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セブンイレブンフランチャイズ加盟者の労組法上の労働者該当性(令和4年6月6日東京地裁判決)

本件は、令和4年12月21日に東京高裁で控訴審判決があり控訴棄却されている。判決内容は未だ見てないので、東京地裁の判決をまとめた。

事案の概要

原告コンビニ加盟店ユニオンが、セブンーイレブン・ジャパン(以下、「セブンイレブン」という。)に対し、団体交渉を申し入れたが、セブンイレブンは、組合の組合員である加盟者は独立した事業者であり、セブンイレブンと労使関係にないと認識しているなどとして、上記申入れに応じなかった。
原告コンビニ加盟店ユニオンは、県労働委員会に対し、団交拒否が労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てたところ、県労働委員会は、原告コンビニ加盟店ユニオンの組合員である加盟者が労組法上の労働者に当たり、団交拒否が不当労働行為に当たるとして、セブンイレブンに対し団交応諾と文書手交を命じる救済命令を発し、交付した。
セブンイレブンは、中央労働委員会に対し、上記命令を不服として再審査を申し立てたところ、中央労働委員会は、上記命令を取り消し、原告コンビニ加盟店ユニオンの救済申立てを棄却する命令を発し、命令書を交付した。
原告コンビニ加盟店ユニオンは、上記中央労働委員会命令の取消しを求めて本件訴えを提起した。

【争点】(A)本件団交拒否が労組法7条2号所定の不当労働行為に当たるかが争点であるが、その前提として、(B)セブンイレブンとフランチャイズ契約を締結する加盟者であるコンビニ加盟店ユニオンの組合員が労組法上の労働者に該当するか。→今回は左記(B)についてまとめる。

(判断枠組み・考慮要素)
労組法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させることを目的として(1条)、労働者が労働組合を組織し、団体交渉することを助成する種々の方策をとっている。そして、労組法3条は、労働者について、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義し、労働契約法や労働基準法における労働者とは異なり、使用者に「使用される」ことを要件としていない。

以上のような労組法の趣旨や目的、労組法3条の文言に照らせば、労組法の適用を受ける労働者は、労働契約によって労務を供給する者に加え、その他の契約によって労務を提供して収入を得る者で、使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切を認められる者をも含むと解するのが相当である。

加盟者が労組法上の労働者に該当するか否かを判断するに当たっての具体的な考慮要素は、①事業所組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤時間的場所的拘束・指揮命令関係、⑥独立した事業者としての実態をあげている。

①事業所組織への組入れ・④業務の依頼に応ずべき関係について

本件では・・・
フランチャイズ契約上、加盟者は独立した事業者として位置づけられている。
実態について、加盟者は、セブンイレブンから独立した立場で、労働者の採否を決定している。店舗運営に他人労働力を使用している。商品・サービスの提供について、独立した事業者と評価するに等しい裁量を有している。店舗の立地・契約種別・共同フランチャイジー・複数出店の各選択について自ら判断している。店舗運営業務の内容や程度についても自らの判断により決定している。
以上から、加盟者は、セブンイレブンから個別具体的な労務の提供を依頼され、事実上これに応じなければならないという関係に立つものではない。
したがって、セブンイレブンの事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていると認めることはできない。

③報酬の労務対価性について

加盟者は、オープンアカウントを通じてセブンイレブンから月次引出金等の支払いを受けている。これは、加盟店において商品の販売やサービスの提供の対価として顧客から得た収益を獲得したものである。これらは、加盟者がフランチャイズ契約上の何らかの義務を履行して得た報酬であるとは評価できない。

②契約内容の一方的・定型的決定について

本件フランチャイズ契約は、加盟店の事業活動にについて規定したものであり、その活動に一定の制約を課すものということはできるが、加盟者が経営を、自己の労働力と他人労働力をどのような割合で、どのような態様で供給して行うか、加盟者自身の判断に委ねられている。
本件フランチャイズ契約いおいて、加盟者の労務提供の在り方が一方的・定型的に定められていると評価できない。

⑤時間的場所的拘束・指揮命令関係について

加盟者自身が店舗運営業務の内容や程度について自身の判断により決定している以上、加盟者の労働提供が時間的に拘束されているとはいえない。
加盟者は、店舗の立地を自ら選択しているから、加盟者が場所的拘束を受けていると評価することもできない。
加盟者自身が店舗運営業務の内容や程度について自身の判断により決定しているのであって、セブンイレブンの指揮命令を受けて労務を提供しているのではない。

(結論)
以上の検討から、セブンイレブンとの本件フランチャイズ契約を締結する加盟者は、セブンイレブンとの交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点からみて、労組法上の労働者に該当しないというべきである。

⑥独立した事業者としての実態について(念のため)

加盟者は、店舗の立地・契約種別・共同フランチャイジーの採否・複数出店の有無について自ら決定した上で、加盟店の経営による損失の帰属主体として、セブンイレブンとは独立した立場で平均して20ないし30名もの従業員を雇用して、加盟店を経営している。
加盟店は、商品の提供・サービスの提供についても、一定の制約を受けている者の、独立した事業者と評価するに相応しい裁量を有している。
加盟者は、独立した事業者としての実態を備えているというべきである。

【労働組合法】
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

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