ウエイトを中止してパフォーマンスが上がる要因を考えてみた

ウエイトトレーニングを捨てて動き作りに特化した結果、高校3冠を取ったチームや全国トップレベルのチームがあったことをツイートで教えて頂きました。貴重な情報ありがとうございます!!
一方で、ウエイトを中止したことでどのような効果がもたらされたのか、またはウエイトトレーニングを行っていたことでパフォーマンスにどのような弊害が与えられていたのかは気になる所です。推測を基にした考察を書いていきます。


考察1:動き作りに特化する前にウエイトトレーニングをしていたかも

ウエイトトレーニングを“捨てて”動き作りに特化したということは、動き作りのトレーニングを行う以前に、ウエイトトレーニングを行っていたかもしれないなと思いました。例えば、高校1-2年ではウエイトトレーニングをガシガシ行って、3年あたりから動き作りに特化したという流れかもしれません。その場合、「ウエイトを止めて動き作りで成果が出た!」と捉えるよりかは、パフォーマンスの土台となる筋力を1-2年時のウエイトで強化できており、その土台があって動き作りのトレーニングの成果が出た可能性もありえそうです。

考察2:動き作りトレーニングだけの場合

1.動き作りトレーニングが筋力トレーニングにもなっている可能性

 高校入学時点でのトレーニング歴(この場合、ウエイトなどの筋力トレーニング)は有していても1年くらいかと思います。おおよその場合、高校入学時点でのトレーニング歴はゼロに近く、筋力は低い可能性があると推測します。筋力が低いというのがポイントで、ウエイトトレーニング以外のトレーニングでも筋力が伸びる可能性があります。つまり、動き作りのトレーニング自体がある程度の筋力強化にも貢献していた可能性が考えられることから、動き作りトレーニングのみでパフォーマンスが伸びた可能性はあると思います。
ただし筋力の伸びという観点で考えると、高校3年間を動き作りトレーニングだけ行った場合、ウエイトを実施した場合と比較すると期待するほどの伸びはないと考えられます。

これらに関することでタイムリーなツイートがありました↓

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2.元々の身体能力が高い可能性

上述のトレーニング歴がゼロに近いから筋力が低いという主張とは矛盾するかもしれません。しかしながら、全国トップレベルのアスリートって、トレーニング歴がゼロでも有している身体能力が高いことがあります。ごくごく“普通”の選手が複数年かけて培った身体能力を、天性のものだけで凌駕されてしまうことはスポーツの世界では多いと思います。つまり、元々の身体能力が高かったため、動き作りに特化したトレーニングが上手いこと良い方向に繋がったかもしれない可能性もあります。その場合だと、動き作りのトレーニングを選択したのは効果的だったかもしれません。その選手は何が必要で何を行うかという考えが鍵となりそうですね。

3.競技練習の疲労との兼ね合いで動き作りが効果を出した可能性

その時のウエイトトレーニングと動き作りのトレーニング、それぞれの負荷はわかりませんが、なんとなく動き作りトレーニングの方が身体に残す疲労は少ないのかなと推測します。
そして、そのチームの練習量や強度もわかりませんが、全国トップチームの練習量や強度はかなり高いと思います(360㎞を思い出した・・・余談です)。
比較的疲労が残りにくい動き作りトレーニングを行うことで、うまく身体が良い方向に適応していったかもしれません。逆を言うと、ウエイトトレーニングによる疲労でコンディションを崩していた可能性があったかもしれません。中長期的にオーバートレーニングに近い状態が続くかもしれませんし、過度な疲労蓄積によって食欲不振、そして低エネルギー状態などになっていたかもしれません。この場合、ウエイトトレーニングを中止という判断が良いかもしれませんが、ウエイトトレーニングの中身を見ないと分からないです。
1で述べたポイントとこの疲労に関するポイントが併さったことで、動作づくりトレーニングのみで上手くパフォーマンスが伸びた可能性もあります。


4.選手がイメージがしやすい

動き作りトレーニングで習得した動作をそのまま競技動作に活かしやすいという利点はあるかと思います。選手がイメージしやすい分、効果が出たのかもしれません。意識性の原則が上手くハマってパフォーマンスが伸びたのかもしれません。
ただし、理想通りに動作を遂行できる身体能力を有しているという前提があると思います。


考察3:ウエイトトレーニングを捨てて成功した場合のウエイトの中身

ウエイトトレーニングを捨てて成功したとして、この場合はウエイトトレーニングがもたらしたかもしれない弊害について焦点を充て、その中身を推察していきます。

1.プログレッションがどうだったか

ウエイトトレーニングでは、スクワット・デッドリフト・ベンチプレスというBIG3と言われる種目を中心に取り扱うことが多いかもしれません。それは別に悪いことではありません。しかし、正しいフォームが習得できていないうちからBIG3で挙上重量を上げていくとなると、何かしらのエラー動作は出てきます。ほぼほぼトレーニング歴がないであろう高校生を相手に、BIG3を行うためのプログレッション(漸進)がどうだったか気になるポイントではあります。
BIG3を例に出しましたが、実際はウエイトトレーニング全体のプログレッションは気になるポイントです。

2.強度や量などの変数について

変数調整も気になる所です。変数調整次第で、ウエイトトレーニングの効果は減少もしくは負の効果を導き出す恐れがあります。

あくまでこれは個人的に15-20年前に調べたり聞いた話ですが、「体重の2倍で10回スクワットできないとダメ」とか「10回3セット行って、4セット目は潰れるまで。その4セット目の粘りが力になる」などのことを見聞きしたことがあります。当時中学生であった私の情報収集力はどうだったかという疑問点は残りますが。
体重の2倍で10回スクワット、つまり10RMを伸ばそうとする場合と最終セットで潰れるまで回数をこなすといった場合、フォームが崩れても回数をこなさなきゃいけないという考えからエラー動作という弊害が出やすいし、何よりも身体に残す疲労がとても大きいです。

たぶん無いと思いますが、もしこのようなトレーニング内容が続いていた場合だと、競技パフォーマンスが下がってしまうのは頷けます。

3.疲労との兼ね合い

上記に述べた通りです。ウエイトトレーニングと競技練習の疲労を別物と捉えてしまうと負荷設定を誤る危険性があります。Stress is Additiveという考えが重要になります。


まとめ&原理原則に戻る重要性について

ウエイトトレーニングを中止したことでパフォーマンスが伸びた、その背景には何があるのだろうと考えてみました。ウエイトトレーニングが全くダメでもないですし、動き作りトレーニングが使えないという訳ではありません。私は、ウエイトトレーニングと動き作りのトレーニングの両方を行っていくことが理想と考えます。ただし、各チームや選手の環境によっては、ウエイトトレーニングが行えない場合もあると思います。その場合、動き作りを中心に行っていくのは選択肢の一つかもしれません。一方で、動作づくりの段階で、筋力不足によるエラーが見られる場合は、ウエイトトレーニングを中心に行っていくことも一つです。要は何が必要で何を行うかが鍵となります。

最終的な所では、特異性と個別性の原則を考えるとスッキリするのかなと思いました。ウエイトトレーニングと動き作りトレーニングを行うことで得られる適応は何なのかを明確にすること。そして、選手にはどのような適応が必要かを明確にすること。それによって、ウエイトトレーニングか動き作りのトレーニングか、両方か、はたまた別の何かか、という流れが一番分かりやすいのかと思います。何か迷ったときはトレーニングの原理原則に戻ることの重要性を改めて感じます。


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