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月の沙漠

今日はね、えーっと、眠い日。(なんやそれは。笑)
最近寝ても寝ても眠い気がするのは低気圧のせいなのかどうなのか。
でも今日は久しぶりに晴れた。
日中、あんなにまとまった時間晴れ間が覗いたのっていつぶりかなぁ?
嬉しくて患者さんに、「今日はね、いいことがありますよ。晴れてます!」なんて言ってたら笑われた。
ほぼ全員笑ってた。
なんやそれは、という具合に。

患者さんとよく歌を歌う。
声を出してもらうために。
これは私統計だけど、80代以上の方の大半が好む曲というのがあって。
いくつかあるのだけど…
特にこれはと思うのが、童謡『月の沙漠』。(字は砂漠じゃなくて沙漠で正解らしい)
これって若い世代はあんまり知らないよね?
それとも私が知らなかっただけで世の中みんな知ってるのかな?
ちなみにこの仕事を始めてから知って、もうたぶん通算500回くらいは歌ってる。笑
それくらい、どの人も好きでよく歌ってくれる曲。

♪月の沙漠をはるばると
 旅のラクダが行きました

とても幻想的で美しい曲なのだけど、なんとも物悲しい雰囲気もあって。
王子様とお姫様がラクダに乗って月の砂漠を歩いていく。
でも二人がどこに向かっているのかは最後までわからない。
まるで人生の終わりに向かっていくような、何度も歌っているうちにそんなイメージすら湧いて来て。
患者さんと歌うたび、少しだけ切ないような気持ちになってきたりもする曲。

今日も患者さんとこの曲を歌った。
いつも絵画や旅の話をするあの患者さんと。
最初は北海道旅行の話をしていて。
まだ身体が動いた頃にラベンダーが見たくて富良野に行ってみたけどまだ咲いてなくて残念だったという話から、阿寒湖や釧路湿原の話…
「地平線がずっと先に見えるでしょ。あれが好きなのよ」の言葉には思わず、私もです!!なんて強く相槌を打ってしまったり。
湿原つながりで、尾瀬ヶ原の景色を歌った『夏の思い出』を一緒に歌ったりも。

そのあと歌の本をパラパラめくりながら、『月の沙漠』が出てきたとき、「あ、これは…」とつぶやいて自然に歌い出されたのだけど。
なんかそれがね、今まで聞いたことのないような歌唱で。
舌の筋力が落ちてて話すときには呂律のハッキリしないところがあるような方なのに、この曲を歌う時にはまるで噛み締めるようにゆっくりと、一つ一つ言葉を紡ぎながら歌われていて。
それがもう、心を奪われるというか…。
グッと掴まれて引きこまれるような歌唱で。
いつもなら一緒に歌うのだけどそんなの絶対できないくらいになんだか別次元の歌だった。

これまでライブハウスやコンサートやお店なんかでギターの弾き語りを含め少なからず歌を聴いてきたのだけど…これは正直に、これまで聴いてきたどの歌よりも心に沁みた。
意図せず涙がじわっと浮かんできてしまうほどに。
歌が終わったときにはいつも、声がすごく伸びてて良かっただとか、音程がブレずに正確だったとか何かしら良かったところを伝えるのに、そんなの全部すっ飛んで、感動しましたとだけ伝えてしまった。


ただただとても美しくて感動的な歌だった。
それ以上、何か外側から意味付けることが愚かしいと感じるほどに。
こんな不意打ちみたいな感動ってあるんやね。
そしてこれを私だけの心に留めておくのが惜しくてここで伝えてみたけれど…まるで伝わってる気がしない。笑
私の文才が無いせい?(それは大いにあるな。笑)
かと言って自分で再現してみるもできないし…難しい。


でもとりあえず

今日もいい日やったよ。


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