ライフサイクルアセスメントはウソなのか?

うーん。「EV以外は死滅しろ派」の方々のライフサイクルアセスメント(LCA)に対するいちゃもんの付け方が常軌を逸しつつある。

これきっと誰も反論しないんだよなぁ。でも原稿にするのは大変。そもそもLCAがISOの規格であるところから説明しなきゃならないしなあ。

現状を簡単に言えば、評価の基礎になるデータの精度に問題があるのは事実。だってLCAという考え方自体がまだ世間に普及していない。だから個別の素材、それは例えば鉄でもアルミでも生産時に正確にどのくらいCO2負荷があるのかは現時点ではデータは少ない。

しかしそれをもって、「古いデータを意図的に持って来てねつ造している」というのは明らかな事実誤認。

データの精度が悪いのは、これまでCO2に着目して調べられたことがないから。そんなわけで、今、学者たちが一生懸命代用できるデータや、別の用途で作られた古いデータをほじくり出して、それを使って「近似データ」を作り出している最中。要するにベストエフォートの結果であって、データの操作ではない。データ操作というのは、より正確なデータがあるにも関わらず意図的に都合の良いデータを選択しているケースを言うのだ。

ということで不正確だという指摘までは、同意するのだが、だからと言って、「正確な数値になるまで計算するな」というならあらゆる環境規制は例外なく不正確なデータに基づいていることになってしまう。そういうことを言っている場面ではなく、あらゆる面からできる限りの判断データを作りましょうという話だと思う。

現状のデータ実態は九州大学でLCAの学会発表を傍聴して、直接発表者から筆者が聞いたので間違いない。まあ発表した学者が業界の片棒担ぎだと疑うならば、そりゃもうそれまでで、そう考えるのならば、EV側の根拠だって同様に疑わなければならないとは思うが、世界の全ては陰謀の中にあるという世界観の人もいるのでしかたないし、そういう人とは議論する気は無い。

まあ要するに、LCAの考え方自体は地球環境にとって、とても大事な視点なので、今後LCAの重要度に対する理解が進めば進むほど、それを意識した正確なデータを様々な素材メーカーが出してくる様になるし、その先には適正な数値が算出できる未来が待っているはず。それだけの話である。

でだ。一方でEVの環境負荷に関して、EV派の人は「テスラのバッテリーは25万7000キロ走って、劣化が10%」と言うのだが、こりゃウソだ。テスラは災害時や長距離走行時に「オンラインで追加バッテリー容量を購入できる」としているが、そんなことは物理的にあり得ない。いや科学的に説明してくれるのであれば大いに傾聴する準備はあるが、筆者の常識に照らして考えれば、新車時に割増ししたバッテリーを購入させておいて、通常時はバッテリーの保護のために満充電にしていないだけ。そういう未使用領域を課金すれば開放しますよという話だ。

つまり60kWhのバッテリー容量だと言って、例えば10%増しの66kWhのバッテリーを装備している。10%分を無償で付けているわけもなく当然それは代金に入っている。そもそも多くのクルマで、インジケーターに具体的な電気容量数値が表示されるわけではなく、満充電に対してのパーセンテージのみなので、60kWhの内輪に未使用領域があるという話かもしれない。というかその方がありそうだ。

要するに隠し容量を持っていると考えるのが順当。なんでそんな必要があるのかと言えば、バッテリーの劣化に合わせて、隠し容量を徐々に解放して、見た目の能力低下を小さく見せたいとしか考えられない。だから予め余分に積んでおく容量とソフトウェアの制御次第では、使えば使うほどバッテリー能力が向上していく設定にだってできる。10万キロ走るとバッテリーの能力が倍増するEVとか夢に溢れているでは無いか。

そういうビジネスを許容するかしないかはオーナーが決めることなので批判はしないが、少なくともそれをLCAの計算根拠にするのは止めるべきだろう。

お気持ちの投げ銭場所です。払っても良いなという人だけ、ご無理のない範囲でお使いください。