あっちとこっち見える絵柄の違い

苦笑いするしかないなぁ。ボクは本文にはこう書いている。

 こと音質に関する限り、6気筒の奏でる音には敵うまいと思っていたら、こちらはこちらで高回転域ではレーシングエンジンのような炸裂感のあるエグゾーストノートで、これはこれで別種の赴きがある。まあ今時エンジンの音が良いとか書くと「アナクロニズムだ」と絡む人が出てくるかもしれないが、「音」は人の五感にとっては重要な要素で、総合的にみればそれは必要なものだとマツダは主張している。

上のtweetの返信の続きを見てもらえばわかるのだけど、要するに、エンジン音の話をすると、バカにせずにはいられない人がいる。絡まれることを予見して、無音こそベストではない場合があるからそう書いているだけのことで、無音のクルマを無くすべきと主張しておるわけではない。この人も書いている通り、ボクがこの記事で “EV下げ” をしなければならない理由はひとつもないし、1本いくらの原稿でわざわざ余計な文字数を書く無駄なことはしない。そして何故それを書くかの理由もちゃんと提示しているはず。申し訳ないが “EVサゲ” は被害妄想である。そして案の定エンジン音の話を書いたら絡まれた。予想通りだったね。

こちらのサイドから見ると、記事に必要であっても、「このエンジンはエンジン音が良いよ」ということが簡単には書けないという不自由な時代になったとも言える。その程度のことを普通に書かせてくれれば、というのは「エンジン音は良いもの」と考えるセグメントの人々が一定数存在するという概ねのコンセンサスがあれば、わざわざその大事さを説明しなくて済んで、こっちも楽なんだけどね。

そしてエンジン音の良さなんてのは、大昔から自動車評論の中では常識として扱われてきて、30年前や50年前の評論では「無音が必ずしも良くない」なんて断り書きは誰もしていない。昨今、その延長線で、普通にエンジン音の善し悪しを書くと、ディスられるようになったから仕方なく音の意義を説明しなきゃならなくなっただけなんだけどね。さて、以上どっちが「サゲずにはいられない人」なのかはちょっと考えてみても良いのではないかな。

少なくとも今回のユニットで、マツダは周波数の研究までして良い音を追求している。そういう開発に対して、音の話を避けて書くのは評論として不誠実なのよね。

さて、これで言いたいことはほぼ終わりなんだけれど、ちょっとおまけ。

ノイズと乗り心地の硬さが云々はというのは多分この人は冗談で書いているのはわかる。基本的にこの人は割と感情的でもなく論理的な人だと思っている。

ボクもたまにあるけど、一読して最初にカチンと来ると、文意に先入観を持ってしまうことは誰しもあるので、今回の部分的なすれ違いに関してはまあそういう時もあるのだろうと思う。せっかく冗談でボールを投げてもらったので、こっちも冗談としてあえてマジレスしておくかな。あんまり真剣な話じゃないけれど。

テスラはノイズも乗り心地も、ちゃんと研究して速度域に応じた調律をしているのかしら? まあないよね。そういう領域の技術の説明をテスラはしたことがないと思う。その点、マツダは「聞かせるべき音」と「消すべき音」をちゃんと選別しているよ。だからマツダが良くてテスラがダメだと言う意味ではないよ。ただ、そういうことに留意して技術を積み重ねている企業に対して、妥当なリスペクトはあっても良いのではないかと思う。

ノイズってのはネガティブな音だからマツダはちゃんと消している。その消音技術の話だけでも原稿1本分は書けるよ。

エンジン音はノイズじゃなく(エグゾースト)ノートね。まあ「虫の音」を風流だと感じるか、雑音だと感じるかの違いで、それは多分文化的なもの。エンジンに関してはそれを雑音と感じる人はマツダのクルマを選ばないでしょ? あれがいい音だと思う人が買えば良いだけの話。それを気に入っている人に対して「虫の音」は雑音だって強弁する必要はどこにもないでしょう。

ただ一般論としても、もしそれがノートでなくノイズなら消した方が良いよ、タイヤの音とか軋み音とかね。それを「虫の音」だと言う人は、過去の経験上ボクは知らない。でもタイヤのトレッドが空気を圧縮するあの音が最高に素晴らしいのだという人がいるならそれはそれで他人の価値感としては尊重するよ。是非どのタイヤが一番いい音がするか研究して欲しい。素晴らしいなら、お気に入りの音くらいあって当然だと思う。

乗り心地に関して、モデル3に乗った経験で言えば、むしろ低速で硬すぎ、高速ではそれが和らぐ。まあ成り行きで普通に作るとアシはそうなる。ダンパーの周波数ごとの減衰特性をちゃんとやらないと、全域同じ特性になって、リスクの高い入力時間が長い大きな入力に対して適正なダンピングに仕立てるしかなくなる。そして瞬間的な小さな入力に対して硬くなる。これは日本車の技術で言うと90年代くらいの感じ。日産プリメーラとかがまさにそういうものだった。その後の電制ダンパーを採用して、それが上手に使いこなせて無かった時代の感じとも似ている。

ということで、モデル3のアシの硬さは、結果的に低速で注意を促し、高速で警報を止めるシステムなんだけど、それは五感の使い方としてどうなのかねぇ。

ということで、今回は割と楽しんで書かせてもらった。御礼を申し述べておくよ。

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