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アジア拠点は中国or韓国が世界のスタンダードなのかを調べた

New York Timesアジア拠点移転先

先日、アメリカ大手メディアのNew York Timesがアジアの拠点を香港から移転するニュースがあった。香港の情勢が不安定になったことが理由だ。移転先の候補地として、日本東京、韓国ソウル、シンガポール、タイバンコクなどが挙がっていた。(日本人として多くのバイアスがかかっている上で)個人的に移転先は日本東京だと思っていたが、結果的に決まったのは、韓国ソウルだった。

2008年~2020年の中国の変化

このNYT移転が東京ではなかったニュースで思い出したのが、いつだか忘れたが、欧米の何かのブランドをネットで調べていた時、アジアでは中国の上海にしか拠点がないことを知って、「上海にあって東京にはないのか!」と驚いたことだ。

そんな驚くことか?と思うかもしれない。インバウンドや爆買いなどのキーワードがここ数年で一気に飛び交った2020年の今では、中国の経済力をバカにする人はいないと思う。
しかし12年前の2008年、雰囲気は全然違っていた。それはぼくがその年、大学で第2外国語として中国語を選択したから覚えている。当時は、、、今だと信じられないが、GDPで日本が中国にまだ勝っていた。多くのメディアが「GDPが近いうちに中国に抜かれそうで~す」というゆるいテンションで語っていた。そしてぼくもそれをボケっと聞いてて「ほぉ、どうやら中国がこれからくるみたいだから、中国語知っておいたらいいかも」くらいの感覚だった。それで中国語を選んだのだ。
そして2010年、中国が日本をさっと抜き去り、今やアメリカをも数年以内に抜くんではないかというペースで成長を続けている。日本はご存知の通りここ30年間全く成長していない。

NY市の言語対応

また、NYに住んで1年近く経つがここで日本の存在感の低さが身に染みたことがあった。NY市にはNotify NYCという公式の緊急通知サービスがある。日本でときたま「ぶぅぅぁぁあー」と鳴る地震通知と同じようなものだ。NYは多人種の街なので、緊急通知のWebページは言語対応がしっかりしている。英語の他に、アラビア語、ベンガル語、中国語、フランス語、ハイチ語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、ロシア語、スペイン語、ウルドゥー語、イディッシュ語といったように多く取り揃えている。。

日本語がない。

なぜハイチ語なんかがあって日本語がないんだ!!と、ハイチ人には失礼ながら日本人のぼくはまずそのように感じてしまった。おそらくNY市の言語別人口とかで、日本語スピーカーよりハイチ語スピーカーのが単純に多いからだと思うけど、それでもハイチ語に負けたのはショックだった。「はいちご」を変換しようとしても「配置後」か「ハイチゴ」しか選択肢に出てこない言語に負けた。
しかし、これも日本の視点からするとそうなだけで、世界的には違うのだ。
ご覧の通り中国語は当然あるが韓国語もある。これも今思えば、海外のどの街に行ってもチャイナタウンはあるし、コリアンタウンもまあまあな確率であるけど、ジャパンタウンはほとんどない。日本は世界でそんな感じだ。

これら3点

NYTの韓国ソウル移転、どっかのブランドのアジア拠点は中国上海のみ、2008年から2020年にかけての中国の凄まじい変化、そして日本人大好きニューヨークでの日本語の存在感の無さといった点から、

アジアの拠点は中国or韓国に置くのが世界のスタンダードかもしれない

という思いが頭によぎった。なので調べた。

ファッションブランドから日中韓の立ち位置を知る

むやみに調べてもきりがないので、今回ファッション業界だけに絞って調べてみた。特に詳しいわけではない。逆にそんなぼくでも知っているここ数年で話題だと感じるブランド3つを選んで、世界における日中韓の立ち位置を実店舗の展開度合いから調べてみた。

Allbirds

シリコンバレーで人気のスニーカーブランド。米Time誌が「世界一快適な靴」と評価している。環境に優しい素材を使っているようだ。また俳優ディカプリオが企業自体に出資していたりと話題性があるブランドだ。ぼくも1年くらい履いているが多くの人が言うようにすっごい軽くてなんかふかふかで気持ちいい。
Allbirdsは2019年4月にアジア初の拠点を中国の上海にオープンしたようだ。その他に北京、広州、成都にもお店をすでに構えている。韓国にはない。日本には2020年1月に原宿にオープンしたようだ。9か月なので大した差ではないかもしれない。でも業界や関係者の人からすれば大きな差かもしれない。
https://www.allbirds.com/pages/stores

