決算記事のゆくえ

怒涛の勢いで1月が終わり、もう節分であります。この時期各社の第3四半期決算が始まります。さてそろそろ、決算記事をどう扱うのかを決めないとなぁ。

というのも、昨今web媒体はどこも「もうPVを追ってもやっていかれない」と力尽き始めているのです。他の世界では知りませんが、少なくとも記事コンテンツにとっては、長かったフリーミアムが結局幻想だったと認めて、敗北に至ったわけです。

言うまでもないですが、フリーミアムはスマホのゲームとかを典型とするやり方で、タダでゲームを始められるけれども、価値あるアイテムは有料課金なので、タダの撒き餌で魚を集めて餌を食わせて釣り上げる作戦です。

けれども、記事というのは、途中まで読んでも有料の柵の手前でUターンできてしまう。「日経平均がバブル以来の高値」でも「米軍が空爆」でも、「セクシー田中さん」でも、「ここから有料です」を見たら他の記事を探せば良い。知りたいことが単なるファクトである限り、媒体のブランドなんてどうでも良いし、ニュース性とバリューがあるものなら、ネットに情報が溢れているので、検索さえすればタダで読める記事が他で見つかります。極論を言えば、それをエビデンスにして記事を書く職業の人とかじゃないなら、大体の事実関係がわかれば十分なので、テレビのニュースを見た個人のつぶやきだって構わない。

ということで、会費を取って読ませるコンテンツは、ストレートニュースでは難しく、結局は独自の見方を示す解説記事でなければならないし、そうなると誰が書いているかがお金を払う払わないの分岐点になるわけですね。

で、ありがたいことにボクの記事はいまそこで媒体各社から期待されて、池田の記事は金を払ってもらうのに都合がいいと思われているらしく、有料化を複数媒体から言われているわけです。まあ媒体側がそう思うことに抗議しても始まらないので、それはそれとして、こちらにも思うところは色々あるわけです。

例えば自動車メーカー各社の決算記事ってそれなりに手間がかかります。そういう面倒な記事を書いている理由は、日本の基幹産業である自動車製造業がどうなのかを多くの人に知ってもらうことに、日本経済の方向性を知ってもらうという意味があるというのが第一。

次は自動車メーカーの戦略に評価を下すことです。というのも組織というのは、一枚岩ではないので、ある戦略には必ず反対派がいて、その綱引きのパワーバランスで物事が決まっています。言うなればそれの片方を選んで援護射撃をしているわけです。

幸いなことにボクの立場だと、各社それぞれの戦略が横並びで見える。そこは実業の中に身を置いている渦中のプレイヤー当人とは違うのです。だからこそ得られる岡目八目に加えて、各社の成功と失敗を物差しにして、戦略を評価することができる。「そうは言うけど、お前は常に間違わないという自信があるのか」と言われれば絶対とは言えないですが、大まかな全体像は掴んでいるので、その状況と各社の戦略を突き合わせれば、そうそう見当違いな予測はしないだろうと思っています。

なので、公器性が大事な記事は基本的に有料にして読者を限定したくないのです。媒体は儲けるべきでないとは言いませんが、公器性の側面を全部無視されるとちょっと違うぞと。いや何もボクの記事を一切有料扱いにするなとは言わないわけです。けれども「これは社会性の側面から無料公開」と言う記事は決めさせて欲しいわけです。それを買い切り有料限定公開にしたいと言うならば、単にコンテンツの買い上げではなくて、職業人としてのボクの矜持を売れという話なので、原稿料の桁を1つ上げていただきたい。

で、そんな条件を飲めるはずがないのは、もうわかりきっているので、いま日経ビジネス電子版に書いている決算記事は他媒体に移すかなと。

そもそも決算記事はITmedia ビジネスオンラインで始めたものを、アイティメディア側が無欲なのをいいことにスルッと日経に移行したわけで、日経側は仁義だなんだと言える立場ではないのです。その時点では、公器性のある決算記事の掲載先としてITmedia ビジネスオンラインより日経ビジネス電子版の方が相応しいとボクが思ったから、日経側に個社7社の詳細記事を書きながら、ITM側には業界全体のまとめ決算記事を載せて少しづつ移行して行ったのが経緯です。

で、しばらく受け皿を探していました。5媒体ほど話をしてどこも快諾をいただきました。一応「仮の話ですよ」とは言ってあります。しかしながら、よく考えてみれば、PVではお金が稼げない事情はどこも同じです。それらの媒体が数年後に「やっぱり有料にしたい」と言い出す可能性は排除できないということですね。

そうなった時、過去の決算記事が色んな媒体に散らばってしまうと色々面倒です。再録するのに一応の仁義がいるので、その話がまとまらない可能性があります。もちろん最終的には著作権はボクにあるので、とことん揉める気なら勝てるのですが、別にわざわざそんな面倒な状況にしなくてもいいじゃないかと。

だとすると、やっぱり自分の「note」でやるかと。無料公開すればそれこそ決算記事は1円にもならないけれど、そこはnoteの他の記事を有料にすることでカバーして、最新の決算以外のものを各社ごとにまとめたバックナンバーを有料化するとかそういう方法もあるわけです。

正直に白状してしまえば、noteの月額会員の費用はもうお布施だと思ってくださいということをお願いしつつ、一応は自分に週1本の限定記事を出すことを課す形でご理解いただこうかなと。

ボクの記事を逃さず読みたいと思ってくれている人に、あちこちの商業媒体で5媒体も6媒体も会員になってくれと言うのは、ファンに対して負荷のかけ過ぎであまりにも申し訳ない。だから基本商業媒体に載せるものは可能な限り無料で読める形に留めて、お金を払う有料記事はnote1本に絞ってもらおうと。それなら月額1000円くらいはいただいてもいいかなと思うわけですよ。

例えばレスポンスも有料記事ですが、月に10本までは無料会員でも読めるので、これはまあいいだろうと。でも日経はかつては10本まで読めたものが今や月1本だけになってしまったので、それではちょっとどうにもならんわけです。なので書くとしても月1本。

ということで、そうなると結構忙しい。いまボクが抱えているのは、月あたり、掲載記事が多い順でグーネットマガジンが4本。ITmedia ビジネスオンラインが2本〜3本。紙媒体のカーアンドドライバーが1本。その他に不定期のレスポンスとベストカーと日経ビジネス電子版とアヘッドがあって、大体どれか2本〜3本は発注があり、その他にレスポンスのセミナーが1本とグーネットで新たに始まったプロト総研の対談があるのです。

原稿8本とセミナー1本、対談1本。それにnoteを4本増やせるか。さらに、決算時期には各社決算記事8本が号外無料で出るわけですね。決算記事のところが特にキツいだろうなぁ。そこをどうするかだなぁ。いや決めねば。

お気持ちの投げ銭場所です。払っても良いなという人だけ、ご無理のない範囲でお使いください。