切り貼り、断片、七十五日

俺は何度も愛してといって抱きしめられて好きだと言って、好きだと、ずっといっしょだって、愛してるって、あんなに求めていた、あんなに焦がれた言葉に感慨のない暗い昼も、うたた寝も、玄関の外も、夏の初めも、夜の寒さも、冷たい雨も、何もなさも、過ぎる日も、つぶる目も、サンダルも、花の芽も、眠い息も、いつまでも、いつまでも、変わらなければ
合皮にかいた汗も、衣擦れも、週末も、宿り木も、淀んだ湿気も、風も、灯り火も、名残惜しさも、全て記憶して、なくさなければいい

明日も明後日もその次も来年も想像もつかぬほど長い時間

はみ出した私も、PCの重さも、シャワーの冷たさも、未済の感情も、怒りと冷めた午後も、気紛れの音楽も、だんだん終わっていく夕方も、遅い日暮れも、

いつしかの夜も

明日も、今日も、明後日も、今日も、明明後日も

言葉は一瞬、長雨、梅雨入り、カプチーノ。忘れらるること桜のごとく、四月初めから七十五日

嫌われた副部長、縮まらない14km、洗っていないシャツ、手首のヘアゴム、擦り切れた記憶と劣等感、壊れた腕時計が2つ、ずれた時間、切れたシャンプー、汚れたシンク、レシピを逸れたカレーライス、外の怒声、塞がれた窓枠、割れたスマートフォン、使わないカメラ、曇ったレンズ、取れない指紋、買えないイヤホン、焼かれた金閣、緋色の弾丸、音割れしたスピーカー、読めなかった漫画、消されたプレイリスト、参照されない資料、かなわない夢、何も無い冷蔵庫、外れたネジ、1日20錠の薬、眺めた木馬、無理な空想、編集される記事、降りた溜飲、ブランデーの空瓶、
戻れない現実、すべてを映した歪んだ言葉たち。

美味しいお酒でも飲みます。