Supreme

アメリカの人気スケート・ストリートブランドSupremeは、中国にも韓国にも店舗がないようだ。現在世界に12店舗あり、場所はニューヨーク (2)、ロサンゼルス、サンフランシスコ、パリ、ロンドン、東京 (3)、大阪、名古屋、福岡だ。徹底的に日本をターゲットにしている印象を受ける。もちろん日本のこれらの場所には中国人韓国人東南アジアからの人たちが多く訪れて購入していることだろう(or過去形)。Supremeは単純に店舗は日本で構える方針だろうか。
https://en.wikipedia.org/wiki/Supreme_(brand)

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この写真は今年2月に日本に一時帰国していたとき、Supreme代官山の行列の前を偶然通りかかった際に撮っていたものだ。近くの渋谷駅前のホテルに泊まってて、朝チェックアウトする前に昔話童話の本を探しに代官山蔦屋に行く途中だったのを覚えている。。ちなみに2014年の時に働いていた会社はここから徒歩数分の近さだったので、お昼時に目の前をたびたび歩いていたがその時はお店はなかった、と思う。
その流れから…今回の日中韓のトピックには全く関係ないが、渋谷は本屋がこの10年間でどんどん減っていて、すごい残念に思っている。ブックファースト、山下書店、文教堂書店、、調べたら桜丘のあおい書店も再開発で閉店したようだ。。ぼくは渋谷で働いてたし住んでいたし学生時代も経由駅だったから全本屋にお世話になっていたのでとても残念だ。これで丸善ジュンク堂書店が消えたら、、、東急は渋谷の新しい駅ビルには本屋作ってくれないのかなぁ。。

OFF-WHITE

現在ルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブディレクターをしているヴァージル・アブローが立ち上げたハイエンド向けのストリートブランド。
https://www.off---white.com/en-us/stores

この公式ページによると、中国には11店舗、韓国には9店舗、香港には5店舗、日本には2店舗だった。世界的にもまんべんなく店舗を構えている様子だ。ヴァージル・アブローは現ファッション業界で最も注目されている1人だと思うので、彼のブランドがアジアでこのような国別店舗数となっているのは興味深い。というか、ぼくの仮説を裏付けてくれたかもしれないと調子良く思っている。国土が激狭い香港で5店舗あるのに日本で2店舗だけ。確かに香港は東南アジアにも近いしマカオもすぐそこだし富裕層は集まりやすいかもしれない。それでも比較して2店舗というのは少ない印象だ。中国11、韓国9、日本2の数字をどう捉えるべきか。

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2018年11月上海に行ったときに見かけたOFF-WHITE的なジャケット。たぶんNOT-HONMONO…?

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上海の地下鉄内。あれはWHITEって書いてあるしたぶんホンモノ!

まとめ

以上3つのファッションブランドを調べてみた。この3つから推測するならば、日本よりも中国と韓国の方が世界から見て強い市場と見られているように感じる。当然ブランドはこれ以外にも無数にあるし、それぞれアジア拠点の国選びは方針も違うだろう。店舗数だけで日中韓の世界における力関係を知るのは難しいが、「日本はこの3ヵ国の中なら無条件に1番でしょ」と考えているお気楽な人たちにとっては、新鮮な情報で良い参考になると思う。

現在は、実店舗の優先度が低くなり、ネット上での購入体験の方が重要視されるかもしれない。ただ、例えばOFF-WHITEとかは高価格帯なのでお店に人がユニクロみたいに常時たくさんいるわけではないと思うし、これからファッションブランドがどう実店舗展開していくかは分からない。

ファッション以外で日中韓の世界における存在感について軽くふれたい。
例えば中国はビジネス面が圧倒的で、アメリカNASDAQに新規上場する大量の中国企業の存在感が凄まじい。日本企業は現在トータルで数社しか上場していないが、中国企業は今でも毎月何社も上場しており、トータルゆうに100社は超えて上場している。
韓国は映画ドラマ音楽といったエンターテインメント面において、存在感が日中韓で一番大きいように感じる。アカデミー賞のParasiteもそうだし、最近話題のNetflixで観れる韓流ドラマも然り、また細かい話だがSpotifyのジャンル別検索では「K-Pop」はあるけど「J-Pop」はなかったりする。「Anime」はあるけど。。

最後のまとめ

アジアの拠点は中国or韓国が世界のスタンダードなのかは業界によるだろう。そうは日本人として言うけども、もしこの世には存在し得ない完璧に公平な調査システムがあってそれを今世界各国で実施したら、きっと多くの分野で日本人が聞きたくない結果が待っていると思う。
かといって、相対的に日本の力が下がっていると考えるよりも、この日中韓は3ヵ国それぞれが世界の中でも際立った素晴らしい文化を持っている国だと個人的に思っていることから、お互いの良さを認めて協力しながら、真のアジアの時代を共に作っていきたい。


小泉成文 (Narifumi Koizumi)

大好きな横浜名物シウマイ弁当を食べる時、人生であと何回食べられるんだろう。。と考えます