東横インの強み

いつも東横インについてはべた褒めの和多志であるが、
今回の旅行で1回だけ、カチンとくることがあった。

どこの東横インかは言わないが、
フロントにクリーニングを頼もうとした時に、
「大きなシミやほつれはございませんか?」
と聞かれた。

「特にそういったものはありません。
万が一、クリーニング屋さんから染み抜き必要とか
伝票記載以外の物が入っていたとか言われたら、
全部、お願いします。
後で、追加料金を支払います。」
と伝えた。

和多志がこれを言ったのには理由がある。

万が一、クリーニング屋さんから、
以下の電話がホテルのフロントに入ったら、
フロントはどうするのだろう?
「お客さんは染み抜きを入れていないし、
今はシミも全く目立たないけど、
今ここできちんと処置しないとスーツの寿命が縮んでしまう。
染み抜きが必要だけどもやっても良いか?」


一流のホテルなら、たぶん以下の対応をする。
まずは追加の処置をすぐにするようにクリーニング店に依頼する。
その後、該当のお客さんがフロントに立ち寄った際に
クリーニングの追加があったことを伝える。

そこでお客さんの対応は2つ。
「ありがとう。助かりました。」と言って、
気持ちよくお金を払うタイプ。

逆に、面倒なのは
「そんなこと頼んでねーよ!」
と言って、料金を踏み倒そうとするタイプ。

もちろん、一流ホテルであれば、
それに関連する人件費や、もしもお客さんが料金を踏み倒すことがあっても
財務的には痛くも痒くもないような料金設定にしているはず。


ところが、「手頃な価格」を売りにしている東横インで
これが起こったらどうなるだろうか?

クリーニング店から「メニューを追加した方がいいよ」と電話が来た時点で、
東横インはそのようなコストを料金に載せている状況ではないから、
まずは対応する人件費分の赤字が出る。

しかも、勝手にクリーニングのメニューを追加して、お客さんに
「そんなこと、頼んでねーよ!」
と踏み倒されたら、それでまた赤字が累積。

逆にメニューを追加しなかったことで、
お客さんに叱られるなら、その時間分の人件費が赤字。

そういう想像がつくから、
「もしクリーニング店から染み抜きとか、他のメニューとか
追加が必要だと電話が来たら、全部追加しておいてください。
後で支払います」
と和多志は必ず一言添える。

実際に、このようなクリーニング店からの電話があったことは
今まで一度もないが、
プロの視点と、和多志たちお客さんの視点、判断が違うことは
簡単に想像できる。
そういう電話がかかってこないとも限らない。

余談だが、和多志が独身時代にお願いしていたクリーニング店は
「この洋服は〇〇だから、こっちのメニューで洗った方が良いですよ」とか
「これは△△でやっても同じだから、こっちでも十分ですよ」という
アドバイスがよくあった。


と、ここまで前提となる状況を書いたところで、
とある東横インのフロントで何があったか?

「もしクリーニング店から染み抜きとか、他のメニューとか
追加が必要だと電話が来たら、全部追加しておいてください。
後で支払います」
と、いつもの一言を付け加えた。

そしたら、フロントの人が
「はぁ!?」
という、まるで能面のような顔をしたのだ。
とにかく感じが悪すぎる。

もちろん、和多志はその場ではスルー。

というのは、他にその現場を見ている人がいないので、
客観的証拠としては、監視カメラしか無いからだ。

そして2日後にそのクリーニングを取りに行った時に、
責任者と思われるベテランの方がフロントにいた。
件のスタッフも隣にいた。

和多志は、手が空いている様子の件のスタッフではなく、
書類整理をしているベテランスタッフに
クリーニングの伝票を渡した。
そして、その隣のスタッフが
クリーニングを出す際に、どういう態度を取ったかを伝えた。

その時は夜の7時ぐらいだった。

翌朝まで、件のスタッフは勤務していたが、
それ以降、和多志たちが滞在している間、
そのスタッフがフロントに立つことは無かった。


そして、いくつかの東横インに宿泊しながら、
和多志たちのオフ会ツアーは進んでいった。

今回のツアーで最後に泊まったのは、郡山の東横イン。

そこですべての東横インの客室に置いているこの本を読んだ。


この本の内容は「内観」に関するもので、
和多志が内観に出会ったのは、今から20年以上も前。
久々に新鮮な気持ちで、改めて内観について知り、
少しだけやってみた。

そして、この本に書いてある内容は、
内観と共に東横インの強みだった。

それは、「この人はこの仕事に合っていない、と感じたら、
払うものを払って、すぐに辞めてもらう」というもの。

払うものを払わない=窓際に追いやる=窓際族でも会社にいけば給料をもらえる=あわよくば人権派の弁護士をやとってハラスメントとして慰謝料をもらう

そんな構図が日本のいたるところで起こっている。

その点、東横インは、法律に従ってさっさと払うものを払って退職してもらう。

法律に則っているいる以上は、何の問題もない。

しかも考え方も潔い。
「向いていない仕事を嫌々やるのは、あなたにとっても人生の無駄。
会社にとっても、向いていない人を雇うのは無駄。
お互いに無駄は止めましょう」
という考え方。


あのフロントの人がどうなったのかは知る由もないが、
これが東横インの強み。

適度な危機感があるから、みんなが一生懸命仕事をする。
仕事をきちんとしていれば、細かいことはスルーしてもらえるし、
独自の工夫も認められているから、
朝食担当の精鋭部隊に代表されるように、どんどん効率化を図る。
その結果、自分たちも楽で、楽しく仕事ができるから
なんだか女学生のようなノリでキャッキャ言いながら仕事をしている。

この本には東横インの強みが凝縮されていた。
女性と男性の視点や行動の違いを、
「よくご存じで・・・」
と脱帽するしかない。
それと同時に、経営の潔さも気持ちが良い。


クリーニングにまつわるフロントの対応は別としても、
ますます東横インが好きになった。





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