【症例提示】前捻角によって惹起された肩痛
主訴は肩痛です。ダンスの動きで痛くなったそうです。
評価をしていくと前腕や肩そのものには大きな問題はなさそうでした。肩の内旋制限が左に認められました。それ以外の関節可動域制限はありません。
烏口腕筋と上腕二頭筋に圧痛を認めました。症状は両肩にありましたが、圧痛は左に著名でした。
さてダンスをする人全てに肩に痛みが出るわけではありません。では、なぜこの方の肩に痛みが生じたのでしょうか?と言うことはこの方に特徴があると言うことです。
と言うことで、全身の評価に移りました。そして、片脚のみ前捻角の増大を見つけました。これがこの方の特徴となります。その角度なんと55度です。正常が15〜20°ですから倍以上ということになります。
そしてこれが歩行の切り取り写真です。ご本人の了解を頂いて紹介します。
左蹴りから右脚に乗るところを切り取りました。左が何も意識しない普通の歩行です。骨盤がすごく右にシフトして腰が詰まり、それに呼応するようにして右肩が下がっているのが認められます。
修正歩行では、左の前捻角に合わせてつま先を内側に入れてもらっています。そうすると、こち版のシフトが減少します。ただ、肩の状態はまだ変わっていません。
こちらは、左脚に乗るところですね。
左は何も意識しない歩行ですが、骨盤の左へのシフトが少なくなっています。右は、修正歩行ですが、左へ骨盤が動くようになっています。ここでもまだ肩についていは変わっていません。
このように、前捻角の左右差がある方の場合、足の向きと前捻角の不一致によって体全体に代償が起きます。
この方の場合、骨盤までの動きは左のつま先を内側に向けることで改善されますが、上半身の、特に右肩の下制は変わっていません。これはかなり癖がついてしまっているので、ストレッチとこの歩きの中での上半身の正中化のエクササイズが必要です。
このようにして、股関節の代償として肩に偏位が起こって、結果的に肩の動きに負担がかかって今回のように障害として痛みにつながります。ご本人もまさか!という感じでした。
この方は幼少期に横座りをされていたということです。左のみ股関節が開かないこともずっと気になっていたようです。残念ながら外旋制限は骨格的なものなので、前捻角55°では開かないのがそもそも正常です。
分かってしまえば「なぁんだ、そういうことか。」という話なのですが、自分の歩く姿勢を客観的に把握することはあるようでないので、ぜひ近くの予防運動アドバイザーまたはTAKT EIGHTへお越し下さい。
ご自分の前捻角については知っておいた方がいいですよ。