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3次元の嵐の中で。

「場」を持つ、という決断

一つ前の「新しいはじまり」についての記事で、
一瞬、旅の会社を畳むのか?!と思われた方もいるかもしれない。
確かに、その道への心の扉が開きかけたときもありました。
もちろん、すぐ閉じたけど。

でも、なんと。
自分たちでも呆れるほどに。選んだのは全く逆の道。
閉業を決めていたコンポントム唯一のVillaホテル・Sambor Villageのブランドと資機材を前のオーナーからまるっと購入し、この町に新しく「滞在する場所」を持つという決断をしました。

このCOVIDのなか、ホテルをはじめる?しかもコンポントムで?!
という驚きもカンボジアを知る人ならば当然。
なぜならコンポントムは”観光”としては無名に等しく、世界遺産であるSambor Prei Kuk遺跡は知られているけれど、町そのものは”通過する場所”。
カンボジアの人たちにも「え?コンポントムに何があるんですか?」と言われるほどに。

そう、そのとおりなんです。
そして、今?!というツッコミもごもっとも。
わかっています、始める人より、畳む人の方が多い時期だっていうことも。
世界的観光産業が始まって以来、未曾有の逆風の真っ只中だということも。

でも、でも、心が「でもね」というんです。
ここに場所を構えることで、訪れる人とこれまで出会ったこの地に生きる素敵な人たちをもっと多様につなぐことができる。出会い方に幅が生まれる。

実際COVID到来前の2019年半ば頃から、これまで大事に大事に育ててきた地域の人たちとの生態系へのアクセスが、私たちNapuraが同行するという形しかないことに道の狭さを感じていました。
せっかく素敵なことがたくさんあるのだから、日本人以外の方々やクメールの方々とも分かち合いたい。
同時に、“村のおうちに泊まる“があるハードルになっていたことも事実。
想像がつかない村の暮らしの中に、えいやっと飛び込める人はなかなか少ない。
家族を誘うのに勇気がいる・・という声も。

そこにCOVIDがやってきて、今まで国の外に向きがちだった人々の視線が、一気にカンボジア国内に今あるものに向き始めた。
コンポントムの観光局の友人とも、これからのコンポントムのテーマは国内の在住外国人や都市に暮らすクメールの人たちを中心に「普通の暮らしに宿る楽しみ」を味わう、カンボジアの中でコンポントムにしかない”町旅”を提案していこうと勝手に「コンポントム観光5カ年計画」なるものを練っていた。

折しもそんなタイミングに、突然あらわれたこのSambor Villageの話。

もともと私たちの顧客にはいない、欧米系のお客様を得意としてきたホテル。
全員が地元・コンポントムの人で構成された、ホテルを守るスタッフたち。
中核には英語ができるメンバーが揃い、クメール語なら全員ネイティブだ。

拠点を持つことで広がる世界がある。
そしてそれは私たちが届けたい「この地と人の暮らしの美しさを分けてもらいながら、人が生きることの根に出会う旅」をもっと深めてくれるはず。

と胸のあたりが熱くなるほど強く思う一方で、

拠点を持つということは「百姓型観光」だけじゃない人たちの暮らしを支えるということ。

果たして本当にできるのか・・?
この大きな空間を?
この素敵なスタッフたちを路頭に迷わせないでいられる?

という不安も雨季の雲のようにむくむくと大きくふくらんで、
一歩踏み出すその先に、真っ暗で大きな穴が開いているような感覚が襲う。

COVIDという初めての大海原をなんとか約4ヶ月泳いできて、ようやく潮の流れを感じて、これならいけると思ったところに!突如あらわれた新しい大きな渦。

目の前の状況、決断までの時間の短さ、たくさんの人の期待と思惑という大渦と遠くにキラリと光る星たちのような未来の可能性との間で、揺れに揺れる日々。

人に会い、話を聞くたびに、ぐらりぐらりとコマの軸が振れて、そのたびに回転の角度が変わって、目に映る世界が変わる。

どの角度から、どの立場から見るかで、同じ世界がこんなにも姿を変える。

思いつく限りの、この人!という方のところを訪ねるために、身体は首都・プノンペンとコンポントムを3日おきに移動し、心はできる!とダメかも!の間を瞬間ごとに絶え間なく往復する。

