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最大酸素摂取量vs最高酸素摂取量~子どもの心肺持久力を評価する指標にはどっち?~

最大酸素摂取量  VO2max
専門家でなくても聞いたことがある方は多いのかなと思います。心肺持久力の評価指標の1つである最大酸素摂取量は、マラソンなどの持久系アスリートにとって最も重要な身体能力要素であるとともに、近年では健康との関連性もあると言われています。そんな最大酸素摂取量ですが、子どもの持久力を評価する指標としてはどうなのでしょうか。

最大酸素摂取量か最高酸素摂取量か

最大酸素摂取量は単位時間あたりに摂取できる酸素摂取量の最大値であり、単位は絶対値でL/min、相対値でml/kg/minとなります。最大酸素摂取量とVO2maxとも表記されます(単位時間を表す・(ドット)をVの上に表記します)。

最高酸素摂取量の定義が正直なところいまいち不明瞭ですが、最大酸素摂取量とほぼ同義ということも聞いたことがあります。最高酸素摂取量はVO2peakとも表記されます(こちらも・(ドット)をVの上に表記します)。

定義を見る限りだと、両者は同義と捉えても良いかもしれません。しかしながら、その違いは測定方法にあります。

最大酸素摂取量(VO2max)の測定方法

最大酸素摂取量(以下、VO2max)を計測する方法として、トレッドミルやバイクなどで行う漸増負荷運動テストを採用することが多いです。VO2maxを決定する基準として以下の要因を照らし合わせます:
・酸素摂取量のレベリングオフが出現
・呼吸交換比が1.10を上回る
・運動時の最高心拍数が「最大心拍数(220-年齢)-10拍」程度であること
・運動直後の血中乳酸が>8mmol
・RPEが>17(6-20スケール)、>7(0-10スケール)

一つ目のレベリングオフというのは、漸増負荷運動中の酸素摂取量が定常状態(以下、プラトー)になる現象のことを言います。具体的には、運動負荷の漸増につれて酸素摂取量も漸増していきますが、運動の限界点が近づくにつれて、酸素摂取量の上昇が頭打ちになりプラトーとなります。このプラトーが出現したことをレベリングオフと呼びます。イメージとしては以下となります。

図1

このレベリングオフを観察することが、VO2maxを決定するための条件とも言えます。


最高酸素摂取量の測定方法

最高酸素摂取量(以下、VO2peak)もトレッドミルやバイクなどを用いた漸増負荷運動テストによって測定されます。VO2max測定との大きな違いとして、レベリングオフの観察を条件としないことです。つまり、レベリングオフの有無を確認せず、被検者が運動をストップするまでの間に見られた酸素摂取量の最高値となります。イメージとしては以下となります。

図2

一方で、レベリングオフが観察されないと、実はもっと追い込むことで高い数値が出せたんじゃないかと思うかもしれません。このことから、レベリングオフの観察を条件とするVO2maxを用いることで、被検者の"True(本当の)”な心肺持久力を評価する指標になることが考えられます。
また、VO2peakは全ての漸増負荷運動テストで出現しますが、このレベリングオフが観察されないことでVO2maxを決定できないこともあるようです。

子どもの心肺持久力を測定する場合はどちらを用いるか

子どもの心肺持久力を測定する際に、VO2maxかVO2peakのどちらが良いのでしょうか。結果から先に述べるとVO2peakを採用する方が良いみたいです。その理由については、子どもはレベリングオフが出現しづらいとのことです。Rowlandの研究によると、10-13 歳の子どもを対象にトレッドミルによるテストを行わせたところ、レベリングオフが出現した子どもは全体の33%(3名のみ)しかいなかったとのことです。残りの67%(6名)はレベリングオフが観察されなかったとのことです。被検者の数が少ないことが気になる点ではありますが、VO2peakを採用する理由の一つになるでしょう。

まとめ

✓VO2maxとVO2peakは別物
✓子どもはレベリングオフが出現しづらい
✓子どもの心肺持久力を評価する際はVO2peakを用いる方が望ましい

雑感

いろいろ書いてみましたが、そもそも漸増負荷運動テストが行える環境は多くはないと思います。運動生理学に精通した専門家やそれ相応の機材も必要になります。まぁ違いを把握しておいて損はないかなと思って書いてみました。
約1ヶ月前から読み始めたEssentials of Youth Fitnessも半分まで読み終えました。改めて思うが、なかなかのボリュームです。

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