから入れよう」って言って、リード曲になったんです。最初はスローテンポだったのに、いきなりBPMが上がって。「え、このテンポでやるんですか?」って面食らったんだけど(笑)、出来上がってみたらめちゃくちゃカッコ良くなりました。80‘sのニューウェイブ、ノーウェイブ感があって、ソウルミュージックのエッセンスも入っていて。アバンギャルドなところもあるし、でも、すごくポップで。ちゃんとゴールが見えているんですよね、木暮さんは。
——ド派手なサックスソロもポイントですよね。
クドウ 加藤雄一郎さんがアルトサックスを吹いてくれてます。レコーディングのときもすごく盛り上がってましたね。「Minor Climax」は“よくある結末”みたいな意味で。生きてればいろんなことがあるし、葛藤を抱えることもあるけど、別に大したことないというか「それが人生でしょ?」みたいな。人生の結末は誰のせいでもない。結局は自分次第だということを淡々と歌ってる感じですね。
——続く「センチメンタル」は、アルバムのなかでもっともポップな楽曲だなと。
クドウ そうですね。この曲も最初のアレンジは違ってたんですが、木暮さんが「いやらしいくらいにポップな曲にしようよ」って。
オオモリ 言ってたね(笑)。
クドウ 「こういう曲ってよくあるけど、やっぱりいいね」と思ってもらえたらいいなっていう。自分の声ならそれが達成できるという気持ちもありました。
オオモリ いろんなテイストの曲があるからこそ、こういうポップな曲が際立つと思うんですよね。
——しかも日本的なポップネスですよね、これは。タイトル通り、すごくセンチメンタルで。
クドウ 10代の頃からずっとバンドに憧れてたし、いろんな音楽を聴いてますけど、普通に生きてたらJ−POPも絶対に入ってくるので。ポップフィールドの音楽はいつも意識していたし、往年のヒット曲も好きなんですよ。そういう雰囲気の曲をやることもまったく抵抗はないですね。
——「Walkin' In The Rain」は打ち込み系のナンバー。浮遊感のあるメロディも印象的でした。
クドウ これは完全に木暮さんとの宅録ですね。素材として僕のボーカル、オオモリくんのベースを入れてます。ピッチを機械的に変えたり、ヒップホップ的なニュアンスもあって、いまっぽい雰囲気の音に物憂げな歌を乗せてる感じですね。
オオモリ こういう作り方、以前だったら抵抗があったかもしれないですね。ドラマーがいなくなって、リズムマシンでライブをやるなかで、自然と受け入れられたというか。
クドウ そうだね。歌詞もデモのときとは違っていて。メロディに合わせて譜割りしたんですけど、6月リリースということもあるし、季節感に合った歌詞があってもいいのかなと。インタールード的な役割もありますね。
——「幽霊の仕業」も不思議な雰囲気の楽曲ですね。タイトル、歌詞がそのままサウンドに反映されているイメージがあって。
クドウ これは明け方に書いた歌詞がもとになってるんですが、漠然と「あれ? お金ないな」って思って。
オオモリ ハハハハハ(笑)。
クドウ それを何かのせいにしたくて、幽霊がやったことにしようと。お金や銀行口座のことって、妙に生々しいじゃないですか。そこに幽霊を組み合わせることで現実感がなくなるし、逆に「不思議なことって多いけど、じつはあれも…」みたいな想像もできるのかなと。自分のなかで不思議と腑に落ちるというか、歌っていてもおもしろいんですよ。
オオモリ サウンドも歌詞とリンクしてますね。
クドウ ドープな感じもありつつ、ドラムはずっと淡々と刻んでいて。
オオモリ ベースはギリギリまで後ろに引っ張って弾いてます。気持ち悪さを表現してみたんですけど、演奏していてもおもしろかったですね。
——「冷たい」は個人的にも好きな曲です。憂いのあるメロディも素晴らしいし、やるせない思いを冷静に捉えている歌詞もいいな、と。こういうラブソングは聴いたことがないです。
クドウ ありがとうございます。この曲、制作中にメロディを足したんです。
オオモリ 大サビの前のところですね。もともとはつなぎの部分だったんですけど、木暮さんに「メロディを入れてほしい」と言われて。
クドウ そのメロディに「胸に沁み込んだ気持ちの正体は/医者じゃない僕らでも分かるのさ」という歌詞を乗せて。この一行で曲の印象もかなり変わったと思います。ラブソングって「わかりたくて、わかってもらえなくて」みたいな問答が常にありますけど、お互いのカン違いの度合いが増えてくると笑えてくるじゃないですか。どこかに寂しさはあるんだけど、それを大げさに歌うんじゃなくて「つれないな」「冷たいよな」くらいの感じでやってみたくて。
——実際はそれくらいのニュアンスですからね。
クドウ そうそう。「何でわかってくれないんだよ!」みたいなことにはならないので。あと、あまり説明したくないという気持ちもありましたね。よく「この歌詞にはどういう意味が?」みたいなことを聞かれて、それにちょっと疲れていたところもあったので。
——80年代のネオアコ的な手触りを持つ「Switch」は「ケータイのSwitchをいますぐ切ってほしい/画面を眺める仕草が癪に触る」というフレーズで始まります。これもふだん実感していることだったりするんですか?
