芙蓉の浄土に安き給う 感想

芙蓉の浄土に安き給う サキュレント https://www.dlsite.com/girls/work/=/product_id/RJ319615.html

久しぶりに乙女ゲームをプレイしたのでリハビリに感想を書きます。

こちらの作品、美麗なキービジュアルに「ストリッパーのヒロイン」「貧民窟出身」「元ヤク中の幼馴染」「金持ち男の寝取り」と惹かれる要素山盛りで発売前からとても楽しみにしていました。サキュレントさんの作品をプレイするのははじめてだったのですが、過去作がどれも色の強い作品ばかり(BLに割り込む女、は当時周囲で結構話題になっていた覚えがあります)ということもあって、パンチの効いた作品を浴びれそう…!と期待していたのですが、その期待を裏切らない作品でした。

もともと私は「寝取られ」というものに特別大きな拘りがある方ではなかったのですが、「寝取られって…こんなにおいしいんだ…!」と思わず感動してしまうくらい、この作品は「寝取られる=自分にとって替えが効かない何かを他人に略奪される」ということへの屈辱と、その屈辱のうまみがたっぷりな作品だったなと思います。

プレイする前は、ヒロインのミータオと共に貧民窟出身で情緒不安定で元ヤク中な男の子、リョウくんが、金も地位も名誉もなにもかもほしいがままな金持ちの嫌味な男尊女卑男に奪われていく悲劇…というところが寝取られ要素だと思っていたのですが(もちろんそこも「寝取られ」としてしっかり描写されています)、個人的に「寝取られ」的なうまみ、即ち自分のものだと思っているものを他人に奪われる屈辱や、そうしたことによる尊厳の凌辱といった意味ではウツブシの方が強かったなというのが印象的でした。「自分の女をポッと出の男に奪われる」という構図が、事実が明らかになることで反転する流れが非常に気持ちがよかったです。なんでもほしいがままにできると思っている傲慢な男が惨めで哀れな末路を辿るというのは形容できないあわれな美しさがありますね。

個人的に、「選ばれなかった男」が好きなので、リョウくん√におけるウツブシも、ウツブシ√におけるリョウくんも、どちらもしっかり描写されていたのがとても嬉しかったです。

特に、作品の中でも一番刺さったのが、ウツブシ√でミータオがウツブシに犯されている最中にウツブシのセックスの上手さを体で感じながら、「(リョウくんは)すごく必死でしがみつくみたいに自分を求めてくれてそれがうれしかったけど、女を気持ちよくすることに関しては全然素人だった」と思い返すシーンでした。あまりにもあんまりで…すごい…。リョウくんとは何度も身体を重ねても子供はできなかったのに、ウツブシとの間には数か月で子を宿してしまうのも、とても示唆的で好きです。

一方のリョウくん√は、リョウくんとのエンディング、というよりも、薬物によって致命的に破滅してしまい、誰もが悲劇的な末路を辿るエンディングだったのが、この作品を象徴しているのかなと思いました。前述のウツブシ√での言及もしかりですが、ミータオとリョウくんはどこまでいっても噛み合わない二人だったのだなと思わされました。ああした選択肢がない状況で出会ったからまるでベターハーフのように生きてこられたけれど、リョウくんがミータオに抱いているものはミータオがリョウくんに抱いているものよりもっと暗澹とした行き場のない感情で、そもそものところで断絶してしまっていて、ウツブシは切欠に過ぎなかったんでしょうね。リョウくん√ではウツブシもまた破滅していきますが、その破滅が本当に…良かったです…。私は「本物の男(男尊女卑で支配欲が強くてなんでも自分の思い通りになると当然のこととして思っている男様)」が破滅していく様が何よりも好きなので堪らなかったです。

エロシーンは数は多くないものの、どれも濃厚でよかったのですが、特にリョウくん√の中にいれてる状態で後ろに指突っ込んで潮を吹かせるのがめちゃくちゃえっちですごくよかったですね…このゲームで女攻めまで見れるとは思ってなかったのでとってもありがたい……という気持ちになりました。

個人的にはウツブシのミータオへの執着がもっと掘り下げられていたらうれしかったな~と思います。父親にそうしろと命じられ、そしてミータオを屈服させることで父親の雪辱を晴らそうとするところに、どことなく父息子の香りを感じられたのもとてもよかったです。


ゲーム自体としての長さはそこまでですが(値段を考えると十分すぎるボリュームです、同人サークルさんはすごい)サークルさんの「これをやりたい!」という気持ちが伝わってくるような、ぎゅぎゅっと濃密に詰め込まれたゲームでとても楽しかったです。

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