そして決断の期限が目前に迫った8月の終わり。心が揺れすぎて熱が出た。
数年ぶりの39度(この時期だけに、緊張しました)
3日間続いた40度近い熱の中、頭は働かず、体の力が全部抜けた。

そして熱から醒めるころ、ひとつの気づきがありました。

この2週間、できるか、できないかに気持ちが集中していた。
状況と情報を整理しなきゃ!と肩に力が入って、頭でばかり考えていた。
わからないこと、知らない未来に向かうことを恐れていた。

でも、今求められているのはたぶん、その手前。
肚を決めるところ。
やるか、やらないかの決断だ。

できるか、できないか、という方法の話は、そのもうひとつ先にある。

もしかしたら、
鳴門の大渦のようなこの大きな流れの中に、グイグイと引っ張られていく今、この流れに逆らって泳ぐより、一度流れに身を任せてみた向こう側に新しい何かがあるのかもしれない。
竜巻のあとのドロシーが大切な仲間に出会ったように、
腐海の森に落ちたナウシカが腐海の秘密と役割を確かめることができたように、
きっとそういう類の何かが、この先にあるような気がする。

何か小さな小さな出来事たちがつながってできた大きな流れに背中を押されて、今ここにいる。
COVIDという世界的な大事件がなかったら、Sambor Village Hotelが閉じることはなかった。
これまでこの町で積み重ねてきた関係性がなかったら、この話が耳に届くことはなかった。
これまでの10数年の間に出会った日本の、この国の、この町の人たちが、今背を支え、応援してくれている。

そのことに気がついたとき、答えは自然にでた。
というか、はじめからたぶん出ていた。

やる。

肚をきめて、やります。

なぜやるのか?

だって、なんだかわかんないけど、この土地と人と縁があり、その出会いの中で生まれていくものたちが大好きだから。
地域の素敵な人たちと訪れたお客さんが出会って、それぞれの人生という名の袖の袖がすり合う瞬間が生まれたとき、
ここにある何かと何かがつながって通電するようにピカッと一瞬光るとき、
「ああ、今、生きている」と強く感じるから。

16年前にこの地の人と遺跡に初めて出会ってから、ずっとずっと呼ばれている。

きっとここから、何か大事なものが生まれていくという予感がある。
その生まれてくるものは、きっと、それぞれのこれからを照らす小さな光。

誰にお願いされたことでもない、どう花開いていくかもわからない
そういう類のことだから、それはきっと、本当にご縁。
この世界にシナリオライターがいるとしたら、これは私たちに与えられた役。

なぜ今?私たちに?

わからないけど、それは私たちに与えられた大切な役割で、
私たちと目の前の人たちの間にだけ生まれる物語がきっとあるはず。

そういう風に考え始めた時から、なんというか、自然に物事が動き始めた。

そして、このコロンブスの航海みたいな大冒険を応援してくれる仲間たちも現れて、訪れる人と迎える人の他に、ともに歩む人たち、見守る人たちとの生態系もできそうな予感が生まれた。

だからこそ、今、このタイミングのなかで生まれたこの新しい物語を、これまでの仲間たちと、新たに出会った仲間たちと一緒に、生きてみたいと思うのです。

そして、この新しく生まれた「場」から何が生まれ出てくるのか、
どんなことが生まれて来たら、魂が震えるくらいしあわせだろう?

と、ふろしきを広げてみようと思うのです。

つづく。

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カンボジアの中央部・サンボー・プレイ・クック遺跡とその周辺の農村を拠点に、”旅をつくる”仕事をしています。遺跡の近くの村に滞在し、地域の暮らしと時間の中に身を置いて、外から訪れる素敵な人と地域で迎える素敵な人をつなぎ、その間に生まれる「いい時間」をみんなで味わう旅をしてます。