クドウ 思いますね(笑)。要はこれも「つれないな」ってことなんですけど、ベッドで横になって、ケータイでネットサーフィンしている恋人に対して「スイッチを切ってほしい」っていう。
オオモリ いろいろ想像させられる歌詞だなと。女性言葉の歌詞もあまりなかったので、新鮮でした。
クドウ ちょっと前まで、セクシャルな部分をわかりやすく出すほうが色気を感じてもらえると思ってたんです。でも「そういうことじゃないな」ということに気付いて。直接的に歌うんじゃなくて、何かモチーフを用意したほうが、すっと伝わるんじゃないかなと。それがケータイだったということですね。
——続く「サイダー」はドリーミーポップ風のナンバー。レトロなサウンドメイクも楽曲に良く合ってますね。
クドウ カセットテープみたいな音にしたかったんですよ。元々のライブアレンジではシンセが入っていてキラキラしていました。「Walkin' In The Rain」と同じようにインタールードみたいに短くまとめるのがいいのかなと。もともとは「夏を感じるものって何だろう? サイダーかな」というだけの歌なんだけど(笑)、しっかり情景を描けたと思います。
——アルバムのなかでもっともライブ映えしそうなのが「切り裂かれた」。シャープかつポップなバンドサウンドが素晴らしいなと。
クドウ すごくポップなんだけど、じつはギターをいっぱいダビングしていて、異物感もあるんですよ。歌詞もよく意味がわからないんだけど、そういう歌が持つ瞬発力もあるので。確かにライブでも良さそうですよね。
オオモリ 全体的にストレートなんだけど、Aメロにボサノバとかフレンチポップ風のフレーズが入っていて。すごく遊んでるんだけど、だからこそパンチのあるサビが活きるんだと思います。
——そして最後の「Film」。さきほどの写真の話ともリンクする歌だなと。
クドウ そうですね。実はこの曲、最初はギターを歪ませて、轟音のなかで歌ったんです。でも、アレンジしていくなかでアコースティックギターのアルペジオが中心になって。ピアノの旋律も絡まって、繊細な雰囲気の曲になりました。歌詞が熱いので「この熱を取り得たい」という気持ちもあって。このアレンジになったことで、ちょっと距離を置きながら表現できたと思います。
オオモリ 「Film」は2人でなってから、いちばん最初に出来た曲なんです。
クドウ よく「武くんに向けた歌なんですか?」と聞かれました。そういうつもりで書いたんじゃないんですけど、どこかに「応援したい」という気持ちがあったのかも。出会いと別れは常にあるけど、区切りをつけたかったというか。
オオモリ 「時が経てば笑えることもきっとあるのだから/今はどうか 少し耐えながら頑張ってみてよ」という歌詞があるんですけど、自分たちの状況に重なる部分があって。ライブでやるたびにグッと来て、毎回、涙ぐんでました。
クドウ そんなに感情的になってたの?
オオモリ なってた(笑)。「武くんのことを歌ってるんじゃないんだろうな」とは思ってたけどね。サビの頭が“洗濯物”で始まるのもパンチあるよね。
クドウ そうかも。野暮ったくならなくてよかったです。
——「THE PORTRAIT」というアルバムのタイトルについては?
クドウ ブックレットを作ってるときも思ったんですが、いまの自分たちを切り取ったアルバムだなと。制作中もこれまで関わってくれた人たちの顔が浮かんでたんですよね。過去と現在を結ぶのは、そのときに一緒にいた人たちの存在だし、その人たちの表情や仕草が時間を繋ぎとめてくれるんだなと感じて。その瞬間を切り取るとういか、シャッターを切るように曲ばかりなので、このタイトルがピッタリだなと思ったんです。PORTRAITという言葉には肖像、生き写しという意味があるんですけど、相反するように「作品に自分の名前を刻みたくない」という気持ちもあるんですけどね。どうしてそう思うのか、自分でもわからないんだけど。
——まずはthe sea falls asleepとしてアルバムが完成したこと自体に、すごく大きい意味があると思います。
クドウ そうですね。リスクを背負いながらの制作でしたけど、いいものが出来たと思っているので。評判もいいんですよ。過去いちばんじゃない?
オオモリ そうだね。
クドウ これだけの作品が出来たので、まずはアルバムをたくさんの人に聴いてほしいです。その先のことについては、もちろん応援してくれる方が増えたらいいなという気持ちもあるけど、自分たちとしては「やるべきことをやるだけだ」と思っていて。ストレスはないですね。
オオモリ うん。2人になったことで、いろんなことにチャレンジしようという気持ちになっているので。
クドウ ネガティブな出来事もネガティブに感じないんですよね、最近。不思議なゾーンに入ってきてます(笑)。
——アルバムのリリース後は、まずライブですか?
クドウ そうですね。7月にリリースパーティ、9月に企画ライブ、12月にワンマンライブを計画していて。
オオモリ 2人でやるライブも続けます。
クドウ うん。もちろん、タイミングを見てバンドスタイルでもやりたいんですけどね。そのなかでアルバムの反応を見ながら、次の作品の制作に入りたい思ってます。
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