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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定③

今回は、考えられる典型ケース別にどの時点でどういう登記をすれば相続登記の申請義務を果たしたことになるのかを書いていきます。


相続登記申請の基本的な義務として、相続(特定財産承継遺⾔を含む。)や遺贈により不動産を取得した相続⼈に対し、⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられる(新法76条の2第1項)ことは前回書きました。

新法では、遺産分割協議が成立した場合についても、同様にその旨の登記の申請が義務付けられる(新法76条の2第2項、新法76条の3第4項等)。
相続人間で被相続人の不動産について遺産分割協議すれば、特定の相続人に当該不動産を取得させることが多いと考えられ、その場合でも遺産分割の結果を不動産登記に反映させることが、その後の土地処分等でも便宜であるから、相続登記の申請を義務付けている。
被相続人の遺言があった場合も同様である。

典型的なケースとしては、
① ⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に遺産分割が成立しなかった(しなかった)
② ⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に遺産分割が成立した
③ 遺言書があった

この3つが想定できる。

それぞれのケースを見ていく。

① ⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に遺産分割が成立しなかった(遺産分割協議をしなかった)

まず、⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に「相続人申告登記の申出」か「法定相続分の相続登記の申請(債権者など第三者が代位登記をした場合でも義務履行はあったとみなされる。)」のいずれかを行わなければならないので、申出か申請を行うことになる。*1

次に、上記登記後に遺産分割が成立する場合と成立しない場合に分かれる。

【遺産分割成立】
その後(3年経過後)に相続人間で遺産分割協議が成立したら、成立日から3年以内に、遺産分割協議で定めた内容の相続登記の申請を行わなければならない。

【遺産分割成立しない(遺産分割協議をしなかった)】
すでに上記登記の申出・申請が終わっているので、遺産分割が成立しなければ(遺産分割協議をしなかったなら)、それ以上の登記申請の義務はない。

*1 相続人の一部の者が相続放棄をした場合、その者は初めから相続人とならなかったとみなされる。他の相続人は、相続放棄を知った日から3年以内に相続放棄後の割合による相続登記の申請義務を負うことになる。相続人申告登記でも可能。

② ⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に遺産分割が成立した

⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に遺産分割が成立したのであるから、遺産分割内容に則した相続登記の申請をすればよい。

しかし、遺産分割は成立したのだけど、遺産分割協議書に対して実印の押印を拒んだり、印鑑証明書の提出をしない等、遺産分割の内容に則した相続登記ができない場合も考えられ、その場合においては、⾃⼰のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った⽇から3年以内に申告登記の申出を行うか、法定相続分での相続登記の申請*2を行う。
この場合でも、遺産分割成立日から3年以内に、その内容に則した登記の申請を行わなければならないので注意が必要である。

*2 法定相続登記は、評価額に対して1000分の4の登録免許税が必要となるので、わざわざ法定相続で登記する人はほとんどいないと思われる。法定相続登記をした後に遺産分割の内容に則した持分全部移転の登記をする場合の登記原因は「遺産分割」となる。再度、その持分移転登記の持分の評価額に対して1000分の4の登録免許税が必要となる。

③ 遺言書があった

遺⾔によって不動産の所有権を取得した相続⼈が取得を知った⽇から3年以内に遺⾔の内容に則した登記の申請を⾏う。
相続⼈申告登記の申出でも可能である。
仮に、相続人申告登記をした後に遺言が発見された場合、重ねて相続人申告登記をする必要はない。

「土地・建物を相続人甲に遺贈する」との相続人に対する遺言(新法76条の2第1項後段)でも、「土地Aを相続人甲に相続させる」との相続人に対する特定財産承継遺言(新法76条の2第1項前段)のいずれも同じ義務である。

相続人に対する遺言、特定財産承継遺言のいずれによるものでも、改正法により、所有権移転登記の申請は単独申請可能とされた(新法63条3項)。

次回は相続登記の申請義務を履行しなかった場合の過料、相続登記の申請の義務化に関する経過措置について書きます。

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