ざるそばであっさり、と思ったら濃厚肉料理だった話
エロい話なので子供は読まないように。念のため。
小腹がへったがガッツリは食べたくない、あんまり食欲がないので軽く済ませたい……そんなとき、丁度いいメニューがざるそばではないでしょうか。もりそばでも良いのですが、今回のテーマはざるそばです。刻みのりが乗っている方ですね。
そんなざるそばが、実は肉肉しいもので、しかも食べるものではなかったなんてわかったら、驚きです。そんな驚愕体験が明治27年(1984年)11月21日付の読売新聞に「雑報」として掲載されていました。
そばが出せない? 田無の珍妙なそば屋
6人の閑人が多摩川に鮎釣りに行った、というくだりから記事は始まります。多摩川で鮎が釣れたということも驚きですが、ここは本題ではありません。
鮎釣りの帰りに閑人6人が田無町(現在の西東京市)を通りかかった際、「ざるそば」の看板を見つけてその店に入ります。ちょうどお腹もへっていた頃合いでした。
店の2階に上がって品書きを探しますが、「牛肉1人前何銭、酒1合何程と定価を書付たる紙の外何もなき」という状態で、不審には思いながら「何は兎(と)もあれ6人前」と注文します。
そば屋ですから何の不思議もありません。しかし注文を受けた老婆は「眉に皺寄せハイ6人様では御間に合ひ兼ねますが」と言うのです。
田無名物「ざるそば」の正体は何と!
ざるそばの看板を掲げた店でざるそばが出せないとはこれ如何に? 空腹を抱えた6人が「然らば何が間に合ふか」と問い詰めると、老婆は「只今他に有合せの代物御座りませぬ」との冷たい返事。
こうなると6人も収まりが付きません。「名物を喰わずに素帰りも残念なれば1人前でもよいから兎に斯く(とにかく)有丈(あるだけ)持来れ」と命じたところ、老婆は腹を抱えて笑い出したのです。
「貴殿(あなた)方は田無のざるそばといふ名物まだご存じござりませんか」と老婆が言うので、一堂ますます訝しく思い、仔細を尋ねたところ「ざるそばとは此地の方言、一夜妻の変名」とわかったので驚くまいことか。
一夜妻なんて言葉は普段では使いませんが、要するに娼婦、売春婦のことですね。6人は「胆をつぶし畳を蹴立てて這々の体にて逃げ出でたりと」、というところで記事は終わります。
なぜざるそばが一夜妻なのか
相変わらず明治時代の新聞は、知りたいことが書いてありません。一夜妻とは娼婦のことですので、ざるそばは娼婦の隠語だったわけです。そして、ざるそばの看板を掲げた店が売春宿と考えれば良さそうです。今で言うデリヘル的な商売でしょうか。
それにしてもわからないのは、「なぜざるそばが娼婦を意味するのか」です。
ネット上には、私娼のことをざるそばと呼んだ、という情報や、「じゃれる側女(そばめ=妾)」を略してざるそばになった、などという話もありますが定かではありません。私の直感では、上に乗っている刻みのりに何かヒントがあるのではないかと思うのですが……。だとするともりそばはパイパンか……とか。
現在の西東京市で「ざるそば」の看板を見つけても、そこは100%間違いなく本物のそば屋さんなので、変な気を起こさないようにお願いします(そんなやつはいない)。では、また次回!
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