閉ざされた思考

14日ITmedia ビジネスオンラインの記事、「ビンテージイヤーに乗った特筆すべきクルマ(前編)」に寄せられたお花畑コメントについて。

日頃メーカーの開発陣と会ってると、閉ざされた思考に陥るのはやむを得ないが、なぜ人類が再生可能エネルギーに移行しなくてはならなくなったのか

まあ基本的に議論の姿勢がなってないわけですね。「俺が正義で知識があり、相手は無知で凝り固まっている。自分の思考を点検する気持ちがありません。

さて、では御高説にしたがって、もうこの1月からEV以外は全面走行禁止にしましょう。それに化石燃料での発電も全部停止。稼働中の原発は多分3基。それと水力と風力と太陽光で概ね全て。まあ地力とかもありますがね。水力は現状昼間のピーク用に動員されていますから、風のない夜は原発オンリーですね。しかも原発は3基全部九州です。素晴らしい社会じゃないですか。首都東京も大阪も名古屋も、日本の3大都市の社会インフラが全部止まる。福岡は大丈夫かもしれませんね。でも北海道は何割レベルで凍死者が出るでしょう。警察も消防も医療も官庁もインターネットも全部止まるでしょう。素晴らしきかな21年。

「来年からなんて無理に決まっている。極端なことを言うな」。なるほど、じゃぁ何年に禁止したら良いんでしょうかね? 22年? 23年? そんなの答えはないんですよ。全力で頑張って、少しずつ減らしていく。その少しずつしか発展できないEVと再生可能エネルギーの成長待ちの穴埋めは誰がしてくれているんでしょうかね?

自動車メーカーも自動車ジャーナリストも「EVなんて必要ない」と言っている人は誰もいません。ただ上記の状況に鑑みて、「今すぐは無理だ」という極めて当たり前のことを言っているのです。どうですか? 今すぐ可能ですかね? 今すぐEV以外走行禁止、再生可能エネルギーがあなたの言う「開かれた思考」で、EV社会に向けて段階的に進めて行こうというのが「閉ざされた思考」なんですかね? 汗をかいて現実を推進しようと努力している人々に対して唾を吐く行為に池田は極めて立腹しているわけですよ。正義のつもりかなんか知らないけどやってることはカスじゃねぇかとね。

エンジニアは、今すぐ頼りにならないEVと再生可能エネルギーの尻拭いのために、全力を挙げて、一生懸命普及価格帯の高効率ハイブリッドを作っているわけです。親からの仕送りで生活している学生が親に感謝もせず、親を馬鹿にする様なことを言っている構造に良い加減気づくべきでしょう。相手を馬鹿にしている暇があったら、早く自分が一人前になりなさい。

テスラは一刻も早くお遊びのスーパーカーみたいのをやめて、庶民のための250万円のEVを作るべきでしょう。蕎麦屋の出前みたいに「あと数年で内燃機関車を買う経済合理性はなくなる。EVの価格は劇的に下がる」とおっしゃいますが、であればその●●年には同セグメントのEVの半数は、同セグメントの内燃機関車の平均価格と同等か安く売らなければならない法律を作ったらいかがでしょうか? そこに示す年次こそが彼らが言う「いつ」の自己申告です。おそらく言えないでしょうけどね。内燃機関をくさすための発言がブーメランで戻って来てしまうわけです。

他人に穴埋めさせといて、その穴埋めしてくれている相手を「古臭いヤツ」呼ばわりしながら、ゼロ-100を2秒とかはしゃいでいる場合じゃないでしょう。再生可能エネルギー社会の到来に向けて不誠実なのはどっちなんでしょうかね?

長期的に見れば化石燃料は燃やせなくなるでしょう。いつかは分かりませんが、そのいつかを決めるのは再生可能エネルギーの技術と普及、そしてEVの技術と普及であって、化石燃料側の技術ではないのは当たり前のことです。で、まだお遊び気分でやっている人たちの現状に鑑みるに、それは多分時間がかかりそうです。さて、そして遠い先にやがてくる化石燃料禁止の時代、エネルギー構成がどうなっているかと言えば、それはもうほとんどが太陽光と風力なわけです。動かせるなら動かした方がいいですが、原発は政治的に無理でしょう。

で、太陽光と風力でインフラを賄うということは、自然任せな発電なので、ピーク値に対して大きな余裕を持つ必要があります。でないと風のない雨の日に発電が足りなくなるのです。その設備に対して、どピーカンの風の強い日はどうなるのか、発電量が多過ぎてもブラックアウトが起きてしまうので、余剰電力をどうにかしなければなりません。しかしインフラ電力の倍を超える電力をバッテリーみたいなもので受けられるはずはなく、だからそこに水素が登場するのです。

余剰電力で水素を作り、発電能力が下がる夜間は水素で発電して辻褄を合わせる。言ってみれば再生可能エネルギーと水素はセットということです。当然EVとFCVもセットになります。もちろん水素はインフラだけで使ったっていいのですが、何しろ相手は自然なので、水素が足りなくなるようなことでは困るわけで、基本水素は余らせるくらいにしなくてはいけない。それをポータブルで貯蔵可能なエネルギーとして使おうと言うプランのひとつがFCVです。

JR東日本も水素による鉄道運行を考えています。セブンイレブンも配送トラックのFC化と、店舗の電力の水素燃料電池化を進行中で、JRの鉄道基地や、コンビニが水素ステーションを兼ねる未来は大いに考えられます。実際、高輪ゲートウェイの基地には水素ステーションが設置されましたし、池上にあるイワタニの水素ステーションはセブンイレブンが併設されています。

現在のところ水素充填には資格が必要ですが、やがて規制緩和が進んで、水素ステーションの設置基準や運営基準がドイツ並みに変われば、コンビニで水素が補充できる未来も来るかもしれません。

で、こういうこともやっているのは全部トヨタなわけですよ。JR東日本と提携してMIRAIのFCスタックを提供し、セブンイレブンと提携して、FCトラックを開発する。そうやって壮大な脱炭素社会という未来に向けて努力している人たちを、この人は「閉ざされた思考」呼ばわりしているんで無知も大概にして欲しいと、思うわけですよ。猛省を促したいです。


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