「あたしは柴犬のアキ」43

　次の日もその次の日もお兄ちゃんは学校に行けなかった。もう熱は下がって元気にしているのにずっとお家にいた。お兄ちゃんがいるからあたしも外に行けない。だからずっと一緒にいた。お兄ちゃんは誰もいないことを良いことに、テレビを見たりゲームをしたりいつもママやお姉ちゃんに注意されていることを好きなだけやっていた。あたしも暇なのでテレビばかり見ていた。
　お兄ちゃんが庭に出て素振りをしていた。そんなに元気ならあたしを散歩に連れて行ってよ。よしちょっと頼んでみよう。玄関においてあるリードを咥えてお兄ちゃんの所まで持って行った。お兄ちゃんが「アキ、散歩に行きたいの？」と聞くから何度も吠えた。お兄ちゃんも退屈していたみたいなのですぐにリードをつけて外へ連れ出してくれた。

　「アキ、今日は長い長いお散歩にいこうね。クロの所にも行くよ。それからアキのいきたいところ全部連れていってあげる」そう言ってお兄ちゃんは歩き出した。今日はクンクンしても待ってくれる。いろんなところを嗅いでまわった。クロの所に行って肉球タッチをお兄ちゃんにもみせた。お兄ちゃんは肉球タッチが面白かったみたいで、あたしとクロに「もう一回やって」といって何回もやらせた。クロは途中で飽きたみたいでもうやらなくなった。

　次に公園に行った。公園の近くの自動販売機でお兄ちゃんはコカ・コーラを買った。それから公園のベンチに座ってコーラを飲んだ。コカ・コーラはいつもママに駄目って言われて飲んでない。お兄ちゃんはやりたい放題ね。お兄ちゃんの横でお座りしていると、知っている猫ちゃんや、ワンちゃんが何匹も通った。みんな「ワン！」とか「にゃん！」とか挨拶をしてくれた。

　次にお兄ちゃんが行ったのはダイソー。あたしはダイソーの前の電柱に繋がれてお兄ちゃんを待っていた。通りがかる人に「可愛いね」と言われて上機嫌になったわ。お兄ちゃんが戻ってきた。スーパー袋にポテトチップスとグミとチョコが入っていた。お兄ちゃんやり過ぎよ。絶対ママに怒られるよ。また公園のベンチに戻った。スーパー袋に手を入れたお兄ちゃんはなんとギザギザボールを取り出した。あたしのオモチャも買ってくれたのね。お兄ちゃん大好き。お兄ちゃんはリードを目一杯伸ばしてポテトチップスを食べながらボールを投げてくれた。あたしはお兄ちゃんの隙を狙ってポテトチップスを一枚頂いたわ。とても美味しかった。今日は楽しいお散歩になったけど、家に帰ってお兄ちゃんがママに怒られないか心配。結局お兄ちゃんの行きたい所の散歩になっちゃった。